極みの激しさ、SlipKnoT

 1995年に結成された大所帯メタル・バンド。10人近いメンバーで繰り広げるニューメタル、ミクスチャー、オルタナティヴなサウンド。さらにはマスク+つなぎという装いも手伝って、。日本では”猟奇趣味的激烈音楽集団”というコピーが初期にはついていたり。1999年にリリースした1stアルバム『Slipknot』から爆発的な人気を獲得。年を経るごとにその効力を世界に増していきました。

 本記事ではアルバム5枚について書いています。ちなみに著者が初めて自発的に聴いた洋楽アルバムが、SlipKnoTの2ndアルバム『IOWA』です。ライヴは2004年11月に一度だけみています。

目次

SlipKnoT(1999)

アイオワが産んだ猟奇趣味的激烈音楽集団による衝撃のデビュー作!ヴォーカル、2ギター、ベース、ドラム、2パーカション、DJ、サンプラーという総勢9人からなる怪物が、まさに世界を飲み込むべく産みだした、現存するヘヴィ・ミュージックを木端微塵に打ち砕く凄まじい音像が渦巻くデビュー・アルバム。スリップノットの混沌の歴史は、ここから始まった…。「(シック)」、「ウェイト・アンド・ブリード」、「スピット・イット・アウト」他収録。

 猟奇趣味的激烈音楽集団の記念すべき1stアルバム。わたしは2003年に2nd→1stと遡って聴いています。完全にふざけている格好・風貌からは、まるで想像もつかない驚愕の作品です。ヘヴィメタルやオルタナティヴ、ヒップホップ等を飲み込んで放たれるサウンドは、かつてニューメタルと呼ばれましたが、新種のラウドロック/ミクスチャーとして世界に与えた衝撃は大きいものです。

 奇怪に揺れ惑う#1「742617000027」で背筋を震わせ、超弩級のインパクトを与える#2「(Sic)」で完全にぶっ飛ばされます。(「へっこんだペー」)。ヴォーカルにツインギター、ベース、ドラムという編成にとどまらず、2人のパーカッションにDJ、さらにはサンプラーを擁する9人もの大所帯。そこから放たれる猛烈なサウンドは、あまりにも壮絶。#3「Eyeless」や#5「Surfacing」、#8「Liberate」にしても破壊力は抜群。特にコリィ・テイラーの鬼気迫るヴォーカルは、初期のスリップノットの一番の武器になっています。

 凶悪なまでのヘヴィネスを生み出す楽器隊も凄まじい。パーカッションまで交えたリズムの分厚さは特筆すべきものだし、スクラッチやラップ調の歌なんかも入ることでの変化のつけ方も巧い。こういった軽妙さがヘヴィネスの限りを尽くした音に、良いスパイスとして効いています。ポップな面も引き立たせて彼等のアンセムとして君臨する#4「Wait And Bleed」、ヘヴィなリフとラップで捲したてながらサビはキャッチーに仕上げる#6「Spit It Out」辺りは、彼等らしい。平均して3分台というコンパクトな楽曲設計もまた、アルバム全体のスムーズさに繋がっています。

 いずれにしてもこの9人が提示した本作は、革新的なものです。それに加えて、獰猛なサウンドと奇抜な見た目、このギャップが世界で支持された要因のひとつともいえるでしょう。100万枚以上を売上げ、想像以上の成果をあげた1stアルバム。「マジでリアルにヤバイから!」と某芸人も言いそうなぐらい、ここが混沌の始まり。

IOWA(2001)

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 1stアルバム『Slipknot』で世界中の話題をさらったグロテスクマスク&つなぎ集団の2ndアルバム。タイトルは自分達の出身地より。これが全米初登場3位、日本でもオリコン初登場4位を記録した、とんでもない作品です。売れたということは幾分か聴きやすくなっているのか・・・と思いきや、ここに存在したのは1stアルバムを凌駕する凶悪無比な音塊。重戦車のごときギターリフと非道なブラストビート、怒りの咆哮が地殻変動を起こす#2「People=Shit」からして残忍さの極みです。スカウターで戦闘力を図ったら、間違いなく壊れます(笑)。

 前作の時点でも化け物でしたが、怒りや憎悪をエンジンにここまで激烈な音楽へと昇華してみせるとは驚き。暴虐のスクリームと怒涛の重低音が鼓膜を押し潰す#3「Disasterpiece」、 #6「The Heretic Anthem」も本当に容赦なし。リミッターが完全に外れて、一面を焼け野原にでもせんとばかりの破壊力です。それだけでなく、キャッチーな面も整合性の取れるギリギリで生きており、「近づきすぎたらお前を殺してやる」と歌ってるわりに耳馴染みの良い#8「Left Behind」はMUSIC VIDEOにもなっています。獰猛さと抒情性の両立は、スリップノットが他と一線を画す理由のひとつ。

 しかも#7「Gently」や#14「Iowa」といった曲では、Toolを思わせる暗黒プログレッシブで重苦しく精神を攻撃。あらゆる方面からのエクストリーム・サウンドを志向。全体を通して緩急をつけながら、極みの激しさで聴き手を制圧する。惜しむらくは、曲の出來・不出来の差があり過ぎるように思うところでしょうか。とはいえ、音楽的な成功も商業的な成功も収めた2000年代のモンスター・アルバムの一枚ではあるでしょう。

 最後にわたし個人のお話をさせていただくが、この『Iowa』が洋楽で初めてまともに聴いたアルバムです。初めての#2「People = Shit」や#6「The Heretic Anthem」は、今までにない稲妻のような衝撃が体中に走りました。それはそれは壮絶な音楽体験になり、洋楽のうるさいロックの源流となっています。

Vol. 3: The Subliminal Verses(2004)

 解散の危機を乗り越え、約2年9ヶ月ぶりとなった3rdアルバム。今回はロス・ロビンソンの元を離れ、新たにスレイヤーなどを手がけるリック・ルーピンにプロデューサーを変更。この新たな出会いが彼等の叙情性にフォーカスを当てて、見事な化学反応を引き起こしています。Stone SourやMurderdollsなどでメンバーが個々にソロ活動を始めた。それもプラスに働いているでしょうが、ここまで多彩・多様な面を持つバンドであったのかという事に、本作を聴いて改めて気付かされます。

 その象徴となるのが#8「Vermilion」。摩訶不思議なイントロから美旋律と切ないヴォーカルが光る曲です。さらに続編となる#11「Vermillion Pt.2」では哀愁のアコースティック・ナンバーとして機能。代表曲のひとつである#4「Duality」も感情豊かに歌い上げるコリィが印象的で、歌ものヘヴィロックとして完成度は高い。Stone Sourでの活動を還元し、スリップノットでもその美声を響かせています。

 一方で十八番の激烈ナンバーは暴風のように吹き荒れる。こちらも空耳アワーに出てくる#2「The Blister Exists」から#3「Three Nil」への進撃、テクニカルなドラムからスタートして中盤のギターソロが強い印象を残す#7「Welcome」、興奮必至の#9「Pulse Of The Maggots」と抜かりはありません。ギターソロの大胆な導入に驚きは大きい。解散危機にもあったバンドが今までにないアイデアを取り入れながら積極的に変化することで、「これから」を強く意識していることが伺えます

 前作『Iowa』は極限のヘヴィネスを轟かせて、ある意味一つの到達点となった作品でした。対しての本作は、リック・ルービンと共に新たなスリップノットの音像を追求し、成果を上げました。確かに発売当初は賛否両論でしたが、こうしてリリースから経ってみると良い変化だったなあと捉えている人が多い気がします。安直にメロディアスになったわけでは決して無い。意義ある変化を遂げ、スリップノットは確かに前進しました。

All Hope is Gone(2008)

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 前作から4年ぶりとなる4thアルバム。2008年リリース。1stアルバム『Slipknot』と2ndアルバム『Iowa』では、極限の憎悪が渦巻く激烈混沌ヘヴィネスで全世界を制圧。解散寸前までいった前作の3rd『Vol.3』ではリック・ルービンの元で、脳髄をぶった切る強烈なサウンドを少し減退させ、新境地といえるメロディアスな面を強調して世界の度肝を抜きました。

 そして、”All Hope is Gone = 全ての希望は消え去った” と名付けられた本作のリリース。なるほど、やっぱりこういう作風できちゃったか、という感じのSlipknotとStone Sourが中和したようなものであり、前作の路線を推し進めた作品といっていいかもしれません。

 Stone Sourの要素は前作でも感じられたが、美しく響き渡るバラードの#11「Snuff」でもお分かりの通り本作はそれ以上の混成具合。もちろん Slipknotお約束である#2「Gematria」、#12「All Hope Is Gone」のように凄まじいまでの音圧と暴走した狂気が支配する激烈曲は健です。

 だが、それら2曲を除けば暗黒的な雰囲気を醸しだしたヘヴィロックといった印象が強いですね。9人が生み出す独特の有機的グルーヴに引きずり込まれるし、さらに歌を重視するようになったヴォーカルにも熱きものがこみ上げくる。特に#8「Gehenna」ではダークな質感とメランコリーの両端が際立った楽曲に仕上がっています。

 しかし、これまでの作品に存在したスバ抜けた曲というものが存在しないこと、以前のように9人が掛け算して生まれる凶暴なエネルギーがやや弱いのが少し寂しく思えてしまうところ。Slipknotであればもっとできるはず!と物足りなさを感じる人間はいると思います。

 これまでの過程を踏みしめて多様な音楽性を披露し、グルーヴを重視したような作風は前作以上に賛否を分けました。まあ、わたし自身も正直なことをいえば、「SlipKnot から “すりっぷのっと”」へ表記が変わった印象を持ってます。ここまでに発表された4枚のアルバムの中で、一番聴いてないというのが実際のところです。

.5: The Gray Chapter(2014)


 ポール・グレイの死去、そしてジョーイ・ジョーディソンの脱退とリズムの両要を失う。それを乗り越えて6年ぶりとなる2014年リリースの5thアルバム。10数年経っているので、いまさらそんな怪物クラスのエネルギーが生まれるわけはないが、もちろん1stや2ndの怒りや衝動はここにはありません。ポールに捧げた#1「XIX」というオリエンタルな色調の楽曲からスタートする本作は、流れとしては3rdや4thを汲んだものであり、多彩な表情を持つメロディアスなヘヴィロックという印象です。

 しかしながら、前作よりも初期衝動の揺り戻しがあるというのは確かに感じるところ。如実に感じるのが#11「Custer」や#13「The Negative One」辺りで、初期を彷彿とさせる激音に見舞われます。スラッシーな展開と重厚なグルーヴ攻めでここまでやってくれるとはと踊オr気。それに#3「AOV」、#4「The Devil In I」にしてもリフやビート、シャウトに強烈な破壊衝動を注ぎながら、美しい歌やメロディへと巧みに切り替えてインパクトを残しています。一撃の殺傷力よりも展開でしっかりと魅せられる辺りも良い。リズムの核は変わっていますが、そこまで違和感を持つものではないと思います。

 そして、いつも通りに騒がれるStone Sour化。本作にしてもクリーンヴォイスを多用して歌い上げることやメロディが引き立つ場面が多いから致し方なし。今の彼等はどうしたって、SlipknotとStone Sourが交錯したものになるでしょう。#5「Killpop」は確かにStone Sourっぽい楽曲。

 ただ、#8「Requiem」に関しては陰鬱な緊迫感と重音が被さってくる歌もので、スリップノットらしい感じ。彷徨える感情を吐露したようなミドルチューンで鬱蒼と重厚に本作を締めくくる#14「If Rain Is What You Want」もそうでしょう。大所帯が分厚いサウンドを奏でているのは関係しているが、意図して変化をつけています。

 「リズムの要を失ったけれども思ったよりも本作は悪くない。けれども、スリップノットに求めているものとは違う」みたいな意見はやっぱり多くなりそうな気がします。個人的には、本作は前作よりは気に入りましたし、予想以上の作品には仕上がっていると思います。まあ、もちろん初期派ですけどね。

We Are Not Your Kind(2019)

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 6thアルバム。追加予定。

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