2024年に映画館で鑑賞した作品の簡易的な感想置き場です。去年は全然、観れてないので2024年はきっちりと観ていこうと決意して記事にしました。鑑賞スタートがGWからなのでだいぶ出遅れ気味ですが、合計23本鑑賞。
公開以降、ちょくちょく追加してきましたが2025年1月2日の追加分を終え、本記事は完結です。
※ 鑑賞したのが新→旧の順。1ページにつき7~8本で次ページへ移るようにしています。
2024年に観た映画一覧①
アイ・ライク・ムービーズ
肥満ナルシスボーイ(17歳)が映画監督への憧れをこじらせ、レンタルビデオ店で働いたり、映画制作で有名なアメリカの大学に行きたいというのを見続ける物語。俺はもっと高みにいるぜという他人への見下し方がすさまじく、主人公がムカつくという感想が多々あるのもうなずけますが、その裏にはこういう過去があったというのが徐々に明かされていきます。
別にこれは映画をつくる物語ではなく、少年の成長譚としてというのが本筋。母親とのやり取り、レンタル店の店長とのやり取り、親友だった者とのやり取り。それらを経て大学へ進学したラストシーンはとても良かった。ひとりで部屋にこもり、聴いている人が少ないアーティストの音楽を聴き、文章にしている孤独で痛いわたしにも刺さるものがありました。
大きな家
東京のとある児童養護施設で暮らす子どもたちを捉えたドキュメンタリー。7歳から施設を旅立った19歳までの男女7~8名ぐらいにフォーカスをあてる(正確な人数は覚えてない)。
まずは自分が不勉強なところですが、児童養護施設がとてもキレイなことに驚き。テレビや映画で劣悪な描かれ方をしているのが刷り込まれているからか、そんなイメージでいたから環境面が本当にびっくりしました。職員の方々も丁寧な仕事ぶり。自分には絶対にできない・・・。
ある子は一緒に暮らす人々を友達や家族ではなく、血がつながってない他人とはっきり言います。逆にある子は家族的なものなのかなあと言う。施設を実家みたいと呼ぶ子もいれば、単に施設や住んでる場所という子もいる。人それぞれです。彼・彼女たちの目線に立ち、各人を誠実かつ公平に捉えていることが伺えます。
児童や環境等に問題提起するような作品ではないです。子どもたちの日々をただただ映し出すこと。観ることで得られるものは大きい。とても良いドキュメンタリーです。必見。
ヘヴィ・トリップII/俺たち北欧メタル危機一発!
『Ⅰ』はおもしろかったのですがストーリーやシーンは思い出せなかったりする(5年ぐらい経ってるし)。“終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル”を謳うインペイルド・レクタム(直腸陥没)が本作刑務所からは脱獄し、世界最大のメタルフェスWacken Open Airを目指す。恐れ知らずの無謀さは相変わらず。
売れるためにプロデューサーの言うとおりになり、自身の作家性を曲げるのか。そんな音楽界の商業主義に対する描かれた方がメインになっていたりする。さらにはBABYMETALがちょい役どころかわりとガッツリ出ててびっくりします。
ただ、『Ⅰ』よりもパワーダウンは否めず。演奏シーンはもっと多くしてほしかった。
メトロポリス
大須シネマにて。鳥飼りょうさんによるピアノ生演奏付きで、半年前に同所で観た『カリガリ博士』に続いて2度目の体験です。
『メトロポリス』は1927年公開で100年後の未来都市を描いたSF作品。だから2027年想定なんですが、現実はまあそんな感じではないですよねえ。
初見ですが、貴族階級と労働者階級を対比したストーリーに単純に引き込まれたこと、また火あぶりはいつの時代になっても有効手段なんだなと感じましたね。サイレント映画は映像を通しながら考える余白が常にあるので、一度体験してみると面白いですよ。上映後のスタッフの方と鳥飼りょうさんの解説も勉強になります。
どうすればよかったか?
医学部在学中に統合失調症を発症した姉。それを認めない医師であり研究者である両親。それを20年以上記録した弟(本作の映画監督です)。秘匿にしたい家族のことがあまりに生々しく映し出されていて、言葉にするのが難しいですね。部外者が簡単に答えが言えるものでもないですし。壮絶な記録を残し続け、それを世に出す意義を感じました。
キネマノイにて公開初日に鑑賞。藤野監督と淺野プロデューサーの舞台挨拶付き。座椅子と立ち見が出てくるほどに満員。「統合失調症や家族のことを撮ってはいるのですが、受け入れがたい現実に直面した時、人はどう反応するのかを撮ったのかなという気はしています」との監督発言が印象に残っています。必見のドキュメンタリー作品。
私は憎まない
イスラエルの砲撃により3人の娘を亡くしたガザ出身医師のドキュメンタリー。情報は入ってくるとはいえ、映像で見るとあまりにむごくて言葉が出ない。それでも憎しみではなく、和平を求め続ける医師の姿に驚く。終盤では2023年からのガザ侵攻で本作に登場した人々がほぼ亡くなったことも語られる。むごすぎる。
胸が痛くなりますが、観ていただきたい作品。
本心
平野啓一郎さんの小説を映画化した『マチネの終わりに』『ある男』は、私としては好みでした。だが、『本心』は良くなかった。いろいろ詰め込んで薄味になったというか。原作に登場してない冒頭から出てくる女性。この話を引っ張り過ぎ。『本心』の本質はそこじゃないと思うんですが。
しかし、〇バイト的な横行する昨今をこの映画は捉えていました。なんにせよ、小説は素晴らしいので読んでいただきたいですね。
過去は、もう失われてしまっていて、二度と生きることが出来ないからこそ、これほど、懐かしいのだろうか。──それは、噓ではないだろうか? 懊悩や苦痛の経験を、ただもう失われてしまったからといって、人は惜しみはしないだろう。
『本心』p418(kindle版)
走れない人の走り方
”NAGOYA CINEMA Week 2024″と題されたプログラムのひとつで、出演されている早織さんのトーク付き回を鑑賞。若手映画監督にスポットを当てることに主眼を置いた2作品のうちのひとつで、ミリオン座のスタッフの方が東京まで観に行ってビビっときたから『走れない人の走り方』に決まったらしい。
『猫が逃げた』でも名演をみせた山本奈衣瑠さんが映画監督として奔走するストーリー。予算もスケジュールもない中、ロードムービーを撮りたいという願望はあるが、はっきしりしたものは彼女の中にはない。その優柔不断さが周りとの軋轢を生むが果たして・・・。
物語が進むにつれて彼女が年齢的にも金銭的にも崖っぷちの状態であることがわかってくる。その中で走るためにどうするのか。最後、着地点はすっきりしますね。ちなみにこの作品でも猫が逃げていた。