インストゥルメンタル美凝縮バンド The End Of The Ocean

 アメリカ・オハイオ州コロンバスのインストゥルメンタル5人組。男性3人と女性2人で構成される彼等は、Explosions In The SkyやSaxon Shoreなどに連なる美麗インスト・ポストロックを奏で、10年代のポストロックの新たな波をつくる存在と称えられたりしたようです。2011年に1stアルバム『Pacific / Atlantic』をリリース。そのアルバムではSpotifyである曲が2000万回再生されていたりもし、早くも成功を収めます。

 その後はバンド内の問題もあって、制作に遅れが出たのですが、2019年にフルアルバムとしては実に8年ぶりとなる2nd『aire』を発表。映画音楽のようだと評されたサウンドスケープは、力強さを獲得して新しいフェーズへと進んだことを証明しました。そんな彼等について書いたのが本記事です。日本語の記事がほぼないに等しい状態ですが、もちろん良いバンド・良い音楽ですのでぜひ聴いてほしいですね。調べると日本のマスロック・バンド、LITEの2015年USツアーに同行した経験があるそうです。

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Pacific / Atlantic(2011)

  オハイオのインスト・ポストロックの1stフルアルバム。本作は8曲入りで、前半4曲が「Pacific」で後半4曲が「Atlantic」と位置づけ。収録時間は48分ほどですが、10分近い曲を2曲含みます。

 内容としてはまさにインスト・ポストロックの良心といえるもの。哀愁あるセンチメンタルなフレーズを奏で、伸びやかに飛翔するトレモロに連れられ広大なインスト叙情詩を造形する。その音からはExplosions In The Skyに代表されるような正統派のポストロックを浮かべる人も多いと思います。穏やかな感情の起伏をそのまま綴ったような感じで、美麗なメロディは心に染み、ゆるやかに音が隆起しながら歓喜と昂揚で満たしていく。初期のMogwaiやMONOといった程の轟音にはそれほど発展せず、アンビエント寄りで繊細かつノスタルジックに物語を構築していきます。

 少しずつ燃え上がっていくように力強さと音圧を増していく展開には、鷲掴みにされる人も多そう。儚く淡いシンセや打ち込みのビートを導入しているが、真摯に感じる表現がとても良いのです。10分超をかけて壮大に綴られる美しくエモーショナルな#1、躍動感あるマーチング・ドラムにメランコリックな旋律とシンセの意匠が重なる#3、本作随一のエモーショナル轟音バースト#5辺りでこのバンドの質の高さを知れるはず。ちなみに#3「Worth Everything Ever Wished For」はSpotifyで謎の2000万回再生。他の曲と100倍ぐらい違うんですけど(笑)。とはいえ、他の曲でも10万回以上はいってますので。

 そして、締めくくりの11分を超える#8「we always think there is going to be more time」がまた珠玉という言葉を贈りたい名曲で、重層的な美しい音のヴェールが包み込む。シンプルであるが故にドラマティックさと静と動の起伏を突き詰めているのを強く感じます。そんなリリカルでノスタルジックなインスト群、必ずやあなたの胸を打つはずです。

aire(2019)

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 2012年のEPを抜くとフルアルバムとしては約8年ぶりとなる2ndアルバム。全10曲で約50分の収録時間。1曲だけ7分近い曲はありますけど、全体的にコンパクトに収めつつ、音の力強さ、躍動感が増した構成になっています。少々の細マッチョ化といいますか(バンドメンバー5人、ひとり除いて細いけど)。バンド特有の煌びやかな美麗さ、アンビエンスの揺らぎは維持しつつも次のフェーズに踏み出したことが伺えます。

 その象徴となっているのが、#2「baravado」です。手数が明らかに多くなったドラムの推進力に導かれるように、ツインギターは美しく絡み合い、キーボードが艶やかに意匠。2010年代に入る前のGod Is An Astronautの感覚に近いという印象さえあります。歓喜を意味する#3「jubilant」も前曲の流れを維持しつつ、中盤ではブラックメタルっぽいドコドコ疾走という変化を交えながら、インストゥルメンタルの美を華麗に抽出。パワフルな振る舞いを覚えたとはいえ、持ち味もしっかりと堪能できる仕様。

 しかし、後半に進むにつれて、勢いと力強さは影を潜めていきます。ゆったりとした組み立てで繊細に聴かせるモードへ。Saxon Shore辺りを彷彿とさせる本作最長の#7「redemption」はひたすらにうっとりとする陶酔の1曲。さらには冒頭のキーボードから引き込まれる#9「desire」は随一の美と轟きを兼ね備える。執拗なまでの美しさの研磨から見えてくる海の果て。剛を会得しながらも柔を引き立たせるという構成は、やはり彼等の音楽を一段上げたという印象を受けます。The End Of The Oceanの航海はこれからも続くのでしょうが、次作にまた8年かけないでねと願うばかりです。

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