TotorRo ‐‐Review‐‐

フランス・レンヌから芽を出してきた20代前半のポストロック~マスポップ・バンド。ユーロ・ツアー中だったCaspianからベスト・ローカル・アクトと言わしめたほどの逸材である。初期の轟音系ポストロックから音楽性を大胆に変化させ、最新作ではtoeやEnemiesといったラインに並ぶマスポップを鳴らす。

レビュー作品

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Home Alone

Home Alone(2014)

 「こんなのTotorRoじゃない」と言う人が一部で続出した、TotorRoの3年ぶりとなる2ndフルアルバム。しかも国内盤のリリースが”俺たちのTokyo Jupiter Records“ではなく、Friend of Mine Recordsからとなっている。実際、去年のMilankuの来日ツアー時に キミさん(Tokyo Jupiter代表)と話をしていた時にちょうど彼等の話題が出てきたが、「TotorRoは日本の別のレーベルからアルバムを出すかもしれません。音楽性も変わってきているし、その方 が彼等のためで、来日もしやすいと思います。うちを経由してどんどんと大きくなって欲しいですね」ってなことを仰っていた。それが本当に形になるとは驚かされる。

 いつからあのfago.sepiaのメンバーがいるのかはよくわからんのだが、前作での轟音系ポストロック~激情系ハードコアのダイナミックなサウンドから一転、本作では清涼感あるマスポップへと変化。ネコバスに乗せられて山奥で宮崎駿のヒゲで洗脳されたのか、toeやPele、 Enemiesといったラインに並ぶ、軽やかでメロディアスなインストを聴かせてくれる。ツインギターが複雑に絡み合い、急激な加速が一気に突きあげる表 題曲#1「Home Alone」、Enemiesライクな#2「Chevalier Bulltoe」で序盤を飾り、小気味よくカラッと乾いた大地を駆け抜けるインスト・ポストロック#3「Tonton Alain Mitchel」でさらに昂揚感を誘う。

 この大胆な変化にこれまで彼等を聴いてきた人で驚かない人はいないと思うが、本人達が肩ひじ張らずに伸び伸びとやっている印象は本作が一番強いかもしれない。Caspianのマスポップ洗礼Ver#5「Motte-Rock」や緩急と強弱のコントラ ストがとても鮮やかな#6「Osao San」辺りのインパクトを経て、最終曲#8「Tigers & Gorillas」がこれまでの音楽遍歴を還元するような壮大な轟音インストを響かせて、全8曲約33分を締めくくる。

 個人的には前作までの音楽性の方がはっきり言って好きだ。けれども、本作のインパクトが薄いかといったら決してそうではない。このスタイルの変化に対して、「こんなの TotorRoじゃない」批判を黙らせるだけの作品を作り上げてきている。と同時に新しい層へも大いにアピールすることだろう。これが新しい TotorRoなのだ。


allglory

All Glory To John Baltor(2011)

   前EPより3年の時を経て発売される待望の1stフルアルバムは、圧倒的な力で描かれていく音風景の広大さと深遠さに衝撃を受けるのが必至の傑作である。お馴染みのTokyo Jupiterよりリリースされた本作は、彼等の根幹である壮麗なる轟音叙事詩を遥かにパワーアップさせたものだ。リリカルな旋律が舞い踊り、美しいトレモロが飛翔し、幾重にも重なって厚みを増して彩られていく多幸感ある轟音が降り注いでは、恍惚へ。Explosions In The SkyやMONO、Caspianといったバンドと比肩するほどの轟音ポストロックは、美意識で丹念に編まれたものでさらに詩情豊かで力強いものとなっている。だが驚くのは今までに無かった激情ハードコア譲りの咆哮が3曲に渡って炸裂しており、新たなエッセンスがその強大な音塊に収斂していること。メロディアスかつダイナミックな楽曲群はスケールをより雄大にし、ポストロック~激情HCの波を何度も行き交うことで、バンド自体の飛躍にも繋がっている。

 先のTokyo Jupiterコンピにも収録された#1ではCaspianに『LOCAL BAND MVPS』と言わしめた実力を大いに発揮する轟音インスト・ポストロックで眩い昂揚感に包まれる。かと思えば、まさに新境地へと突入した#2では激情のシャウトを交えながら静と動を丁寧に編み込んで獰猛美麗なストーリーを描き出していく。切ないギター・フレーズから世界を劇的に一変させてしまう絶叫と轟音は、彼等が手にした新しい武器といっても過言ではないだろう。続く#3、#4ではバイオレンスな激情性と美麗なインストゥルメンタルによって深遠に綴ることで、あまりにも豊かな起伏と驚異的なスケールを生みだしてしまっている。流麗なメロディが流れ出し、空に果てしなく拡がっていく轟音がバーストした時に訪れるカタルシスは表しがたいほど。個人的にこの2曲からは、Pelicanの大名盤2nd『Fire In Our~』が聴かせた壮大なるサウンドスケープに最も接近したという印象すら浮かんだ。ここまでやってくれるとは!という感嘆の言葉しか出てこない。フランスの新星による4曲40分の本作は、超然と鳴り響く旋律と共に最上の時間を提供する傑作だ。


totorroep

 EP(2008)

   Caspianからも称賛を浴びた轟音系インスト・バンドが、まだメンバーの平均年齢が10代だった頃に制作された4曲入りEP。ご多分にもれず、彼等も静と動を繊細に行き来し、圧倒するほどに膨れ上がっていく大きな音圧で聴き手を自我の解放と恍惚に導くタイプである。加えて過剰な装飾はせず、バンドの生身の演奏のみで表現するのが特徴。その轟音には初期衝動ともいうべき、荒々しくも初々しいエネルギーが秘められており、豪快に切り拓く世界からは息を呑むほどの美しさもこぼれてくる。

 哀しみを湛えた切ないアルペジオ、スケールを広げるトレモロ等のツインギターによる連携で物語を構築し、強靭なリズム隊がしっかりとそれに呼応。そして、ポストロック的なアンサンブルを重ねながら美しく壮大なクライマックスへ。言葉も失うほどの轟音の洪水に身を任せた時は、この界隈を開拓してきたMogwaiやEITSなどといった先人達のカタルシスに近いものを感じさせる。流麗な組み立てから一気にバーストしていく10分超の#2、情熱を持って叩きつけられる轟音に圧倒される#4、とその静と動のコントラストによる効力は絶大だ。また、情感豊かなメロディには気品と滑らかさがあって、耳から体中に染みわたっていく感がある。さらにサウンドの随所からは、言葉を発する以上のエモーションや鋭利かつ重厚なメタリックさが感じられるのもバンドの強みといっていいだろう。Russian Circles辺りが頭をよぎる#3で前述した部分は明白だろう。若者が今持てるポテンシャルを発揮して誠実に創り上げた本作、そこからは力強く勇ましいエネルギーに溢れている。

 なお、彼等も2011年2月に発売となったV.A.『Tokyo Jupiter CompirationⅡ』に参加。哀しみの淵に沈む人々を透き通る様なメロディ、重層的な厚みを持って膨れ上がっていく音圧で別世界へと導いていくその様は体中に電流が走るかのように強烈。現行のポストロック・シーンにおいてもこれほどの力をみせるバンドはそうはいないだろう。クライマックスではゴリゴリのベースとドラムの乱打から始まり、美しい旋律と轟音ギターが奏でるシンフォニーが、このバンドの可能性を大いに物語る。格段に進歩した彼等の新たな一手は、確実に聴き手の心を奪う1曲だ。まだまだ若い彼等の将来、本当に楽しみで仕方がない。

 ちなみにこの4曲入りの『EP』とコンピ収録曲は、バンドのbandcampにて全曲試聴&ダウンロードが可能となっている。http://totorro.bandcamp.com/

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