Triptykon、深まる暗黒

 スイスが産んだブラックメタルのオリジネーターCeltic Frost。その中心人物であったトム・ガブリエル・フィッシャーが新たに結成した新バンド。Celtic Frostの終作『Monotheist』の路線をさらに推し進め、ドゥーム・メタルからデス/ブラックメタルの深部までもをのぞき込むその音楽性は、常にある探求心のもとで拡張され続けている。

 2010年に1stアルバム『Eparistera Daimones』、2014年に2ndアルバム『Melana Chasmata』をリリース。本記事ではEP作品を含め、3作品を紹介しています。2010年6月に開催されたEXTREME the DOJO Vol.25にてわたしはみてますが、威圧する音と迫力は半端ないものでした。ちなみに07年1月に開催されたCeltic Frostの来日公演も体感しております

目次

Eparistera Daimones(2010)

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   ついにヴェールを脱いだ元Celtic Frostの首領、トム・ガブリエル・フィッシャーによる新バンドの1stアルバム。強烈すぎるアートワークは、Celtic Frost『To Mega Therion』から約25年ぶり2度目のコラボレーションとなるH.R.ギーガー氏によるものです。

 オープニング曲のやけに長いイントロから『ウッ!』でスタートした時は変わってねえと思って笑いました。しかし、作品を聴く限り、トム・ガブリエル・フィッシャーの業火は未だにどす黒く邪悪な色で燃え続けています。本作はCeltic Frostの最終作『Monotheist』の延長戦上にある作品であるものですが、大作志向が強まり、10分を超える2曲を収録した9曲約72分という構成。

 憎悪・怨念の濁流は肥大化し、おぞましい世界が構築されています。曲調もミドル/スロウを中心としたドゥーム・メタルに近いものが多く、鈍色のリフと地を揺らす強靭なリズムがグルーヴを支え、修羅を潜り抜けてきたトムの歌いまわしも相変わらずの存在感で、曲に怨念を吹き込む。一音一音の鳴りはとにかく強烈。

 速さと重さの精度を生かして11分に渡っておそるべきインパクトを与え続ける#1の始まりから圧巻ですが、重圧的サウンドの中で時に耽美なフレーズが差し込む#2も闇落ちに十分すぎるほど。血みどろの悲惨な情景を構築する爆撃ブルータルデスラッシュ的な#5にはぶったぎられる。

 死霊が天へと昇っていくかのようなインスト#4、女性ヴォーカルを起用してミステリアスな浮遊感をかもし出す#8などのアクセントも良し。19分にも及ぶラストの#9では地獄ドゥームで完全に息の根を止めにかかる節操の無さ。闇の深さを雄弁に物語る一枚となっている。

Shatter(2010)

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 デビュー作から早7ヶ月というスピードでリリースされた待望の5曲収録のEP。わたしが足を運んだ2010年6月のEXTREME THE DOJOにおける衝撃的なパフォーマンスは印象深いものでした。このEPもデビュー作のおぞましい世界観と暗黒神としての威圧を受け継ぎ、強力な内容となっています。

 まずは冒頭を飾る#1「Shatter」でぐうの音も出ないほど不穏を掻き立て、痛めつけ。どす黒いリフとうめくようなトムのヴォーカルが閉塞的な世界を汲み、艶めかしい女性ヴォーカルが背筋をさするように切りこんでくるこの曲で本作の出来を確信。そして、未発表だった#2、#3へと突入していきます。#2は邪悪なる炎にじわじわと焼かれていくようなミッドテンポの長尺曲で、#3は神経をミクロレベルで威嚇するような不穏なSE。

 続く#4、#5はライヴ音源で2曲共にCeltic Frostの曲をセルフカヴァー。#4「Circle Of The Tyrants」はもはやCF時代からお馴染みの名曲で、ROADBURNフェスのパフォーマンスを収録。骨身を削るその威力はまるで衰えてないどころか凄みを増している。#5「Dethroned Emperor」はDarkthroneのヴォーカルを迎えて凶度が高まっているこちらも凄い。

 デビュー作がフロック出なかった事を証明する好盤であり、5曲ながらもこの禍々しさと重厚さは、独特の闇の美意識を貫きつつも身をキリキリと痛めるような力が備わっている。

Melana Chasmata(2014)

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 約4年ぶりとなる2ndフルアルバム。全9曲約67分収録。前作に続いてジャケットはH.R.ギーガー氏によるもので、氏の生前最後のアルバム・ジャケット。なお、トム氏はギーガー氏の個人秘書を07年から務めていた(映画『H・R・ギーガーの世界』で確認できる)。このギリシャ語のタイトルは、”黒く深い窪地/谷”と定義しているという。

 暗黒に精通している。苦しみの与え方を知っている。Triptykonはその闇を代弁するかのようなエクストリーム・メタルを提供します。いきなりスラッシュメタルによるブーストがかかる#1「Tree of Suffocating Souls」で幕開けするものの、前作よりも閉塞感や暗黒度といったものは少し薄まっています。とはいえ、持ち前の暗黒とヘヴィネスが損なわれたかというとそうでもなく。#4「Breathing」はCeltic Frostの雰囲気を味わったりもします。

 浮上してきたのがゴシックメタル的な要素。どす黒くおぞましいドゥームメタルの中に幽玄な雰囲気をまとう#2「Boleskine House」、MVが製作されている#6「Aurorae」のメロウ&ゴシックなアプローチは、Triptykonにおける新たな創造というべきものです。別の安寧を用意する。そういった柔軟な姿勢をみせながらも、#7「Demon Pact」のようにインダストリアル的な要素が絡み合う不気味な儀式も平衡しています。

 トム氏が生み出してきた音楽を的確に再構成したうえで、闇と重を振りかざす。そんな印象は強い。その黒々としたマグマこそがTriptykonを特別たらしめる。生きるを険しく険しく塗り替える12分超の#9「Black Show」は、精神の安定を拒絶する世界へと導く。本曲は最も重い一撃を担っています。それを踏まえたうえで#10「Waiting」という救済の曲で締めくくる。このエンディングにこそ変化がもっとも感じられるのです。

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