2012/01/28/ いいにおいのするNadja JAPAN TOUR 2012 @ 渋谷O-NEST

 カナダのアンビエント・ドローン・ドゥーム2人組、Nadjaが初来日。カナダの神秘とも評される彼等は、My Bloody ValentineからGodfleshにFennesz、SUNN O)))までを突き抜けていくエクスペリメンタルな音響を構築して高い評価を得ています。

 Daymare Recordings、Happy Princeから国内盤が2作品発売になっていますが、来日なんてありえないという言葉が先に出てくる。一昨年のJarbewといい、昨年のMatt Elliottといい、iinioiさんは本当にいい仕事をしてくださいます。

 今回は東京まで乗り込んでの初Nadjaとなる。まずは隣のO-EASTに比べるとめんどくさいつくりの会場にびっくりしたのだが、さらにO-NESTに入ってびっくりの客入り。公演2日前にチケ買って17番だったのに 何が起こったのであろうかというぐらい、満員に近いほど人が入っていました。

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ライブ感想

ENDON

 まずはENDONです。東京の5人組(Vo,Gt,Drにエレクトロニクス奏者2名)。強面から放たれる音がエグいエグい。非常階段をアップデートしたというコメントもあるが、鼓膜から出血しそうなほどにノイジー、そしてファストな展開を盛り込みつつ圧倒してくる。

 とにかく楽器をうるさく掻き鳴らし、電子音にもエグさがあり、ヴォーカルは見た目も声も超恐い(しかも最前の人のビールを奪って飲んでいた)。しかし観客の反応は結構良くて、ENDON目当てで来てた人も多そう。んで体を破壊しにかかる激音を放出し続け、モッシュまで起こし、最後には客席に飛び込んでのファイナルアタックで客数人なぎ倒して30分ぐらいを駆け抜けた。

 とにかく強烈な印象は受けたステージ。ギターも客席に突き飛ばした混沌の現場がここ。

Vampillia

 2番手はVampillia。今年はアルバムを5枚出すとかで気合入っててヤバイ。本日は名古屋ではあんまり見られない吉田達也氏と竜巻太郎氏を迎えたツインドラム体制、合計9名で攻める攻める。咆哮とオペラが響き渡り、トリプルギターが繊細かつ激しく情景を描き、ベースがきっちり支える。

 欠かせないヴァイオリンが物悲しくも勇壮に響き、キーボードが耽美を織り込んでいく。そして押し引きを心得すぎたツインドラムが見事に楽曲の基盤を支え、表情すらもつけていたような感じであった。

 最初にやった曲はよ くわかんないけど、去年5月に出たアルバムから「Day of Deperture~」を始め何曲かやって、最後は「Alchemic Heart」の曲の一部を持ってきた感じの荘厳なドローンのクライマックス。でも通して40分にも満たなかったのは驚きましたが、濃い内容でした。

 今回はツインドラムの影響からかえらく破壊力とダイナミズムを感じられて、フロアの反応もすこぶる良かった印象。オルタナティヴ・ロックから ポストロック、ゴシック、スラッシュメタル~ドローンに関西の地下音楽的情緒までをVampillia流儀で自在に振る舞う辺りは、やっぱり他とは違うなと。

 ブルータル・オーケストラと評されるように猛々しいパフォーマンスを繰り広げつつ、エンターテイメントを忘れないらしいステージ。これまで見た中では一番良かった。

Nadja

 最後はもちろんNadja。Aidan BakerとLeah Buckareffにようやくご対面。ライヴはこの二人のみで構成されており、エイダン先生がギターとエレクトロニクスを担当し、リアが客席に背を向けてベースを弾くというスタイル。

 反復するリズムマシーンに予想以上の重みと迫力を備えたベースが呼応し、ギターが有機的に重なり合っていき、ゆっくりと歩みを進めながらドローンへと発展。中央に並ぶエイダンとリアの両雄は見た目も格好も全く持って普通ですが、こんなグレイトな音を出してしまうんだから驚く他ない。

 1曲目の「Sky Burial」から得体の知れぬ心地よさが全身にまとわりつく。意識が遠のいていく感覚。時間軸をも越えていくような感覚。もちろん異常なほどの轟音世界ではあるし、脳味噌揺れる音楽でもあるけれども、SUNN O)))やかつてのKTLを見た時の圧殺とは違う耳触り。

 呪術的だとかそういうのもないし、照明で視覚効果を煽ろうというのも無い。繊細な音の連なりを密に続けた巨大な構築物といえるのだが、メロディアスな旋律を奏でる事で豊かな色調に彩られ たり、彼等の繊細な感情が零れおちたりもする。

 頭が真っ白になるようなノイズの海だが、意外とロマンティックな部分を感じ取れる。ライヴ体験としてもJesuとSUNN O)))の中間地点の恍惚があったと感じる事ができたし。不満な点をあげれば、本編2曲とアンコール1曲(Paul Belliniのカバー「Long Dark Twenties」)の全3曲で45分ぐらいと短かったことだけ。Nadjaもまた天国へも地獄へも手招きしてくれる貴重な存在であった。

メインアーティスト:Nadja
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