2009/07/16 Saxon Shore Japan tour 2009 @ 名古屋今池HUCK FINN

saxonshore

アメリカ・ペンシルヴェニア出身のポストロックバンドSaxon Shoreの3年ぶりとなる来日公演(サポートは全公演にsgt.)を見にHUCK FINNへと足を運ぶ。前回来たのは密教ドゥームのOmのときだからちょうど1年ぶりくらいです。

そのいかにもアンダーグラウンドな佇まいでパンク・ハードコア系のアクトが頻繁に行われているライブ会場だけに、本日の気品ある美しさが漂う日米ポストロック対決の場所としてはいささか気になったが、逆にそれが余計にその美しさを引き立てたような気が・・・しないでもない(笑)。

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eureka

始めに出演したのはeurekaという地元・名古屋のバンド。もう終わりがけ(19時25分ぐらい)のときに会場入りしたため、2曲10分程しか確認できなかったが、ポストロック・ポストハードコア系の影響下にある感じ。

引き締まった叙情の波と全エネルギーを費やすかのような轟音。その交錯の果てにあるのは、envyに通ずるような激情の放出。アルペジオで静かに楽曲を引き立てていく場面もありましたが、荒削りな初期衝動もよべそうな炎とVoの叫びでラウドに捲くし立てていく。そのエネルギーが意外にもくるものがあってまあまあ良かった。

White White Sisters

spectrachroma

2番手にはこちらも名古屋を中心に活躍する若手、White White Sisters。ギター&ヴォーカルとドラマーという2人編成のユニットです。ただ全編にラップトップからのデジタルな装飾が施されており、クラブ系の近未来的サウンドを展開。ヴォーカルは曲調に合わせて、加工したロボットボイスから儚げな歌メロまで使用する。とはいえ、電子音の無機質な感じには陥らず、サイケデリック&ハイテンションのいかにもロックンロールなドラム(ホークウィンドとかを感じたような)を炸裂させ、持ち上げるような心地よさとロック的ダイナミズムをしっかり聴衆に叩きつけるのはなかなかおもしろい。

どう考えてもバンドの頭脳はギター&ヴォーカルを担当する子だと思いますけど、ドラマーの子ばかり見ていたな。それぐらいアクションがよくて絵になるというか。4つ打ちの飛び跳ねるような曲からアルバム・リーフ系の淡く繊細な曲調まで行き来し、シューゲイズ系のノイズまで轟かせた彼等のライブはなかなかに興味深いものでした。

sgt.

stylus Fantasticus

次は全公演に同行している日本のインストバンドsgt. 前回から約9ヶ月ぶりくらいになるけど、結論としては前回の方が良かったなあという印象。10分に及ぶ曲が3つと「再生と密室」をやってたと思うんだけど(インディーズの曲は知らないので確定したことはいえない)、なんだか消化不良。

空を優雅に舞い続けるヴァイオリンの美旋律、高らかに鳴り響くギター、地を震わせる激しさとどっしりとした安定感のあるリズム隊。そのアンサンブルの妙はさすがだと思うけど、前回見たときほど”持ってかれた感”がなかった気がする。どっちかといえば、音を精微に組み立てながら、壮大な物語を描き、カタルシスを抽出するってのが今日のライブの趣だったと思うんだけど、どうしても個人的には腹八分目で終わった感じがしてしまって。

前回見た時よりも芸術性の高いライブであったことは間違いないんだけど、ノイジーな爆音で脳髄を掻き回し、感覚中枢を破壊しにかかる『囚人達のジレンマゲーム』を挟んでくれても良かったのではないかというのが本音。っていうかこのバンドはそれよりもサックスとかピアノとかVJとかのフル編成でみたいといのが先にありますけどね。

Saxon Shore

イット・ダズント・マター

大トリはもちろんSaxon Shore。さっきまで剣玉で喜んで遊んでいた連中とは思えないぐらいの入念な機材チェックの後、21時25分ぐらいからライブスタート。あれ、メンバーが一人いない、それもキーボード・・・。と思ったけど、とりあえず肝である切なく心に響くキーボードは聴こえてくるので、そんなに大きな違和感は覚えず一安心。

ツインギター、ベース、ドラムというオーソドックスな編成、そして愚直なまでに芯の通った王道ポストロック、その持ち味を存分に生かしてくるかのようなライブが終始繰り広げられていました。その麗しさときたら他のバンドが嫉妬を覚えるほど。

ゴツくてイカツイメンバーの容姿からして、ギャップを感じずにはいられないぐらい。思わずうっとりとしてしまうギターの美旋律がゆるやかなビートに乗せられ、じわじわと揺さぶりをかけていき、猛烈なドラミングを合図に艶のある美しい轟音へと発展。その求心力ある音色に尋常じゃないぐらいにグイグイと引っ張られる。

CDでは轟音部分の押し、静寂の引きを比べると、どうしても引きの部分の強さが目立ちますが、生だと胸を震わせてくれる”炸裂感”があり、楽曲が凄くバランスよく引き立っているように思えます。そこまで持っていくバンドの力量を思い知らされる次第。特に印象に残っているのは本編ラストに演奏された「Tokyo 412am」。涙腺を刺激するセンチメンタルなメロディとどんどんと高みに登り詰めていくような壮麗な轟音に板挟みにあい、感覚を全部持っていかれる。まさに夢見心地・・・。

アンコールの声にも応えて最後にもう1曲演奏。麗しの前半からノイジーに空間を侵食する様まで実に強烈に響く曲でさらに満足度を高めてくれました。セッティングの合間にはマイケルジャクソン弾いたり、片言日本語でコミュニケーション取ったりとキャラクターのおもしろさも印象に残ってます。足を運んだことを決して後悔させないステージに非常に満足。お礼にTシャツを購入して会場を後にしました。

お読みいただきありがとうございました!
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