音楽、書籍、映画の感想を主に綴っているブログです。

凶暴で美しいブルータル・オーケストラ、Vampillia

 2005年に関西で結成された”ブルータルオーケストラ”の異名をとる音楽集団、Vampillia。わたしが初めてライヴを観た2009年12月から時を経るごとに形態を変えていっていますが、10人 + @による演奏は音源にしてもライヴにしても大迫力(近年、ライヴ時は7名ぐらい)。ハードコアやブラックメタルの要素とポストロックやクラシック等が掛け合わさり、ゲスト陣を交えながら凶暴で美しいサウンドを創り上げています。

 コアメンバーにヴォーカルの恋幟モンゴロイド氏、ベース→最近ギターになったというミッチー氏、キーボードの山本さん、バイオリンの宮本玲さん。ドラムに関しては吉田達也氏と竜巻太郎氏の両名が名を連ねる(2021年のライヴ写真を見ると別の方が叩いてますが)。そしてex-相対性理論の真部脩一氏も正式メンバーとして主に制作面で携わっています。

 活動初期から海外ツアーに回っていますが、近年は世界的な音楽フェスにも出演するようになり、Roadburn FestivalやBrutal Assaualtのステージを踏んでいます。さらには ADELAIDE FESTIVAL 2016にてGodspeed You! Black Emperorと共演。

 バンド活動と同じく、ライヴ企画”いいにおいのする”シリーズを定期的に開催。AlcestやEnslaved、Nadja、Krallice、The Body、Matt Elliot、Jarboe、Thee Oh Sees等の海外勢の招聘を積極的に行ってきました。彼等のおかげで観れなかったバンドが数多く観れた、そんな人は多いはず。

 わたしのVampillia歴は、2009年12月のJarboeとの共演から始まってます。Alcest、Nadja、The Body、Matt Elliottなどとの共演で継続的にみています。いいにおい企画を抜きにしても、Amenraや直近だとThe Oceanの来日公演。実はワンマン公演を未だにみてないのですが、彼等の歴史は追ってきているはず。

 そんな中で一番記憶に残っているのは、2016年9月の愛知県豊田市駅前でのフリーライブだったり。喧騒とトラブル、あれは面白かったですね。

 本記事はフルアルバム、シングル、企画盤、関連作を含め16作品について書いています。たぶん、これで6~7割ぐらいですが、聴く際の手掛かりになれば幸いです。

目次

Sppears(2009)

 初音源となる1st EP。8曲で17分ほどの収録ですが、インパクトが凄い。かのタレント名鑑・検索ワード連想クイズでこすられまくった田代さんがMVに出演。音楽ともども狂っております。この頃は2019年に脱退したVelladon氏を含みでヴォーカルがデス、ゲス、オペラ担当で3人いました。バイオリンの宮本さんはまだいなかったと思うのですが、記憶は定かではないので知っている人は教えていただきたい。

 デスメタルの領域に接近する獰猛さ、クラシカルな気品ある美しさが大胆に行き交う。例えるなら、夢中夢が目指した境地をコアに開拓した感のある音楽でしょうか。ヴァイオリンやピアノを用いてメルヘン/クラシカルな荘厳さと重みを助長し、さらにはオペラティックな歌唱とどきつい咆哮が場面場面で使い分けられ、混沌具合は半端なし。次々と色んな音が被さっていくことでエネルギーは巨大化する。

 ツジコ・ノリコさんがふわふわと素朴な歌声をゆるやかに乗せる#4「mersum」では夢から覚めた穏やかさを提示。Kayo Dotが頭をよぎる#3「negame」も盛大な闇の宴を繰り広げています。最後はポストロック+Toolな音使いでひたすら漆黒の世界を表現する#8「detibeoncount」で締めくくる。百花繚乱のブルータル・オーケストラは初期から健在です。

 本作発表後の2009年12月にJarboe(ex-Swans)との共演ライヴで初めてVampilliaをみています。場所はK.D.Japon。Jarboeとの混成ユニットもあって、最初に見たときから彼等はインパクト大でした。

Alchemic Heart(2011)

 Pitchfork Mediaで8.0の高評価を獲得した2曲で50分近い作品。フルアルバムという扱いではないらしい。ちなみにこの評価は本人たちも謎だし、なぜ取り上げられたのかわからないと語っているのをどこかでみた記憶があります(今は亡きオフィシャルサイトだったと思いますが)。

 「Sea」と「Land」という2曲のみの構成。共に25分近くあるので忍耐はいります。Jarboe(ex-Swans)とMerzbowがゲスト参加。『Sppears』においても他を置き去りにする様な個性を見せつけましたが、本作は緊張感のある舞台演劇が目の前で繰り広げられると錯覚する力があります。荘厳でシアトリカルな音絵巻。

 ”リスニングによって創造される美しい原風景が楽曲が終わるつれ破壊されていく”というコンセプトを基に楽曲をゆっくりと織り上げていく楽曲。アンビエントに閑雅なヴァイオリンやピアノの旋律、Jarboeの光と闇を吐き出すポエトリーリーディングが盛り込まれる#1「Sea」。やがては退廃的なエクスペリメンタル・ドローンへと発展する。Kayo Dotの『Coyote』を暗黒風ドローンに仕立てたかのようです。

 続く#2「Land」ではノイズを悪用しながら、神々しくも禍々しいハーモニーへと昇華。Merzbow先生の助力が如何ともしがたい闇鍋をさらにごった煮させて、濃厚で危険な香りを漂わせています。ホラーのような感触を与えるストリングスと混濁した声が終盤に地獄の様相を帯びていく辺りは、Vampilliaのブルータル・オーケストラたる面目躍如といったところです。

Rule the World + Deathtiny Land(2011)

 半年も経たないうちにリリースされた2011年2作目となるアルバム。本作は、AmesoeursやFenなどが所属することでお馴染みのイタリアのcode666からのリリースとなっている。

 「X JAPAN に憧れたメキシコ産グラインドコアバンドが南米地下レーベルからリリース」 という嘘八百なコンセプト云々ありますけど、前作『Alchemic Heart』とは対照的な作品で1分未満から長くて3分のショート・チューンが24曲並ぶ作品。実質のランニングタイムは25分程。

 『Sppears』に内容は近い。色彩感に溢れた音の意匠とヘヴィなサウンドという両輪で畳みかけていく。流麗なストリングスとピアノの旋律が神経質に鳴らされる中で、突如として大所帯の強烈な演奏がアグレッシヴに仕掛ける。振りの鋭いリフに迫力のあるグルーヴ、デスボイスとオペラ歌唱が拍車をかけるカオスっぷり。

 重厚なオルタナティヴ、えげつないグラインドコアに繊細なポストロック、さらにクラシカルな品位に至るまでが渾然一体となっています。でも、好き放題やっていても緻密に編まれていて、独自の美意識が緊張感と共に貫かれている印象。全24曲で1曲というようなコンセプトとしても成り立っており、おもしろい。さらに所々でハッタリとも思えるユーモアを効かせながら、短い曲をしっかりと昇華しきっている。

 『Alchemic Heart』の方が作風として好きだけど、こちらの方がバンドのバイタリティを強く感じさせます。制約を設けない自由な立ち振る舞い、様々なジャンルを越境する大胆さ、さらに独自のユーモアと大所帯の迫力が存分に発揮されています。

the primitive world(2012)

¥2,042 (2021/11/04 06:43時点 | Amazon調べ)

 2012年に初来日ツアーで共演することとなったカナダの神秘アンビエント・ドローン・ドゥーム男女デュオNadjaとVampilliaのコラボレーション作品。”異形+異形”の合体。脳髄を揺さぶり続けるNadjaの壮大なノイズを基軸に進み、Vampilliaが耽美・狂気・悲哀・歓喜といったあらゆる情緒を織り込みます。

 どちらかといえばVampilliaは控えめな印象で、Nadjaの作風を大きくふくらますように助力している感じですね。しかしながら、彼等が持ち込むピアノやデスヴォイスといった様々なエレメントがNadjaにとっては新しい色彩と感情をもたらしています

 らしからぬピアノ・インストゥルメンタルが始まりを告げる短尺の#1「shining」に意表を突かれるが、先行公開された#2「northen lights」から当然のように非日常へ。幕開けの枯れたアコースティック・ギターから小奇麗なピアノが流麗に鳴り響き、轟音ギターが岩石のようにズドーンと頭上に圧し掛かる。

 ハイライトとなるのが#3「icelight」でしなやかさと耽美性と獰猛が織り込まれ、祈りのようなノイズが周囲を埋め尽くす。それが長尺で続くのだから、ずっと浴びている感覚。#4ではアンビエント方面に手をつけて引き延ばされたキーボードの音色が不気味になり続けるが、一回だけ破壊的な音圧が襲ってきます。#5は#1と同じような感覚のピアノの小インストで、これを持ってこのコラボレーション作品は締めくくられる。

 正直言うともう少しVampilliaが暴れても良かった気はしますが、結果的にこれがベターな感じなのかなとも思います。NadjaとVampilliaが手を組んだからこその圧倒的音圧の向こう側の体感。

dottrue(2012)

 2012年7月のいいにおい企画で招聘したAttila Csihar(From Mayhem,Sunn O))) )とのコラボレーション作品。そのツアーでのみ販売された100枚限定のデモCD-Rで、一応マジックでナンバリングされております(わたくしは17を持っています)。後に「White Silence」として完全進化する楽曲です。

 ”吉田達也+竜巻太郎ツインドラム、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバス含むフル編成! 1曲約22分の大作!21世紀のArt Of Life!” という紹介文。背筋が凍るような緊張感の中でオペラ声が響き渡る大仰な幕開けから、変則的に突き進むドラムとピアノが4分過ぎからリズミカルに重なりあって物語は進みます。

 7分手前ぐらいで濁流のようなデスヴォイスが炸裂して、ストリングスも交えながら大きな山場を迎えていく。ポストクラシカルの優美さ、ブラックメタル風トレモロの吹雪、そしてアッティラの声が生み出すカオス。15分過ぎた辺りで再び荘厳なポストクラシカルで緊迫感を煽りますが、ラストはその美しい静謐を突き破ってブラックメタルで全てをなぎ倒して終わりを迎える辺りはこのバンドらしいなと。

 アッティラという素材を上手く生かしたサウンドメイキングの果てに、先日のNadjaとのコラボレーションを超える混沌を聴かせてくれる作品であるかと思います。「White Silence」の前にこちらもどうぞ。

The Perfect World (2013)

 2012年にリリースされたNadjaとのコラボ作『the primitive world』の続編であり、順当にアップデートさせたものと言えそうです。オープニングとエンディング曲を新曲に入れ替え、さらにもう1曲「Avalanche」という新曲も追加。そして、「the primitive world」の中核を成す3曲が引き続き収められている(ただし、「noorthern lights」は「Aurola」に曲名変更)。

 ですが、内容としては大きく変わるものではないです。『the primitive world』の完全体と表現してもいいと思いますが、厳粛なストリングスとピアノが綴るオープニング#1「Wartult」、そして同タイプのエンディング#6「Krault」が作品の緊張感を高め、新曲である#3「Avalanche」がNadja方面に振り切れた破格の音圧で鼓膜を制圧。

 その上で全曲が再ミックスされていて、立体感と陰影を残すような音響になっているように感じます。一番のインパクトを誇るのは、24分を超える「Icelight」でNadjaとVampilliaの”異形+異形のコラボレーションの極み”を壮大に表現。「轟音」という言葉に反応してしまう人は、是非とも聴いて欲しい1枚ですね。「the primitive world」よりもこちらを推したいとこ。

endless summer(2013)

 「誰もが経験したあの永遠に終わらない17歳の夏。」をテーマにしたという新シングル、7inchという形態でリリースされた(同内容のCD)。09年にリリースしたEP『Sppears』以来、久々にツジコノリコさんがゲスト参加。

 静かなピアノによる立ち上がりから、ツジコノリコさんの美しいウィスパーボイスと清冽とした語りが序盤を引っ張っていく。儚く優美な静寂の時。しかし、中盤にて目まぐるしいドラムの乱打がギアを入れ替えると、トレモロとデス声による悪夢の轟音。ただ、その裏では勇壮なストリングスの音色が印象的なメロディラインを奏でており、Vampilliaらしいロマンティシズムとユーモアに溢れた仕上がり。

 しっとりと儚い余韻を残しながら、静かに終わっていく形も楽曲のドラマ性を高めている。「Ice Fist」と並ぶ重要曲のひとつ。晩夏の頃に時を舞い戻すように虫の鳴き声のサンプリングとピアノ伴奏で締めくくる「owaranai natsu」も良い。

hefner trombones vol.1(2013)

 「あんたはん、悪ふざけが過ぎまっせ」との言葉が飛んできそうな3曲入りEP。MIX-CD風のコンセプト音源という話もあるらしいし、新譜案内では『ボアダムズ meets X meets EXILE meets ENYA meets MOGWAI meets AMラジオの様な作品』と記述されていたりします。

 そんなわけで今回は、それこそ思い付きのアイデアをぶちこめるだけ、ぶちこんだいつも以上に屈折した作品といえるだろうか。悪ふざけのタイトル、悪ふざけのJ-POP、悪ふざけのヘヴィメタル、悪ふざけのオルタナティヴ、悪ふざけのアンビエント、悪ふざけのオペラ・・・etc。

 VampilliaがVampilliaたる所以の要素を惜しげもなく注ぎ込み、ハイスピードで駆け抜けるジェットコースターのように目まぐるしく高速で場面を切り替える。近いのは初期の『Sppears』や『Rule the World + Deathtiny Land』ですが、本作の方が気負うことなくラフにバンドのアナザー・サイドを表現しているかなと思う。悪ふざけのユーモアが詰まった喧騒怒涛の3曲約11分。嫌ーな夢を見たい人向け。

Circle(2013)

 Virgin Babylon Recordsと契約記念となる配信限定リリース。約9分のシングル曲です。レーベルのカラーをちょっとはみ出した美醜のコントラストを聴かせる大曲です。MayhemのAttila Csihar、AnticonのSOLEが参加。

 「Circle」は、悲愴感と聖性を湛えた静パートから、スロウテンポの中でいろいろと調味料を間違えてブチ込んだ闇鍋で煮込み、黒いオーケストラと化した大所帯を重苦しい轟音を奏でてていくのが特徴。これまでの中でも、ポストロック色が強めですが、キレイとキタナイをこんな両極端にひとつの曲の中で表現して彼ら以外にこれができるのか?と感嘆。

 ちょっとした気味悪さや嫌悪感みたいなのも与えつつ、時空をねじ曲げる混沌の渦に飲み込まれる。約9分に情報と感情が凝縮されまくっており、人生も間違えます。

the divine move(2014)

¥2,226 (2021/11/06 11:56時点 | Amazon調べ)

 関西のブルータル・オーケストラがwegのVirgin Babylon Recordsと契約して放つ、プレ・デビュー作。大魔女の戸川純、あぶらだこの長谷川裕倫を召喚し、いいにおいシリーズ等でよく共演をしていたアイドル・グループのBiSも参加する企画編集盤。海外からは仲は良いけど、2012年夏の来日はぶっちされてしまったKralliceのMick Barrがお手伝いしていたりもする。

 これまでも数々のコラボ作を発表してきている彼等だが、本作はピアノとストリングスの響きを生かした静謐でしっとりとした雰囲気を持った楽曲が多い。Mick Barrと共に優美苛烈なメタルを叩きつける#5「good religion」のように従来ファン向けのエクストリームな爆撃もあります。ですが、大半においてクラシカル~ポストロック的な”静のVampillia”という側面が強く表れており、これまでと比べても整然としたつくりで、しみじみとセンチメンタルな味わい。

 日本昔話的な趣を戸川純さんと共に歌い奏でてみせた#1「lilAC」、ポストロック的な展開美にツジコノリコさんの繊細だが意志の強い声を乗せ、儚くドラマチックに彩られた#6「dizziness of the sun」とゲストの素材を上手く生かし、彼等らしい毒気あるユーモアもそこかしこに効かせている。スコッティ・ピッペン並に他者を輝かせる能力があるといいますか。

 ブルータル・オーケストラとして一筋縄ではいかない激しくも麗しい劇的なサウンドを奏でてきたバンドなので、当然ながら物足りない部分もあるにせよ、企画盤という位置づけを利用して世間様に知れ渡らせるために悪知恵を働かせた佳曲は揃っている。その中でも個人的には、シューゲイズ風味の冷涼として幻想的なトラックにBiSらしい歌唱を乗せた#2「mirror mirror」がベストかな。

 昨年9月にリリースされると、瞬く間に多くの人々の感興を誘った名曲#3「endless summer」を収録している点は間口を広げる点で非常に大きいし、その楽曲を真部脩一氏が自身の歌で少しだけ屈折させた#8「endless (MASSAKA) summer」もおもしろい。

my beautiful twisted nightmares in aurora rainbow darkness(2014)

 悪ふざけと共にJ-POP産業に挑み続ける関西のブルータル・オーケストラの2014年リリースの1stアルバム。企画盤多数の中、」活動9年目にしてようやくです。全編に渡ってアイスランド録音を敢行し、エンジニアにBen Frostを起用。また、ミックスをworld’s end girlfriend、マスタリングをKASHIWA Daisukeが担当。発売はVirgin Babylon Recordsから。

 どれを聴けばよいと聞かれれば、まず本作です。ライヴ定番曲「Ice Fist」と「Von(海外盤だとHopeというタイトル)」収録しています。

 シガー・ロスやムームなどを生んだアイスランドへ行き、現地の聖歌隊やストリングス隊に協力を仰いで制作された本作。その効果もあって、神聖で壮大な音響に感化された印象は受ける。ツジコノリコさんを迎えての表題曲#1は、『the divine move』から地続きのロマンティックな叙事詩を聴かせて、一時の安らぎを提供。本作では現地の方々にとどまらず、波多野敦子氏等をゲストに迎えていて、 ピアノやストリングスはさらに感傷的な響きをもたらし、楽曲の物悲しさや美しさを引き立たせている。

 だが、単に静謐なる美を追い求めにアイスランドへ行ったわけでは当然なくて、ライヴでもお馴染みの楽曲になっている#2「Ice Fist」から悪戯心のある轟音圧にブラックメタルの苛烈さが押し出され、目まぐるしい展開が全てを飲み込んでいく。Kayo Dotに立ち向かうようなプログレッシヴかつエクストリームなサウンドで圧倒する#4「seijyaku」にしても、これぞVampilliaといえる要素詰まっている。

 不愉快な夢を見せる轟音は、某インタビューで述べてた「美しい音のミルフィーユができました」をたやすく黒に染めてしまうわけだが、そのダイナミックな起伏を表現しきってしまう辺りは、ブルータル・オーケストラの面目躍如かなと思います。

 クラシカルなピアノとストリングス、 黒々しい音の濁流、オペラが一緒くたになって世界を混沌とさせる#3「Hiuta」、それにはっきりとシガー・ロスを目指しただろう歓喜のクライマックス が待ち受ける#8「Von」は本作でも特に重要な楽曲。

 そして、海外の大魔女である元SwansのJarboeを召喚したラストトラック#9「Tui」で厳粛な空気に包み、物語は静かに幕を閉じていく。全9曲約40分。Vampilliaのエンターテイメント、ここに極まれり!という作品では決してないにしても、ようやく「1stアルバム」と銘打っただけある、これまでのVampillliaの音楽を集約させた仕上がり。悪知恵とユーモアはやや希薄にせよ、 Vampilliaというバンドを手っ取り早く知る上では、本作をまず薦めたいものだ。

 ちなみに本作のCDを取り出すと、その下に Special Thanksの面々がずらりと記載されているが、ご存知の通りに、Alcest、Jarboe、Nadja、Matt Elliott(The Third Eye Foundation)と今まで誰も呼べなかった外タレの来日公演を次々と実現させてきた彼等の大きな功績を改めて実感する。

 そしてまた、一流人との文化交流が彼等の音楽の血となり肉となっている。他にも国内・海外問わず数多くの名前が並んでいるが、かつて「heyoah」のPVに出演した田代さんがちゃんと並んでいる辺りは流石だなと(笑)。

 また、EmperorやSighなどをリリースするCandlelightから発売される海外盤は、Ben Frostがミックスを手掛けており、ちょっと奥行きを感じるように聴こえまsy。1曲目がツジコノリコさん抜きのインスト仕様(主にライヴではこちらを演奏している)になっているので、チェックを推奨したい。

White Silence(2014)

  2012年7月のいいにおい企画「いいにおいのするDARK SUMMER TOUR2012」時に100枚限定で発売されたデモ作品「Dottrue」の完成版。当初はAttila Csihar(MAYHEM)のみの参加であったが、本作には新たにツジコノリコさんがコーラスとして加わりました。

 大枠の流れはデモ時から大きく変更は無い。オルガンとコーラスの厳粛な響きで立ちあがり、4分過ぎ辺りからツインドラムを軸に変則的かつ軽妙に突き進み、可憐なメロディと薄靄のノイズ、デスヴォイスが添えられていく。8分過ぎ辺りに小休止的な大らかなパートが盛り込まれるが、すぐに濁流の如きサウンドが全てを制圧。その後もとてつもない起伏に富んだ展開で約23分のドラマを生み出しています。

 12分を経過すると、シューゲ風のギターとツジコノリコさんが奏でる幻想的世界に揺られ、続くように悲愴感たっぷりのストリングスにアッティラの読経(ハンガリーの神話を歌っているとの話もあり)が乗るパートに突入。ラストは破滅の美へと向かうドラマティックな爆走で終末を駆け抜ける。

 音質的にも向上して、各楽器のバランスも良くなったことで”完全版”も頷ける内容。自身で形容する「21世紀のArt of Life」というのも納得する他ないし、Kayo Dotにも比肩するエクストリームなサウンドは聴き手を捩じ伏せる説得力を持っています。

ɪmpəˈfɛkʃ(ə)n(2014)

 カナダの神秘系アンビエント・ドローン夫婦、Nadjaとのコラボ作第3弾。タイトルは謎の文字で表記されていて読めないが、「インパーフェクション」らしい。「いいにおいのするNadja再来日ツアー」からリリース。

 『the primitive world』、『The Perfect World』に続く作品となるのだが、本作では約19分と約24分の大曲2つを用意。Nadjaを主軸に据え、Vampilliaが加算していくという手法はこれまでと同じであり、じわじわと鼓膜と脳内を圧迫していく美轟音を垂れ流し続けます。

 いずれの曲もミニマルな展開で少しずつ変容していくものだが、本作においてもVampilliaの真面目部分を支えるストリングスとキーボードの女性陣がこれまで通りに活躍。ひたすらにダークなノイズの放出を続けるのに対して、ストリングスが全編に渡って物悲しい響きを与え、冷涼とした鍵盤の音が滴る。

 さらにメロディアスなギターフレーズやプログラミング音も差し挟まれ、中盤~終盤にかけてようやく淡々としたリズムが導入されてからは、本腰入れたブリザード轟音を見舞うので、頭に重いものが圧し掛かる感覚を味わいます。

 ただ、正直な事を言えば、以前のコラボ作に収められていた大曲「Icelight」を上回るほどの強烈な印象は無し。お約束といえるスロウテンポ轟音漬け(神秘風味)の2曲なので、もっと冒険して欲しかったなあと思うところもあります。

Winter Days(2014)

 2014年10月1に開催されたBen Frost / Vampilliaの大阪COMPASS公演の来場者に無料で配布されたCD-Rである。内容としては、#1「Day One」#2「Day Seven」#3「Day Nine」の3曲が収録されて合計約23分。

 Nadjaであり、Ben Frostでありをお手本にしたかのようなアンビエント~ドローン・ノイズで綴られた作品。しかしながら、海外で高い評価を得た『Alchemic Heart』ともまた違う感触で、オーロラのようなシンセが神秘的な雰囲気を助長していて、Bvdub辺りを思わせます。

 Winter Daysというタイトルにもある通りに、清冽とした真っ白なノイズが雪のように降り注いでくる感じ。#2「Day Seven」だけは彼等の定番曲「Ice Fist」を終盤にサンプリングしていて、打楽器入りでダークな面が表現されているが、作品全体で彼等特有のメロウさを印象づけています。

 その中でも特に11分を超える最終曲#3「Day Nine」が雪原の大地からオーロラを見上げるような感じで良い。荘厳なシンセのレイヤーとエレガントなピアノによる装飾が、緊張感を忍ばせながら美しく神秘的な時間を紡ぐ。この内容で無料配布はもったいないと思える作品です。あと、こういったサービス的な音源でふざけてないVampilliaも新鮮だったり(笑)。

いいにおいのするサウンドトラック(2016)

 オーストラリアのADELAIDE FESTIVAL 2016にてGodspeed You! Black Emperorとまさかの共演を果たした音楽あり、お笑いあり、役者ありの大阪の集団のサントラ。映画監督・酒井麻衣さんとVampilliaによるコラボレーション映画『いいにおいのする映画』のもので、全35曲を収録。ミックスにweg、マスタリングにJames Plotkinが参加。

 一番重要だと思いますが、残念なことに映画を見ていません・・・。だからどの曲がどの場面でというのはわかりません。映画に合ってる音楽なんだろうとVampilliaというブランドを信用する。とはいえ、サントラということもあって、35曲収録だけどもカロリー低め。

 要であるキーボードが活躍している場面多しの静謐な曲が大半を占めている印象。ただどういうわけか、ライヴ音源が3曲収録されていて#12「Ice Fist」、#17「rainbow on you」、#31「Hope」が使われている。聴きどころとしては、24曲目以降かな。映画主演である金子理江さん(元LADYBABY、ミスiD2015)が参加した曲は、いずれも重要な位置を担っていそうな雰囲気。

 特にシガー・ロスがよぎる壮麗で温かい#29「Be A Light To The World」はハイライトとよべる出来栄え。そして、続くハチスノイトさん参加の#30「girl from marz」がVampillia調のポストロック/ブラック+デスボイスに、ハチスさんの歌声がしっとりとした感触を与えていて好印象。締めくくりの永遠3部作もまた少女たちのあどけない声が、音のしぼられた空間に響き渡るところが良いですね。

 ちなみにクラウドファンディングのお礼で「Vampilliaの楽屋で30分いじられる券」があるけれど、誰かやったのだろうか。自分はいつのライヴかは忘れましたが、Vampilliaの物販で5,000円以上買った時にミッチー氏の新ネタが1回見れたりした(笑)。

わたしが鳴こうホトトギス(2016)

 ※ 戸川純さんメイン作なので、本来この記事に含むのは正しくないかもしれませんが、Vampillia関連作として取り扱います。

 歌手活動35周年記念作品。戸川純さんからの発案によって、親交のあるVampilliaとコラボレーションが実現したとか。戸川さんはベスト盤を聴いたことがあるぐらいで(そんな聴いてないけど)、僕は熱心にハマりはしなかった口です。あと最近、ロンハーを観ていて彼女のウォシュレットのCMを知った(笑)。

 内容としては、全10曲中9曲が自身の代表曲をリアレンジしたもので、表題曲である#9「わたしが鳴こうホトトギス」が新曲。原曲からアレンジをかなり加えられているそうですが、サウンドは手加減することもなくVampilliaの特徴が発揮されています。けたたましいツインドラムやギターの迫力、そしてストリングスと鍵盤が哀感を投与。自分たちの色は遠慮なしに出す、でも敬意を表す。そんな演奏で楽曲を支えています。

 そこに乗る戸川さんの歌声は加齢による変化がありますが、囁くような歌い方から急にスイッチが入って凄みのある声で圧倒。仙水ばりに人格が入れ替わったかのように多彩な声色の変化がある#2「好き好き大好き」の歌唱は、特に驚かされます。

 イントロから高まる#1「赤い戦車」、畳み掛けるように攻める#3「バーバラ・セクサロイド」など序盤からその仕上がりの良さを実感。なかでも、悲壮感たっぷりのストリングスから猛嵐のようにダイナミックなサウンドが展開される#8「Men’s Junan」は強烈です。逆に#6「12階の一番奥」はセンチメンタルな詩情に彩られ、侘しき心に温もりをもたらします。

 アルバム全体の流れは様々に起伏があってとても良く、実にフックが効いていて引き込まれる。そして一貫しているのは、彼女の情念の濃さ。静けな幕引きとなった#10「怒涛の恋愛」においても言霊に力が漲っています。

 本作は往年の戸川さんファンから高評価を受けているようで、両者の真っ当なリスペクトが見事な結果となって表れています。戸川純/Vampilliのどちらを本作の入り口にしたとしても、双方が納得いくであろう素敵な魅力がある。見事な仕上がりとなった久々の新曲#9「わたしが鳴こうホトトギス」でカッコウと鳴く両者は、これからも多くの希望を見せてくれそうです。

この記事が気に入ったら
いいね または フォローしてね!

目次
閉じる