才女フェイス・コロッチャのソロ・プロジェクトとしてスタートし、後に夫となるアーロン・ターナー(ISIS the Band他)が加入して2人編成となった耽美派アンビエント・デュオ。
ピアノをメインの武器としながらも美しいアンビエント、オルタナ・ギターが折り重なる世界は独特の緊張感に包まれる。
本記事では1st~2ndアルバムの2作品について書いています。
アルバム紹介
Hirror Enniffer(2008)
1stアルバム。全6曲約34分。Hydra Headからのリリース。アンビエント、ミニマルミュージック、オルタナティヴ、ポストロックといった要素を内包した音楽性。
その中心となるのは妖しい闇のグラデーションともの悲しさを内包したピアノ。時にはエレガントとも取れる凛とした響きに心が揺らめきますが、#4、#5辺りの楽曲では締め付けるような切なさが真っ白な雪のように積もっていく。
たゆたうノイズや不協和音のようなギターは退廃の薫りを漂わせながら絡み合い、悲壮感と荒涼感も伝えてきます。どことなく鬱蒼としており、まるで曲全体が濃厚な霧で覆われているかのようです。
聴いているとうっとりとしてしまうと同時に現実から遠ざかっていき、妄想の世界に逃避していく感覚を覚えてしまう。
美しいノイズのゆらぎが印象的な#2やアコースティックな音色による牧歌的な空気と女性の甘い声が耳を掠める#6といった曲も決して光を灯しているわけではなく、深い陰りを帯びており、シリアスな世界観を打ち立てるのに重要な役割を担っています。
独特の緊張感と美、現実感のある切なさを求めたい方にオススメしたい作品。
Mare Decendrii(2011)
2ndアルバム。仄暗く重たいドローンの闇から息を呑むほどの美しさが溢れだしてくる見事な作品。
前作でもドローン/ミニマル/現代音楽と親和しながら、ポストクラシカルな優美さと独特のアート感覚を持った世界を打ち立てていましたが、本作ではその音楽をさらに掘り下げて深遠な領域へと突入しています。
前作を遥かに上回る重厚なドローンギターの妖しき轟きがすさまじく、背徳感の詰まったノイズの残響や恐ろしく緊張感を持って鳴らされるリズムの一打一打を繊細に調和させながら、儚い闇を忍ばせた音の風景を描いていく。
もちろんフェイス・コロッチャの流麗なピアノが主体となっている事に変わりはなし。それがゆるやかな展開と一定の優美さを保ちつつ、彼女の儚いヴォーカルが多用されたことで間口はさらに広くなっています。
不穏な静寂からドローンの深い霧を抜け、クライマックスのアヴァンな展開で涅槃の地に引き連れていく13分を超える#1からその凄さは実感できるはずだし、哀しみの念を募らせるピアノの音色や深いドローン・ギターを筆頭に厳粛な響きと異常な重みを帯びたサウンドスケープが心身に感銘を与える20分超えの#2は圧巻。
静寂という印象が全体的に強いにも関わらず、ここまでの重たい緊張感や儚い情念の揺らぎを聴かせる事ができるのはMamifferの強み。
SUNN O)))のStephen O’Malley『ファインアートとしての勇敢な仕上がりに感服する』という賛辞を贈ったのも納得の作品。
Statu Nascendi(2014)
3rdアルバム。
The World Unseen(2016)
4thアルバム。
The Brilliant Tabernacle(2019)
5thアルバム。