ポストメタル、ポストロック、エモ、ヴィジュアル系の交差点となる音楽ブログです

NEU! ミニマリズムとハンマービートの美学

 創初期のkraftwerkに参加していたクラウス・ディンガーとミヒャエル・ローターの2人によって1971年に誕生したユニット。FaustやCanと並んでクラウトロックの代表格とされる存在で、『NEU!』『NEU! 2』、『NEU! ’75』のオリジナル3作は現在でも数多の存在に影響を及ぼしている。

 本記事は70年代にリリースされたフルアルバム3作品について書いています。

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NEU!(1972)

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   1972年に発表された1stアルバム。傑作です。クラウトロックと呼ばれるコアな人気を誇り、世界に多大な影響を与えたジャンルにおいて、NEU!の放つ輝きは凄い。当時としては斬新であったろうミニマリズムとハンマービートの美学は、今でも後世に大きな影響を与えています。削ぎ落されているのに現代に通ずる数々の要素を内包しすぎている。

 ブライアン・イーノ御大からデヴィッド・ボウイ、トム・ヨーク、そして国内盤の解説にメンバーの対談が載っているバッファロー・ドーターまで絶賛の声が挙がります。ミニマルによる反復が酩酊感、吸い込まれるような心地よさは格別。延々と繰り返し重なり合うギターやベース、機械のように正確に刻まれるドラム、自在にコラージュされる電子音等が見事なグルーヴを紡ぐ。また、聴けば聴くほどにサウンドの端々にアイデアが詰められている。

 本作は世紀をまたぐ大名曲の#1「Hallogallo」で全てが決まっているといっても過言ではないだろう。今、聴いても先進的であり、現在のテクノ/クラブ・ミュージック、ニューウェイヴ、音響系、ポストロック、プログレなどの資本とされている。だが、根底にあるのは確実にロック。また、機械的で抑圧されているが人間味と自由さがいい意味での解放感を生んでいます。10分に及ぶこのミニマリズムの煌きは至高といっても過言ではない。

 それゆえに他の楽曲は軽視されがちだが、アンビエントで瞑想的な#3や独特のノイズによる意匠と規則正しいビートで徐々に熱量を上げていく#5なども収録。リリースされて50年経とうが、今でも新しきを感じられる作品です。

NEU! 2(1973)

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   2ndアルバム。制作費が足りずにアルバム半分の曲しか録音できなかったため、すでにリリースしたシングルの別バージョン等を収録して、なんとかアルバム曲を埋めたそうな。

 さすがに革命的とまではいかないが、彼等ならではの味は濃厚。基本的には1stの延長線上にある作風で、かちっとしたハンマービートと美しく滑らかなギターのミニマルな拡散が軸。シンセ音が自在に寄せては返し、複雑なテープ・コラージュやヴォイス・サンプリングを施すことで実験精神の強い独自の音空間を創り上げています。時代を先取りする尖鋭性を発揮したNEU!は健在で、さらに音楽的土壌を拡げている印象。

 「Hallogallo」の続編といえる#1「Fur Immer」で永遠に走り続ける昂揚感を獲得し、その後は前衛的/変態的な展開へと突入していく。ポスト・パンクやニュー・ウェイヴを思わせる楽曲が登場したり、テクノの未来を占ったような曲を披露したり、メロディアスな曲調で意表を突いたりと、前作以上にぶっ壊れ感が強い。

 そして、本作の特徴は前述したように製作費が無くなったため、既存曲の回転数を変えたミックスを入れていること。極端に回転数の速遅をいじる魔法で世界を反転させていることでまたNEU!は新たな創造力を発揮してみせた。”偉大なる失敗作”と評されていたりもするそうだが、本作で表現してみせた前衛的音楽もまた現代に大きな影響を与えた事は間違いない。

NEU! ’75(1975)

   クラウス・ディンガーの実弟でもあるトーマス・ディンガー、とコニー・プランクの元助手だったハンス・ラムペが加入し、4人で作成された1975年リリースの3rdアルバム。本作ではこれまでの集大成といった趣で特に奇抜な部分もない。ですが、とても美しく洗練された前半と強烈なアグレッションで畳みかける後半の流れでスパークします。

 ミニマルもテクノも音響もパンクもニューウェイヴも詰め込んだ感じ。ただ、聴きやすさを意識したのかユニークな独自性を保ちつつ、入りやすい印象。NEU!を象徴する美しいミニマリズムが息づいた#1「Isi」で幕を開け、そのエレガントな電子音の装飾と流麗なピアノ、ディンガーの精微なビート、煌きを増したメロディが優雅に泳ぐ様子にハッと体中が覚醒する。

 眩惑的なギターの衣を被せていく#2にしても静かな情緒が蠢くアンビエント風の#3にしても、前述したように洗練の度合いが違うし、チルアウトな雰囲気にポップ性も軽く練りこんでいて耳触りがとてもいい。とはいえ、この前半を過ぎると後半の#4「Hero」では騒擾なパンクソングが度肝を抜く。押し殺していた感情が一気に爆発したかのような歌やファズ・ギターの炸裂は、これまでで一番の衝撃があるかもしれない。アナログのA面である前半とはまるで世界が一変。

 #5は彼等らしいミニマリズムが詰まっていてもやや上ずった感情が乗っているように思えるし、さらにオープンに弾けてる印象があるラスト#6も痛快。個人的にはこの静寂に浸れる前半から興奮を存分に煽る激しい後半の流れは癖になる。評価は3枚の中で一番低いけど、洗練された一手として十分に役割を担ったはずです。

 ただ制作前に既に仲が悪くなっていたらしく、本作をもってバンドは終演。このあとに中心メンバーの2人が袂を分かち、ハルモニア、ラ・デュッセルドルフへ進んでいく事になる。

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