【アルバム紹介】Tamaryn、甘美な誘いに溢れた音と声

 ニュージーランド出身の女性タマリン・ブラウンのソロ・プロジェクト。初期はプロデューサー/ギタリストに元Portraits of Pastのレックス・ジョン・シェルヴァートンを迎えてデュオ編成で活動。その後にソロへ。ドリームポップ、シューゲイズ、エレクトロなどが混成しており、かつての4ADのようなサウンドが魅力。本記事は1stアルバム『The Waves』について書いています。

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The Waves(2010)

   1stアルバム。全9曲約37分収録。サウンドとしては4AD全盛期のシューゲイザーに近い印象。ミドル~スロウのゆったりとしたリズムの上を儚げなギターの旋律とシンセが優しく波打ち、タマリンの声が清冽と響く。やがてはおぼろげなフィードバック・ノイズに包まれる。聴いてるとスロウダイヴを想起させる音色で、とても耽美的で浮遊感ある作品に仕上がっています、

 それでいてゴスの薫りも漂わせ、冷たい空気がゾクっと背中をさすることもある。重たい扉を広げた先にゴシック・サイケ風の装いをしたシューゲ・サウンドが花開く#1が序曲として見事なまでに耳を引き、対比するように春風が髪を靡くような温かみとドリーミーな感触が強い#2へと繋がっていく。

 これ以降も陰りのあるメロディや冷徹なムードをしのばせつつ、たおやかな歌声と温かみのある音色を丁寧に重ねながら優美でミステリアスな物語を奏でています。リヴァーヴのかかったギターとベースが空間をグッと押し広げていく様、また日常から非現実へと連れ出す幻想性が巧みに演出されている所も良い。

 オリジナル・シューゲイザー復刻のようなサウンドに、タマリンのVoがイノセントな磁場を生みだす本作は、甘美な誘いに溢れた魅惑的な一枚だ。

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