【全アルバム紹介】Telepathy、UKのシネマティック・スラッジ

 2011年に結成されたUKのポストメタル系インスト・バンド。シネマティック・スラッジと自身で形容するそのサウンドは、スラッジメタル、ドゥーム、ポストブラックメタル、プログレ等の要素がかき混ぜられる。Roadburn FestivalやArcTangentなどの大型フェスへ出演し、これまでに3枚のフルアルバムをリリース。地道な活動を続けている。

 本記事では3枚のフルアルバムについて書いています。

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12 Areas(2014)

 1stアルバム。マスタリングをJames Plotkin、アートワークをAlex CF(Light Bearer)という超人たちで固めています。インスト・バンドですが、静寂から轟音へと歩むポストロック/ポストメタルというわけではなし。スラッジ/ポストメタルの要素を基盤に、プログレ/マス・メタルを衝突させたような感じで、Russian Circlesや近年のThe Oceanの音楽に感化されている印象があります。

 興奮を煽るスリリングな展開の連続、それに加えて重量感バッチリの音塊を見舞う辺りはなかなかに新鮮。不穏な空気を垂れ流すSE#1「Hypnos」をくぐり抜けると、二本のギターが精微に絡んで空間を切り裂き、ツーバスをドコドコ言わせる#2「Saccade」が変則展開でしっかりと持っていく。

 リード曲となった#3「Cystine Knot」はヘヴィな曲調の中でクリーントーンが凛とした美しさをもたらしているように感じますし、プログレ・メタル的な要素が押しだされた#4「Sleepwalker」も切れ味十分です。締めくくりの#7「To Kiss The Ocean’s Floor」にしても複雑な展開を基にして重厚なポストメタルを造形しており、1stアルバムにしてこの手のファンを納得させる力量があります。

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Tempest(2017)

 2ndアルバム。全8曲約51分収録。GhostやOpethを手掛けた経験があるJaime Gomez Arellanoがミックス、マスタリングを担当。本作は、”大洪水から目覚めた後、悲しみにさいなまれ、完全な孤独に直面した人の痛ましい旅を描いている”といいます。

 サウンドは順当進化といったところですが、配分としてはポストブラックの要素が高まっている印象あり。スラッジメタル、ドゥーム、ポストブラックメタル、プログレが混濁した激流のごときインスト。前作同様に静動の壮大なコントラストで聴かせるのではなく、緩急の妙が効いており、”急”の部分での爆発力でもって牽引しています。ブラストビートを使っての爆走劇が頻繁に巻き起こり、怒涛のリフ攻撃で切り裂いていく。

 アンビエント/メロウなパートで息抜きもありますが、スラッジメタルとポストブラックによる粉砕合戦が繰り広げられているかのよう。#4「Echo of Souls」ではブラックメタルの残虐+カオスな絶叫の後に、最も美しいメロディが垂れ流されます。シネマティック・スラッジという形容をバンドは用いていますが、暗いドラマティシズムと暴力性の両輪が鈍色のトーンを生みだしている。

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Burn Embrace(2020)

 3rdアルバム。全7曲約44分収録。前作に引き続いてJaime Gomez Arellanoがプロデュースに関わる。チェリストのJo Quailがゲスト参加(おそらく最後の曲)。ASTRAL NOIZEによるインタビューによると、”葛藤や孤独、そして最終的には逆境から生まれる知恵や強さについてのアルバム。Burn Embraceはもっと人間的なアルバムで、「自分たちがどこにいて、どんなことに対処しているか」を表現したもの”とのこと。

 急加速するパートは前作ほどは登場しなくなり、スラッジメタルの方が前に出て重みのあるアプローチが重視されている印象を残します。しかしながら、1曲の中での多彩な展開は変わらずで、#3「The Void In Aimless Flight」における重・速・遅・美のグルグルと行き交うさまはTelepathyらしさを物語る。メロウな雰囲気に落とし込み過ぎず、ダークな質感を貫いています。

 シネマティック・スラッジの形容にふさわしい#5「Aonaran」がムードを引き立て、ブラックメタルの要素を効果的に取り入れる#6「Sorrow Surrenders it’s Crown」が苛烈重厚に彩る。ラストに置かれた表題曲#7「Burn Embrace」は、アンビエントな空間装飾の中で全編にわたる哀しみのこもった声、ストリングスが世の不条理を訴えるかのように終わりを告げています。

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