Deerhunter ‐‐Review‐‐

アメリカはアトランタから出現したガレージ・サイケ・シューゲイザー4人組、Deerhunter。2007年初頭に発表した2nd「Cryptograms」、そして2008年10月に発売された3rd「Microcastle」はいずれも米メディアのPitchforkにて高得点を記録。その後の作品もいずれも高評価を連発している。また、メンバーはAtlas SoundやLotus Plazaといったサイド・プロジェクトでも活躍しています。

レビュー作品

> Monomania > Halcyon Digest > Microcastle / Weird Era Continued


Monomania

Monomania(2013)

 約3年ぶりとなる通算5枚目。気付かぬうちにいつの間にか5人編成となっておりました。ニューゲイザーの筆頭候補に挙げられるまでに甘美でノスタルジックなサウンドを奏でた3rd『Microcastle』、そしてメロウで陶酔的な世界を築いた4th『Halcyon Digest』と2枚の傑作に続く本作。その印象はというと、わりとガレージっぽいつくりかな。Atlas SoundやLotus Plazaなどのサイド・プロジェクトも含めて”変容していくバンド”とリリースを重ねるごとに感じていたが、本作でもまた新たな側面を見せてきている。60’s~70’sっぽい懐かしい感触を持った#4「Pensacola」やシンプルながらも味のある#6「Blue Agent」、軽やかな疾走感を伴った#8「Sleepwalking」等を交えながら、作品の印象はストレートなものとなっている。現実から離れていく これまでの音楽性から、ガレージ~ロックンロールをノスタルジックなメロウさやサイケ感、独特の浮遊感を引き継ぎながらアレンジ。結局、一癖ある作風に落ち着かせる辺りが彼らしい。とはいえ、極端に歪ませたギターやエコーかけ過ぎのヴォーカルなどの悪戯心に満ちた#2「Leather Jacket II」や表題曲である#10「Monomania」辺りを聴いてると、相変わらずぶっ飛んでんなあと思うし、#3「The Missing」のように今までの作品に入ってそうなメロディアスな曲がやっぱり一番好きだったり。全体を通して過去作と比べると印象が薄いのは否めないところなのだが、彼等らしい懐の深さを見せる内容にはなっている。


Halcyon Digest

Halcyon Digest(2010)

   今をときめく米国の辛口WEB誌『Pitchfork』で10点満点中9.2点を獲得したのを始め、全世界で軒並み絶賛された08年『Microcastle』に続く待望の4thアルバム。やはり危険な香りと時にポンと弾ける甘さを内包しているというのが第一印象にうかぶ。ニューゲイザーとも評された、甘美でたおやかな音像から比べると、本作ではフィードバック・ノイズはやや控えめ。けれども、深海の中にいるようなサイケデリア、感傷的でデリケートなメロディは健在で、ミステリアスな浮遊感や柔らかなポップ感覚と共に聴き手の心身を優しく刺激。繊細にたゆたう歌声、波のように押し寄せるギター、ゆったりしたリズムが有機的に混じり合い、メロウで陶酔的な世界を創り上げている。幻想的な儚さに胸を打たれたかと思うと、白昼うたた寝してしまう、または脳内にお花畑が咲くような不思議なトリップ感にも襲われてしまう。ポップとサイケ、この両軸をここまで高いレベルで結晶化できるセンスはやはり貴重だ。程よくローファイでインディ臭を漂わせ、牧歌的なタッチによるノスタルジックな質感、シューゲイザー的アプローチを生かした奥行きのある空間創造といった繊細な音像を汲み上げる手腕も素晴らしい。死と向き合って制作されたということで浮かび上がる生に対する美しさも格別だ。


マイクロキャッスル

Microcastle / Weird Era Continued(2008)

   前作から2年も経たないうちに発表された3rdアルバム。しかもボーナスディスク「Weird Era Continued」付の豪華2枚組みである。本作で彼等を初めて聴くものなので詳しいことはわからないが、前作では意図的に造り出された暗黒色のグルーヴに埋められるほどやけにサイケデリックだったらしい。

 けれども、本作はそんな黒く渦巻く悪戯や凶暴さを微塵も感じさせないほど、甘くノスタルジックなメロディが涙腺を緩ませる。牧歌的で穏やかなインディ・ポップという印象。もちろん、ガレージやサイケにシューゲイザー、アンビエントといった要素が脇を固めて彼らにしか成し得ない作品となっている。前半はコンパクトに仕上げた柔和なポップスの連発がもうあまりにも気持ちよすぎてうたた寝しそうになるほどドリーミー。「夢の中へ、さあおいで!」といった感じで意識を飛ばす。といっても個人的にはラスト4曲の方が印象的。それは、心を擽るメロディを鳴らしながら疾走する#9や艶やかな#11、一気にフィードバックギターで爆発するラストの#12など濃い曲が並んでいるから。そういった印象から前半にはややぬるさも感じるのだけど、心に平穏をもたらすところからどんどんと濃くなっていく世界に惹かれたのも事実。傑作と各地で謳われているのも納得の作品だ。

 ボーナスの方の「Weird Era Continued」にしても「Microcastle」と比べてそんなに内容に差異は無い。ただこちらの方がノイズで前が見えなくなったり、意識をクラクラさせるアンビエントだったり、多種の効果音で不穏なムードを醸し出したりと多彩かつ実験的(メロディはもちろんのこと上質)。その趣向がもろに出てるのがラストの#13で、10分越えの大曲だけどディアハンターがやりたいことをひっきりなしに詰め込んだ名曲に仕上がっている。

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