2021年6月から活動を始めた東京を拠点に活動する4人組ロックバンド。エモ、ポストロック、シューゲイザーを織り交ぜたサウンドとハイトーン・ヴォーカルを軸にした音楽が評判を呼ぶ。1stアルバム『つくる』を2023年11月下旬にリリース。本記事は同作について書いています。
アルバム紹介
つくる(2023)
1stアルバム。全12曲約35分収録。“アルバムコンセプトは「つくる」。出会った人や物、見てきた景色や経験から、人格、人生を作り上げていく様相を、完全新曲12曲で描いている“とのこと(リリースインフォより)。
太陽の光を反射した水面のような清涼感と瑞々しさのある作品です。クリーントーンのアルペジオを主体にポストロック~シューゲイズ御用達の轟音ギター、線細めのハイトーンヴォーカルが絶妙に噛み合い、軽やかに進行。#1「つくる」~#2「国」のコンボから早くも聴き手の心を鷲づかみしてしまいます。
平均3分の尺に変則性やひねりを入れていますがスムーズに展開し、いい意味で尖り感や力感がなくなめらかな聴き心地。エモという言葉もあてはまりますが暑苦しさは感じず、熱量の押し売りにならないスマートさが曲調の軽妙さにつながっています。
初期toe~American Football~Penfoldのラインをつくツインギターは惹かれるものがありますし、あくまでナイーヴな情感を伝える歌もすっと入ってくる。轟音化現象にしたってそれありきの組み立てではなく、あくまで手法のひとつとして楽曲の中になじんでいます。
タイトルはおっかないのになつかしいエヴァーグリーンの光景が広がる「ここじゃない地獄」、メロウな旋律が盛り立てる#6「One」、マスロックの軽やかさからシューゲイズの音響まで轟く#8「遠くなる」、90’sエモ的な空気を感じさせる#12「こわす」と魅力的な楽曲が勢揃い。
全編通して感じるのは初夏を思わせる澄んだ空気。様々なブレンドの中にリバイバルと言わせない自分たちの色を出すことに成功しています。1stアルバムからここまで見事なものを作ってしまって心配になるぐらいですが、こういうのを待っていた!と声を大にして言いたくなる素晴らしい作品。