MASS OF THE FERMENTING DREGS ‐‐Review‐‐

FUJIROCK FESTIVAL07のRookie A GO GOへの出演や、EMIミュージック・ジャパンが主催したオーディション「Road To Tarbox Audition」に参加し最優秀アーティストに選ばれる等、発売前から話題を振りまいていた“マスドレ”の略称で愛される神戸出身の3ピースバンド。2012年に活動を休止した。

レビュー作品

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ゼロコンマ、色とりどりの世界

ゼロコンマ、色とりどりの世界(2010)

 サポートの男性ドラムを正式メンバーに迎え、メジャーから発売となった1stフルアルバム。全9曲約35分とコンパクトに聴ける内容ではあるが、今までのマスドレと比べると整理された作品という印象も浮かぶかもしれない。オルタナという言葉がぴったりであった性急で鋭利なサウンドは丸みを帯び、2ndミニアルバムのようなキュートでハートフルな曲が多くを締めている。

 伸びやかで艶やかなヴォーカルや懐っこいメロディに軸足を置いた作りで、曲線的な柔らかさとクリアなサウンドが曲を牽引。ナチュラルに情感をつつき、キャッチーに胸に届ける展開はこれまでで一番かと思う。タイトルトラックの#1や爆発力も秘めているかわいらしい#2「まで。」辺りが本作を象徴している。けれども、スピード感のある曲や変則的な展開を持った曲、インストに至るまで多彩な変化球で魅力を拡散しているのは相変わらず。それにエモの熱を湛えていたり、オルタナの感性が輝いたり、繊細なまでに胸に響く音色も持ち合わせている。初期に比べると楽曲のインパクト自体は低くなっているし、キラーチューンというレベルの曲もないが、逆に安定感のようなものが早くも感じられるようになったかも(逆にこれはさみしかったりもするが)。

 紅という色が浮かぶ薔薇のような刺と美しさを秘めた#3「終わりの始まり」、メジャーデビューシングルとして発売されたドライヴ感の心地よい「ひきずるビート」が本作では、特にお気に入り。全体的にも2ndミニアルバムよりも好きな感じ。メジャーという環境に移ったことで転換期を迎えていることが伺えるが、荒々しさとキュートさがスレスレで鬩ぎ合うような感じが出ると、なおいいんだけどなあ。


ワールドイズユアーズ

ワールドイズユアーズ(2009)

 頭を振り回して爆音を撒き散らすガールズオルタナバンド・マスドレの1年ぶりとなる2ndミニアルバム。鋭く切りつけるようなギターリフとタイトなリズムが火花を散らしながら交錯する爆音狂騒と所々でみせつけるセンチメンタリズムが実に衝撃的だった前作は、かなり俺自身もときめかされた一枚であった。

 各地のフェスに数々出演してキャリアを積んだ本作では、前作ほどの激しさや性急さを感じさせず、いわば曲線的な色香・女性らしい愛らしさというのが如実に感じられる内容になっている。荒っぽい音粒子が神経に突き刺さり、渦巻く轟音に痺れたあの感覚とはまた違う。キュートな魅力が多種類の変化球と共に凝縮されている印象だ。オリエンタルなフレーズを聴かせる#3「かくいうもの」であったり、艶かしく性急なビートに突然ハンドクラップが入ってくる#4などこれまでになかった一面も。とはいえ、鋭利なリフに鮮やかなギターソロ、タイトに刻まれるリズム、憂いと哀愁のあるメロディ、頭を振り回しながらの爆音フィードバックなど彼女たちらしい聴き所・キメは随所に散りばめられている。その上でポップな色合いを強めたと捉えればいいだろうか。聴く限りでは直線的な鋭さよりもなめらかな曲線のような印象をやっぱり受ける。よりリアルな感傷を掻き立てるようになった宮本のヴォーカルもグッド。

 ただ、荒々しさと破格のダイナミズム、どうにもならないぐらいの爆音エネルギーの放出が衝撃以外の何物でもなかった前作からすると、本作に少し物足りなさを覚えたのも事実である。しかしながら、彼女達の魅力が発揮されてる作品であることは間違いない。本作と前作の折衷作みたいなのが次回作では聴いてみたい。


mass of the fermenting dregs

MASS OF THE FERMENTING DREGS(2008)

 最近シーンを賑わすガールズバンドの筆頭といえば萌えガールズポップとも言えそうなチャットモンチーが挙げられますが、このマスドレはそれとは対極の位置に存在するバンドといえます。某大型CDショップの“女版9mm Parabellum Bullet”の宣伝文句に飛びついた一人が実は俺なのですが、聴いてみた感じの荒々しさと世界観では9mmよりもナンバーガールの色を反映している気がする。初期衝動を感じる荒々しさと刺々しさ、ノイジーで破天荒な音の氾濫というのを前面に押し出しつつも女性的な繊細さとセンチメンタリズムを楽曲にも投影させ、独特の鮮やかさというのを感じられる。それに加え、ほぼ全曲一発録りというのもあって非常にエキサイティングな仕上がりを受ける。

 オープニングチューンらしい疾走感溢れるロックな#1「delusionalism」、攻撃的なギターリフとは裏腹に柔らかなVoの対比が魅力の爽快チューンの#2「ハイライト」、艶やかなポップさが唯一の清涼剤になっている#3「skabetty」、9分の感情の交錯と浮遊と表現できそうなポストロック風インスト#4「エンドロール」、弾丸のようなドライヴ感と破壊力で空間を突き進んでいく#5「IF A SURFER」、あまりにも強い破滅衝動が襲い掛かるプログレカオスなインスト#6と、6曲それぞれの個性というのが非常に濃い色を滲み出しいているし、はっきりとした主張力を持っている。バンドからの漲るエネルギーが楽曲にも自信を与えているようにも伺える。特にデイヴ・フリッドマンがプロデュースを手がけたという#5,#6の圧倒的な存在感に凄みを覚える。型に捉われていないというか、懐が深いというか、とりあえずガールズバンドからこういったタイプのバンドが出てきたことは凄く驚きだし、シーンにとって革命を与える存在になりえるかもしれない。個人的に“『衝動』と『ときめき』”を同時に覚えた久々の作品です。

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