【アルバム紹介】Earthless、サンディエゴ発宇宙行のヘヴィサイケ

 2001年にサンディエゴで結成された、ヘヴィ・サイケデリック・トリオ。Isaiah Mitchell(Gt)、Mike Eginton(B)、Mario Rubalcaba(Dr)の不動の3人で活動を20年以上継続しています。

 2005年に『Sonic Prayer』、2007年には『Rhythms from a Cosmic Sky』と世に送り出した2枚の作品がコアなサイケ・ファンの心を鷲掴み。その勢いで2008年には初のライブ作品『Live At Roadburn』を発表しました。

 その後も地道に活動を続けており、2022年には最新のフルアルバム『Night Parade of One Hundred Demons(国内盤タイトルは“百鬼夜行“)』をリリースしています。日本公演は2015年、2023年と2度の来日ツアーを行っています。

 本記事ではこれまでにリリースされているフルアルバム5作とライヴアルバム1作の計6作品について書いています。

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アルバム紹介

Sonic Prayer(2005)

   1stアルバム。全2曲約42分収録。インスト2曲だけで、ともに20分越え。しかし、その長尺がEarthlessの音楽のスタンダードとなります。

 売れることよりも自分たちのポリシーを貫いたデビュー作となっていて、いきなりここまで大胆な挑戦をしてくるとは驚きです。

 ヘヴィ・サイケなギターリフが20分間、脳内宇宙を隅々まで浮遊して炸裂。原始的な趣のハードロックがおそらくはバンドのルーツ。

 それでいてスペーシーに広がるギターとパワフルなリズム隊の絡み合いが絶品。渦巻くギターに身を任せれば、心地よく酩酊できることは間違いないです。

 時間感覚すら歪ませるディストーション・ギターの連続。それによってめくるめく不思議な音空間に誘われる#1「Flower Travelin’ Man」、儀式ドゥームっぽいリフを執拗に繰り返すことで暗黒に引きずり込む#2「Lost In The Cold Sun」。

 共に時計の短針が進むにつれて、“ここではないどこかへ”行ってしまった気分にさせられる麻薬的な曲に仕上がっています。デビュー作にして痛快、好き放題にやりまくる姿勢も好感。

メインアーティスト:Earthless
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Rhythms from a Cosmic Sky(2007)

   2ndアルバム。全3曲46分収録。頭2曲はインストゥルメンタルで共に20分越えは前作と同じ。オマケとしてGroundhogsというバンドのカヴァー#3「Cherry Red」が収録されています。

 レトロな質感のハードロックを基盤にして、そこに絶妙に絡むリズム隊の強烈なアンサンブルが楽しめるのは相変わらず。

 時間が進むにつれて音のエネルギーが倍化されていき、トリオの壮絶な演奏がさらに火花を散らす。やがてはドラッギーな昂揚感をもたらす、反復と酩酊の見事さよ。

 #1「Godspeed」と#2「Sonic Prayer」は共に言葉を失うぐらいの悶絶度を誇る長編インスト。サイケデリックなサウンドが宇宙へ向けてダイナミックに咲き乱れ、強烈なグルーヴ感には何度となく打ちのめされるほどです。

 ひたすらなジャムセッションの趣はありますが、音を重ねることで目指す極楽。それを体現するのがEarthlessなのです。

 カバー曲である#3「Cherry Red」も70’sのレトロっぽさと奇怪なヴォーカルが、このバンドの特性とマッチしています。危うい魅力を放っている。三位一体のヘヴィな音塊にこの上なく胸を熱くさせられる圧巻の一枚。

Live at Roadburn(2008)

   Roadburn Festivalのライブを収録した2枚組ライヴアルバム。

 DISC1に関しては両方とも新曲。Earthlessらしく2曲とも20分越えのサイケデリック・インストワールドが展開される。激烈アンサンブルと大地を揺らす豪快な躍動感、空間を強烈に歪めるギターリフが生む未知の快楽。

 絶妙なテンポチェンジを挟みながら音が緊張と弛緩を繰り返しすことで、熱がどんどんとヒートアップしていき、とてつもない昂揚をもたらしてくれている。肉感的な快楽を伴うライブ感とブルージーな薫り、この1枚目だけでもかなり悶絶してしまう。

 DISC2に関しては2ndアルバム「Rhythms from a Cosmic Sky」(←超オススメなので聴いてみて)の両巨頭「Godspeed」と「Sonic Prayer」を収録。

 だが、様相が違うのは3人の創造力と演奏力の賜物か?2曲ともにCD通りに演奏しているのは半分くらいで、ライブならではのジャム的な演奏が随所にねじ込まれており、息もつかせない展開がグイグイと意識を引き込んでいく。

 壮絶な暴れっぷり、数多もの内的爆発を引き起こすリフ・グルーヴの嵐には快楽の言葉がよく似合う。

メインアーティスト:Earthless
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From The Ages(2013)

 3rdアルバム。全4曲約65分。長い歳月は経てども、不動の黄金トリオによる終わりの見えないジャム演奏で、サイケデリック・ヘヴンへ突き進むのは相変わらず。

 Earthless節全開の#1「Violence of the Red Sea」からして、思わず唸るようなできばえ。火を吹く歪んだファズ・ギターの応酬、骨太のベースライン、タイトなドラミングが渾然一体となって、開放と快楽へと誘う。

 70’sハードロックやサイケをベースにした渋い趣、さらにスペース・ロックやクラウトロック、ストーナーまでを加味し、モダンな感覚もしっかり持ち合わせています。

 2ndアルバムからは地続きの内容と言えますが、追及し続けたグルーヴの快楽といい、サイケデリックな酩酊感といい、他バンドから一歩抜きんでているなと。やりたい放題ではあるけど、この手のジャムにありがちなルーズさはなく、かっちりとした構成で高みに登りつめていく感じも独特です。

 #2「Uluru Rock」ではゆっくりと煙たいリフを反復させる前半から、中盤から徐々にギアをあげていく。終盤ではドラッギーなソロと扇情的なリズムが嵐のように襲いかかる快感はたまらないものがある。

 08年発表のライヴ作品『Live At Roadburn』にも収められていたラスト・トラック#4「From The Ages」は、時に戦慄さえ覚えるサイケデリックな30分超えの大曲。圧倒的なテンションで昇天するまで終わりません。

 本能から揺さぶりをかけてくる巨大なグルーヴが最高で、Earthless健在を高らかに示す傑作。

メインアーティスト:Earthless
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Black Heaven(2018)

 4thアルバム。全6曲約39分収録。オリジナル作の中では一番の異色作です。というのも10分越えの曲がないこと。そしてアイゼイア・ミッチェル(Gt)が6曲中4曲でヴォーカルを担当しているからです。

 長距離走から中距離走ぐらいの尺になったとはいえ(8分台の曲が3曲ある)、歌うという当たり前がイレギュラーなのがEarthless。

 今回の変化について、アイゼイアはOrangeのインタビューで”少なくとも1曲はヴォーカル入りの曲を作ろうと思っていたけど、まさか4曲になるとは思っていなくて、成り行きでそうなったんだ“と答えています。

 ベースとドラムが生み出す骨子に対してギターが自由に味付けを重ねていくスタイルは変えず、アイゼイアのしゃがれ気味の声を乗せることでビンテージな風合いを寄与。

 歌を入れれば聴きやくなると安直には言えませんが、#1「Gifted by the Wind」を始めとして70’sサイケ~ハードロック色を増してアピールの範囲は広がっています。

 ゆったりとしたペースを維持しながらブルージーなソロとたそがれた歌が重なる#6「Sudden End」は、ヴォーカル曲ならではの味わい深さ。反面、少し簡潔なところと破綻のなさが物足りなくもあり、”いつ終わんねん”的な熱と狂いが恋しくなります。

 そんな本作で最もインパクトを与えているのが#4「Volt Rush」。113秒というEarthlessにとっては初の短距離走ながら、ゴキゲンで軽快なドライヴ感で突っ走る超気持ちイイ仕上がりです。本作が入門編に向くかといえばそうでもありません。それはやはり先述したように”異色”であるから。

 The Heavy Chroniclesのインタビューで”Black Heavenで根本的に違うことをやりたかっただけで、この新しい旅にみんなを招待しました“と残していますが、黒い天国はいつもとは違う昂揚感に包まれます。

Night Parade of One Hundred Demons (2022)

 5thアルバム。全3曲約60分収録。国内盤のタイトルは『百鬼夜行』で、同名の日本の妖怪伝説にインスパイアされており、Flower Travellin’ Bandを始めとした日本バンドからの影響も加味された作品です。

 2曲にトラック分けされている#1~#2「Night Parade Of One Hundred Demons」が40分、#3「Death To The Red Sun」が20分と実質は2曲。

 従来のスタイルに立ち返り、ヴォーカルはなし。サイケデリックなジャムセッションが延々と続くような妖怪巡りと宇宙の旅です。クラウトロックに通ずる浮遊感とシンセサイザーのアプローチ、リズム隊による胎動、道先案内人のごとしギターの自由紀行。

 和のフレーズの引用や妖怪たちのうめきが聴こえてくるような音作りにこれまでとの違いを感じますが、おどろおどろしさが前面に出ているでもなく、彼等らしい乾いたタッチとヘヴィサイケが良い形で混ざり合っています。

 #3「Death To The Red Sun」の8分35秒過ぎから始まる本番は怒涛というにふさわしい。蛇行を繰り返しながら着地点がどこかを探り、終わりが見えないセッションの中で狂いと音楽を体感し続ける悦楽がある。

 タイパを求める人間には理解できない時間の流れ方と正解のなさ。でも、これこそがEarthlessの醍醐味でしょう。

プレイリスト

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