【ライブ記録】2013/05/12/ OZZFEST JAPAN 2013 DAY2 @ 幕張メッセ

 海外では熱狂を生むラウド/メタル・フェス、”Ozzfest”がようやく日本に上陸である。発表された時は、伝説のブラック・サバス(ほぼオリジナル・メンバー)とSlipknotの両ヘッドライナーを軸に、世界的なロック・フェスティバルにふさわしいものになる!と思っていたら、第1弾→第2弾→第3弾とラインナップを発表するたびに「・・・」という状況になったのはみなさんも周知の通り。

 某アイドルの出演を始め、海外で開催されるのとは全然違う出演アーティストに主催には批判が殺到しまくりで、真のメタラー達によるオフィシャルのfacebookのコメント欄には香ばしいものが並んだ。

 ただ、個人的にオズフェスに行くのを決めたのは、その出演ラインナップである。今回は2日目のみの参加だったが(しかも前日に行くのを決心した)、Black Sabbath、ToolにDIR EN GREY、ムック、Stone Sourと揃っていてcoldrainやHead Phones Presidentまでいるのだから概ね満足。

 朝5時に起きて、名古屋から幕張メッセまで向かった。っていうか、1日にまとめれば集客には苦戦しなかったと思うし、こんな批判が起きる事もなかったんじゃないかと思うが、2日間開催にこだわったのはなぜだろう。

 会場に着いたのは9時半ごろ。LOUD PARK09以来、3年半ぶりとなる幕張メッセには既に多くのファンの姿が散見された。早速、当日券を購入して物販を買いに行く。昨日のオズフェス会場の写メを見ていたらカオスのごとき行列ができていたが(2時間待ちとか見たんだけども)、早めに来たのが功を奏してかそんなに並ばずに買うことができた(購入したものは最後に紹介)。オフィシャル・グッズのTシャツは、既に昨日でほとんどはけていたようだが、アーティストグッズは大丈夫だった。この後、荷物を預けに別のホールに移動したが、HKT48「スキ!スキ!スキップ!」個別写メ会も開催しておりました。

 会場内に入ると、すぐ左側で「勝手にデスボイス・コンテスト」を開催中だった。フードコート等もあったが、どうせ食べないので(この日もモンスター・エナジーを1回飲んだだけで、食事はしてない)、さらっと見て回ってライヴ観賞エリアへと移動。さすがにまだ朝なんで、人の入りはそこそこで指定席なんてガラガラ過ぎて笑った。

 そして時刻は、11時。爆音の宴が始まる。

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ライブ感想

■ HEAD PHONES PRESIDENT

 「オズフェスト2日目ー、用意はいいかぁー」の叫びから炸裂した妖艶なヘヴィロックは、朝っぱから下腹部にグイグイとくる。重いリフとリズムが牽引し、ANZAの可憐で力強い歌声が響きわたるその手法に変わりはない。っが、ギターソロこんな入れてたっけ?と思えるぐらいにメタル要素を強め、新たな一面を垣間見せていて、着実に成長を続けていることがわかる。

 ロングスカートを上手く使ってダイナミックなパフォーマンスと歌で魅了するANZAは、飛びぬけた存在感を放っていた。見るのはIn This Momentとの共演ライヴ以来の4年ぶりだけど、緊迫感と迫力を増したライヴは十分満足するものだった。

■ fade

 2つ目のオープニング・アクトは、ヴォーカルがアメリカ人で、演奏隊が日本人という編成の5人組のfade。LOUD PARK’09や韓国ETP FEST2009に出演した経歴を持つそうだが、Hoobastank辺りが頭をよぎるエモーショナルかつメロディアスなサウンドで、ちょいと新鮮だった。「生が一番!」とか連呼してたのは笑ったんだけど、流麗なメロウさが冴える彼等の音楽は、意外な盛り上がりを見せ、20分間を爽やかに駆け抜けてみせた。

■ coldrain

 一応、ここからが本編。名古屋出身のラウドロック新世代、codrainが登場。2ndアルバムだけ聴いているけど、ラウドかつメロディアスな作風はなかなかに良いものだったので期待していたが、ライヴも好印象。

 勢い良く疾走するパートからブレイクダウンまできっちりとキめ、尖った攻撃性とメロウな感性を上手く使い分けてて、しっかりノせてくれる。場数を踏んでるのか、まるで物怖じしない姿勢は痛快。

 「日本のバンドが多いだとか、アイドルが出るとか、来ない奴にグダグダいわせるフェスにはしない」というVo.MASATO氏の熱い想いが聴けたのもよかった。ほとんどが新作からの曲だったようだけど、変わらずにアグレッシヴに攻める楽曲は多く、ラストの「To Be Alive」まで全力投球。

 「OZZFESTに行く事、出る事が夢だった」と語った通りの渾身のライヴであった。

■ ANTHEM

 わたくしはLOUDNESSは通ったけど、ANTHEMは通っておらずほとんど曲はわからないものでしてと先に言い訳しておく。途中からみましたが、変態仮面の挿入歌を演奏していてかなりの盛り上がり。ベテランのHR/HMの味わいは、サバスお目当ての人が多いこの日の客層とマッチングするようで、歓喜の輪が広がっていたように感じた。

 ってか坂本英三さんのあのシャウトは、衰え知らずのエネルギッシュなもので単純に凄い。MCが長いのもベテランの矜持といったところ。隣のステージからでもそのメタル魂を受けとめることのできたライヴだった。

■ MUCC

 さて、本日の最初のお目当てであるムックです。見るのは去年の3月以来か。さすがにオズフェスだから、そういう仕様のセットリストで来ると思っていたら、今モードの攻めのセットリストでびっくりした。

 一番古い曲が最後の「リブラ」で、「蘭鋳」をやらないってひっくり返ったわ。初っ端の「MR.LIAR」からやってる曲がわからず状態だったんだけど、メタリックなリフとエレクトロ要素がいい感じで昇華されててかなりかっこよかった。続く「塗り潰すなら臙脂」や「G.G.」でもダイナミックな演奏が映える。

 ショッカーっぽいシャツとメイクを施した達郎の存在感は相変わらずだし、ミヤやYUKKEもステージを動き回って盛り上げてくれるのも変わってない。会場はもっと敵対した感じになるかと思えば、そんなことなくて楽しそうにモッシュしたり、独特のヘドバンだったりが見れて意外と一体感があり。

 「こういったフェスは楽しんだもん勝ちなんで、うちらはうちらでステージでめいっぱい楽しんで帰ります」と宣言した後には、エレクトロ色全開の「フォーリングダウン」、そしてムックらしいリフと疾走感を持った「MAD YACK」と続ける。

 この流れからいくと最後は「蘭鋳」だろと思い込んでいたら、まさかの「リブラ」。内省的でダークなミドル・チューンを叩きつけて締めくくられた。歌い終ったあとに「ムックでしたー」と脱力した感じで達郎が挨拶したことは、特に印象的だった。

 昔の曲はなかったにせよ、堂々としたパフォーマンスと安定感は、ムックというバンドの強さを示す。いいバンドだなあと再認識したオズフェスのステージでした。その証拠に、帰ってから「シャングリラ」をちゃんと聴き始めてる(笑)。

 –setlist–
Mr. LIAR / 塗り潰すなら臙脂 / G.G. / フォーリンダウン / MAD YACK / リブラ

■ AA=

 日本人で唯一、本家のOZZFESTに出演経験があるTHE MAD CAPSULE MARKETS。そのベーシストのプロジェクトであるAA=が続いて見参。

 トランスっぽいリズムを交えたバリバリのデジタル・ハードコアで突っ走る。というわけで、客層的にこういったのはどうかな?と思ったけど、ガンガンにノってる人も結構いた。ヴォーカルがレゲエっぽいあの手の動きをよくやってて笑ったけど、扇情的でヘヴィなサウンドはかなりの説得力あり。

 「OZZFEST、3回目です」というのも納得の貫禄のライヴだった。

■ Steel Panther

 アイアン・メイデンの「The Number of the Beast」が大音量で流れたのをきっかけに、前方の密集度が増す。体力温存でこの辺りから足を運ぶ人も多かったようだが、ここでようやくの外タレ。いつの時代だよ!?というツッコミが入る80’s風のハードロック~LAメタルを鳴らすスティール・パンサーである。

 そのド派手な外見から放たれる古き良きHR/HMサウンドと「オッ●イミセテー」で会場の心を掴んでおり、本人達も非常に楽しそうにライヴをしていたのが印象的だった。この手の音楽は、個人的には好きじゃないけど、おもしろかったので良し。それと僕はわりと前の方で見ていて、肩車をしていた女性の方を何人か見たが、多分脱いではいなかったと思う。

■ 人間椅子

 予想を超える大盛り上がり。平成とともに歩んできた(ライヴ中のMCより)、人間椅子のステージは見事だったなあ。個人的にはほとんど聴いたことがないんだけど、3人で創り上げる奇怪な世界に驚かされた。

 サバス風のリフや凝った曲展開を持ち、その上で和の情緒が見事に織り交ぜられていて、グイグイと引き込まれる。また、3人とは思えない厚みのある音も強烈。ステージを見ると和服を着た年季の入ったオッサンたちなんだけど、これがどうしてこうもステージ映えするのか不思議。

 「これからも人間椅子は、気持ちの悪い音楽を余すところなくやっていきたいと思います。」という力強い言葉もあり、5曲で30分ほどのライヴは非常に濃密であった。終わってからの大きな「人間椅子」コールは、今日のライヴが大成功だった事を物語っていたように思う。

■ Stone Sour

 前日にはスリップノットとして大いに盛り上げてくれたコリィさんの別機動隊が夕方に登場。実はちょうど6年前に名古屋クアトロで見ていたりするが、ストレートに伝わってくる歌と演奏は、ニッケルバックにも似た風情があって胸にじわっとくる。

 2ndアルバム以降は追ってないんだけど、モダンなヘヴィロックっていう形からは脱していないようで、メタリックなサウンドを叩きつければ、じっくりと聴かせる曲もあり。「トーキョーッ!」と連呼して煽るのも彼らしいなと感じたし、客席との距離の縮め方も上手い。やはり場慣れしているのは、流石に世界的なバンドのフロントマンである。

 終盤ではコリィの引き語りの「Bother」、それに男の哀愁が詰まった「Through Glass」といった曲で泣かせにかかり、最後は2ndアルバムのキラーチューン「30/30-150」で熱いライヴを締めくくった。終わってからは、昨日のスリップノットが観れなかったことを後悔しちゃいました(苦笑)。

■ DIR EN GREY

 お目当てその2。前回見たのが、10yearsを前座に連れてきたツアーの時だから、ディルも実は6年半ぶりぐらいに見る。その間に”世界の”がつく巨大なバンドに進化/深化を遂げてきたわけだけど、この日のライヴは正直いって音のバランスが悪かった。

 SE「狂骨の鳴り」から期待がグンと高まったけど、「DIFFERENT SENSE」からわたしの近くで見ていたカップルが大声で歌い&叫びまくるせいでのっけから集中力そがれる。

 オズフェスだろうが媚びることの無い長尺寄りでお泥悪露年い曲を中心としたセットリストに不気味な映像、奇抜なパフォーマンスと視覚的には十分に刺激的。だったんですが、肝心の音がよろしくない。音がデカイだけとかtwitterで見たけど、わたくしファンですけどこの日は言われても仕方なかったかも。まあ海外フェスでもやらかしたことあるし。

 久々に聴いた「羅刹国」はアがったけども、モヤモヤが残るライヴだったので今度は久々のワンマンを見てみたいもの。でも、観た者たちに何らかの衝撃を与えたのはディルらしいですよ。

–set list–
狂骨の鳴り(SE) / DIFFERENT SENSE / 業 / THE BLOSSOMING BEELZEBUB / (INWARD SCREAM) / 蜜と唾 / 羅刹国 / 冷血なりせば

■ TOOL

 お目当てその3、というか本日の個人的目玉。だいたい5年周期で出してた新作が出ず、先に来日を果たすとはね・・・。そう、ついに6年ぶりとなるToolの来日。

 「Hoocker With A Pennis」からそのサウンドとライティングで次元を変えてみせ、続く「Sober」で浮かび上がる妖しげな世界観は陰鬱なるグルーヴと共に濃さを増していく。Toolが別格だということを印象付けるには、この序盤だけでも十分でしょう。

 苛烈さを売りにしているわけではないが、どこまでも深みを持つ音色と練りに練られた曲構成で、脳内と心の内を掻き乱す。驚異の暗黒を描き出す無限なる表現力、視覚から全てを呑みこむような映像。

 6年前に名古屋ダイアモンドホールで見た時よりも、さらにライティングが素晴らしく、大きな会場の方が彼等のスケールをより大きく見せられるのかな、というように感じられた。特に「Lateralus」以降は、本当に神がかったようなパフォーマンスの連続。

 ラストの「Ænema」~「Stinkfist」の流れは、ただただ凄いとしか言いようがない。この後にブラック・サバスが控えているとはいえ、あまりにも完璧なライヴに立ち会えて幸運だった。というわけで早く新作を出してください、TOOL様。

 –setlist–
Hooker With a Penis / Sober / Schism / Lateralus /  Jambi / Forty-Six & 2 / Ænema / Stinkfist

■ Black Sabbath

 異様な緊張感と興奮。オジーを含む3/4オリジナル・メンバーでの来日公演はこれが最後とも言われてたりするので、多くの人々がそのステージを見ようと集まっていた。そして19時20分、歴史的なブラック・サバスの公演が幕を開ける。最初の「War Pigs」から待ってましたと言わんばかりの大歓声が木霊。あのリフ、あのグルーヴ、あのオジーちゃんと感動ポイントは一杯で、今まで流してフェスを楽しんでいた年配の方々も前に詰めかけるほど。

 サバスにそこまで思い入れは無いものの、こうしで生で体感できるってことに本当に感激する。イントロだけでゾクゾクした「Black Sabbath」に、ベースソロから味のある展開を見せる「N.I.B」、リフに合わせてオーオーという歓声が巻き起こった「Iron Man」など初期の曲で固められたセットリスト(来月に発売される新作「13」からの新曲もあり)は涙もの。

 彼等の名曲が時代を越え、いつまでも残り続ける理由がそのステージ上にある。年齢を感じる瞬間もあったにせよ、こうしてほぼオリジナルのサバスが目の前で演奏し、会場と一体感を生んでいくのを感じるとオズフェスに足を運んで本当に良かったと思えました。

 地鳴りの如きリフから怒涛の展開をみせた本編ラストの「Children of the Grave」は痺れたし、アンコールで披露された「Paranoid」は特に格別の感動を味わう事が出来たように思う。やはり、サバスは伝説であった。

–set list–
War Pigs / Into the Void / Under the Sun / Snowblind / Black Sabbath / Behind the Wall of Sleep / N.I.B. / Fairies Wear Boots / Symptom of the Universe / Drum Solo / Iron Man / God Is Dead? / Children of the Grave

Paranoid

開催前にはいろいろとゴタゴタがあり、なんだかんだ言われたわけなんだけど、来てみたらとても楽しかった。当然、初日ほどのごちゃ混ぜ感は無いにしても、2日目でも様々なタイプの音楽が用意されていていろいろな体験ができました。

お読みいただきありがとうございました!
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