【ライブ記録】2015/09/22 leave them all beahind 2015 Day1 @ 恵比寿リキッドルーム

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 2009年4月に始まり、不定期開催ながらもコアな支持を集める轟美重音フェスティバル、leave them all behindの第5回が開催された。今回は第3回以来の2DAYS開催となり、唯一の海外アクトとしてISIS(the Band)の中心人物であったアーロン・ターナー総帥が率いる、SUMACが両日に出演。初日はBoris、envy、MONOといった同フェス常連のバンドが第2回以来に揃い踏みで共演し、ltabが掲げる”轟美重音”を精神にも肉体にも焼き付ける。そして2日目はENDONやCOHOLといったヘヴィミュージックのこれからを担うアクトが、前日と違ったベクトルで同フェスを再定義する。

 わたくしは第1回から足繁く全部の回に通っておりますが、今回は初日のみの参戦であります。しかし、相変わらず変な人達がいっぱいいて恵比寿リキッドルームはかなりの入り(第1回ほどではなかったが)。そして、外人の姿が目立つのはこの界隈ならでは。カップルも意外と多かった気がする(笑)。

 ちなみに今回は第2回と同じく国内3組は70分セット、SUMACは50分セットで16時半から22時を越すまでの轟美重音が恵比寿の一角に響いていた。

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envy(2回ぶり4回目 出場率4/5)

 常連中の常連かつ最多出場記録保持者。出演者全てがメインディッシュであるとはいえ、envyが最初にくるってのは意外。いや、まあMONOが最初に来ても意外だが。ちなみに第2回の時はトリだったので、今回はトリを拒否したとか(笑)。また、ドラムはheaven in her armsのRocky氏がサポート参加。

 最新作『Atheist’s Cornea』のリリースに伴った、今年5月~6月に行われた全国ツアーは都合があって行けなかった。というわけで、久しぶりに見たら完全に新アルバム仕様のenvyになっておりました。初っ端が「An Insignificant Poem」で続けざまに「Two Isolated Souls」「Blue Moonlight」。月よりも眩い光のエンヴィズム総決算の同作の強力どころをどんどんと放ち、フロアを狂乱へと落としこむ。ギアを上げてある種の無骨さも感じさせるハードコア・ヒーローぶりがカッコいい。多分、この辺りが本イベント一番の暴れポイントであったはず(笑)。

 旧作の定番曲「Scene」からは音色を叙情方面に傾けつつ、豊かなストーリー展開で光を増幅させる。”轟美重音”、ltabが掲げるそのコンセプトにenvyが導いていくかのように。特に久しぶりに聴いた「A Breath Clad in Happiness」の約束を果たすために雪の荒野を走り抜ける感じがとても良かった。また、「何度も言ってるけど、次はガンダムの必殺技やります(照)」とTetsuさんの恥ずかしそうな言葉から「Shining Finger」は、ぶたない親父レベルの優しさで会場を包み込む。

 ラスト2曲は、sgt.のヴァイオリニスト・成井姫を迎えての壮大な音の渦。いつもの5人のアンサンブルに加えてヴァイオリンを添えることで奏でられる情景は、色味が深まる。「Ticking Time and String」ではガンダムの必殺技ばりのTetsuさんがギターを奏でている姿も見られた。ナッシング「左手」&「さよなら言葉」であろうが、揺るぎないenvyのステージが繰り広げられたといえよう。しかし、まだ1組目だけどデカ盛り2kgカレー食べたような感じで、既に心身に重いものが乗っかってきてる。「君は生き延びる事が出来るか?」と問いかけられてるような気になったりもする。

‐‐‐setlist‐‐‐
01.無価値な詩
02.隔てられた二つの心
03,群青の月夜
04.風景
05.幸福纏う呼吸
06.擦り切れた踵と繋いだ手
07.光る指
08.暖かい部屋
09.刻む時と糸

SUMAC(初出場ブライアン・クックは個人で2回連続)

 記念すべき第1回のトリを飾ったアーロン・ターナー先生が今度は別バンドのSUMACで来日。っていうか半年前にMamifferでも来ておりますが、先生の短期間での来日はやはり嬉しいものであります。さらにメンバーのブライアン・クック(ホモサー)は、昨年の第4回にてRussian Circlesで来日しており2年連続。

 今年2月に発表したデビュー作『The Deal』が初期のISIS(the Band)、またGodfleshにも通じそうな無慈悲なサウンドしか存在しなくて強烈でありました。ライヴにおいてもフルボッコだけを目指すリフ反復とノイズ殺法。各楽器いずれもスタジオ音源とは比較にならないレベルの破壊力であるが、特にニック・ヤシシンのドラムがおかしい。ゆとりなんて言葉しらねえってぐらいに叩く。強く重く数多く。シンプルに削ぎ落としたスラッジメタルなんて、このドラムプレイを見ると言えなくなるかも。タンクトップで謎のアピールするブライアン・クックも含め、優秀で凶悪なリズム隊の2人がいてこそSUMACは成り立ってるんだなあと実感。

 しかしながら、やはりアーロン・ターナー先生の咆哮とギターが鍵である。泣く子がさらにうるさく泣くリフの雨で、首の裏側に圧をドンドンガンガン。もはや彼は音楽の教科書ではなく歴史の教科書に偉人として掲載される迫力と貫禄であります。MCもせず、ノイズを垂れ流しながら集中力を高めて次曲へ入っていくのはISISの時と同様。もうラストの「The Deal」まで、各人の経験値に裏付けされた危険度が高いライヴでさらに疲れが増す(笑)。でも翌日は、この日よりも2割増しで殺傷力がアップしていたらしい。ちなみにライヴ後は、ホモサーのブライアンの乳首がギンギンと私のTL上を賑わせていて笑った。

 MONO(2回連続出場、出場率3/5)

 唯一の連続出場。最も感情的な音楽を奏でるといっても過言ではない、国産インストゥルメンタル・バンドである。昨年に2枚のフルアルバムを同時リリースし、今年初頭に久々のワンマン・ツアーを敢行。そこでフル尺のライヴを久しぶりに見たが、狂おしく繊細な表現で至上の歓喜をもたらしていた。

 今宵も始まりの「Recoil, Ignite」から人々に希望を与えていく。MONOの4人による音の連続・集合・拡散。それは心の淀んだものを浄化するかのように会場に広がる。2曲目はおそらくだが、来月にリリースされるThe Oceanとのスプリット作からの「Death In Reverse」。公式によると「生と死、そして再生」をテーマに作成されたとのことだが、静かなスタートから頭が真っ白になるような騒々しいノイズの海に、世界の終わりをつきつけられた気にさせられる。この頭2曲は喜怒哀楽の怒の感情が高まったかのような激しさが印象的であった。

 そして、クラシカルなピアノと美しいギターにうっとりとする「kanata」へ。以降は4人のアンサンブルで希望の灯を鮮やかにしていく。ありったけの感情を込めたインストゥルメンタルによる表現。そこには音楽に対する信念、情熱、そして愛が宿る。孤独の淵から勇ましく立ち上がる「Ashes In The Snow」を経て、「Everlasting Light」のラストのフレーズでは明日に向かうための後押しがいつももらえる。やはりMONOのライヴはいつだって感動するのである。

 しかし、せっかくenvyと共演しているのだし、Testuさんがゲスト参加した「The Hands That Holds The Truth」を披露しても良かったと思う(1月のツアーではやっていたが)。それとたまには1曲ぐらい昔の曲をやってもいいじゃない!と何度も見ている人間は思ったりもする。実際、去年のArcTangentFestivalで「The Kidnapper Bell」を演奏したみたいじゃないですか。またいつか聴けるんだろうか。

‐‐‐setlist‐‐‐
01.Recoil, Ignite
02.Death In Reverse(多分)
03,kanata
04.Pure As Snow
05.Ashes In The Snow
06.Everlasting Light

Boris(2回ぶり4回目 出場率4/5)

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 Visual EffectにRokapenis、Sound Effectに中村宗一郎氏を迎えてBoris見参である。個人的に約1年振りの彼等のステージ。相変わらずおかしな量のスモークを炊きまくる中で振動を呼びこむ重低音が響くが、前述したとおりに視覚からも”NOISE”が襲いかかる。美しく網膜を焦がしたとはこういうことか。「The Power」、「Huge」とか奈落へ道連れですよ、ええ。

 ドゥーム・ボリス、サイケ・ボリス、アニソン・ボリス、最後はリミッター外れておかしくなったボリスと終わりまで次々と多彩な姿を露わにする。それを平然とクールにフロントの2人は見せていくけど、後ろの方からの「イイィェッ!」等の掛け合いはご愛嬌。これもBorisらしさなのでね(笑)。一気に空気を変えた「Rainbow」に続いては中盤で新曲らしい「More」、そして「キルミスター」の止まらないアニソン・コロスロック2曲連続でテンション爆上げ。多分、ここに「フレア」が入ると役満。光の放列が白く踊る。

 鉛色の哀愁の滴が空から落ちる「雨」はやたら艶めかしく聴こえ、ラストの「Vomitself」は空間の隅々までを埋め尽くし圧する大きい音出す大会が繰り広げられる。破格の音圧。それはltabの破壊と創造のようにも思え、新世代が揃う2日目への橋渡しとしての必然だったようにも思えた。そして最後は、Atsuoさんがキめのダイヴ&クラウドサーフを何度か繰り返す。さながらAtsuo神輿状態に会場が謎に一体となって(何)、初日は幕を下ろしたのだった。終演後にドッと出る疲れ、これぞ長丁場leave them all behindの充足感なのかなあと。

‐‐‐setlist‐‐‐
01.The Power
02.Huge
03.Rainbow
04.More
05.Killmister
06.Melody
07.Akuma no Uta
08.Heavy Rain
09.Vomitself

ltab201505

 最後にスペシャル・イベント、MORRIE御大が目の前を通りかかる。終演直後に出入り口に向かっている時に1mぐらい先をスタスタと歩いて行って、マジでビビりました。ツアーがあるから日本に戻ってきているのは知っていたけど、まさかいらしているとは。

お読みいただきありがとうございました!
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