Archivist、壮大な物語とアトモスフェリック・メタル

 ex-Light BearerのAlex CFやGerfriedを中心とした6人組。2014年結成。Alex CFが創作した壮大なSFの物語に沿ったコンセプト・アルバム3部作を2015年~2019年にかけて発表。Fall of EfrafaやLight Bearerにおける哲学や芸術性はそのままに、ブラックゲイズ/ポストブラックメタル色の強い音楽を奏でています。海外メディア、Echoes And Dustでは「ディストピアをテーマにしたアトモスフェリック・ポストメタル」と評される。

 本記事ではフルアルバム3枚について紹介しています。

目次

Archivist (2015)

  Light BearerのAlex CFやGerfriedを中心とした6人組(イングランド、オーストリア、ドイツの混成軍)の1stアルバム。Alexの創作意欲は底なしで、一体いくつのプロジェクトを動かせば気が済むのか。こちらが心配になってくるぐらい。ちなみにArchivistは”大規模な生態系災害の無意識の生き残り”という意味合いだそう(wikipediaによる)

 Bandcampでは “Atmospheric Metal” と謳っていますが、Light Bearerを掠めながらも違う地平を目指しています。聴いてみて強く感じるのは、Deafheavenの名作『Sunbather』への意識。シューゲイザーの幻想性や浮遊感を醸し出す上で、耳を噛み千切るかのようなハードコアの攻撃性を堅持。

 激情的であり続けようとするAlexの咆哮、折り重なる美ギターのレイヤー、ツーバス・ドコドコ激走とタメの効いたリズムの使い分けによる楽曲からは、ブラックゲイズ/ポストブラックメタル風の感触が強いですね。#1「Ascencion」然り、#3「Dreaming Under」然り、#5「Hades」然り。6分を超える尺の中で続く、甘美と激情のスパイラル。

 さらには、近年のenvyっぽいポストメタル感ある#6「Tying up loose ends in the cold void of space」に#8「4500」、グロッケンを添えた#7「Eureka」といった後半の曲で光彩が増す。ブラックゲイズもできまっせ的な自意識過剰でありますが、彼等以上に哲学や芸術性の高い音楽に昇華するバンドもなかなかいないわけで。そういった点も踏まえて質の高い作品を生み出しています。

Construct(2017)

 2年ぶりとなる2ndアルバム。全10曲約68分収録。コンセプトは“a tale of traversing worm holes and 16th century astronomers, witch hunters and machine Gods”。日本語に訳すと、[ワームホールと16世紀の天文学者、魔女狩りと機械神の物語]となる。彼等が創造するSFの3部作第2部。

 前作からの大まかな変化はございません。1曲1曲がほんの少しだけ短くなったとか、クリーンボイスが幅を利かせているとか、ポストロック/シューゲイズ要素が加算されていたりとか。そういった細かいひねりはありますが、ポストブラックメタルと呼ばれるタイプのサウンド・デザインが基で、情熱を迸らせながらアート性の高い音楽を紡ぐ。

 このバンドの醍醐味が全て詰まっている#1「Lamenting Configuration」を聴けば、芸術はタグ付けできねえんじゃというAlex先生の気概を感じます。Light Bearerの時のような天上の恍惚を少し体験できるようにミックスしてあるのがまた職人的。

 前作でも引き合いに出したDeafheavenと比肩するようなクオリティはあるように思いますが、Archivistの方がもっと大仰な印象あり(逆にDeafheavenはライヴを体験しているせいもあってか、アスリート的)。トレモロの眩惑やじっくりとしたタメ、それに速いリズムが生み出す疾走感や激情の解放を利用しつつ、聴かせどころを各曲でしっかりと作っています。

クリーントーンで中盤まで持っていきつつ、後半に爆発する#6「The Reconstruction」は見事で#1と並ぶ本作の看板曲。さらに#10「The Theosophical~」のラストではキーボードやセリフのサンプリングみたいなのが入ってきて、広大な宇宙に投げ出されたかのような最期を演出します。

 コンセプトに沿った一切の妥協のない作品として納得させられますが、やっぱりLight Bearerは恋しくはありますよ。この作品にLight Bearerっぽい要素が増えている気がしてもね。

Triumvirate(2019)

 約2年ぶりとなる3rdアルバムにして最終作。全8曲50分と収録時間は一番短い。第3章は”脱出ポッドで密航した地球最後の生存者の苦難を描いた物語”となっているそう。ちなみにタイトルのTriumvirateは、古代ローマの三頭政治を意味する。

 サウンドとしての大枠はこれまでと同様。”幻想的”や”ドリーム”感がより強まったブラックゲイズ/ポストメタル。ハードコア的な感情爆発があって、ポストロックやシューゲイズのメロディが寄り添い、スラッジメタルの重量感が覆いかぶさる。そのシームレスな動きと構成の妙が本作にもあり、ダイナミクスによる衝動は息をのむほどです。

 冒頭を飾る#1「Deus Ex Machina」には思わずエピックという言葉が脳内をぎっちり埋め尽くすほどの4分半が繰り広げられる。短尺における楽曲でもこれほどの凝縮を成し、1曲でArchivistの音楽性を表現した名刺代わりの一発を食らわせます。以降は儀式的なムードに流れこんでいきますが、”人間、機械、神、宇宙”といったテーマを盛り込みながら、楽曲に深みを与えている。

 本作の中核を成すのが#4~#6に置かれた”Iteration”と題された3つの組曲。Alcestとenvyの混合物のような前半からポストメタルへの落とし込まれていく#4、Deafheavenのようなアプローチに向かう#5、暗黒儀式に精神も肉体も佇む#6と重厚な物語を支えています。

 締めくくりは10分に及ぶ#8「Ouroboros」。循環や永劫回帰といった意味の本曲は、人間の光と影を表すように静から動への精妙な揺れ動きのもとで構築。彼等の楽曲で最も完成されたポストメタル様式を表現していて、こんな世でも美しい未来があることを示唆するように神々しいラストを演出しています。

 一貫したコンセプトの基で描かれた三部作は本作にて結実。Fall of EfrafaやLight Bearerを経て、Archivistはブラックゲイズとしての挑戦がありました。そういった音楽性の拡大を図りながらも、音楽を通して問いかける物語。Alex CFはそれを徹底的に突き詰め続けています。それは今後も続いていくことでしょう。

 

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