2022/12/04 MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜是空・朽木の灯〜 @ 松下IMPホール

 「9月3日の刻印」の”大人達よ 思い出せ”という逹瑯さんとミヤさんの祈りにも似た訴えが、ムズがゆく聞こえる大人になってしまったのかとライヴ中に自問自答してしまった。

 本曲がリリースされた2003年9月、わたしは高校3年生。あれから19年。自分は『是空』や『朽木の灯』で投げられたムック(今回はMUCCではなくあえてムックと表記)の詞をきちんと受け止められる大人になっているのか? 何度か自分に問う中で時にはあの頃を懐かしみ、時にはこの瞬間を楽しむ。いろんなことを想うライヴが本公演でした。

 わたしにとってムックは初期のイメージがどうしても強い。当時、暗くて重いサウンドと詞に魅了されました。シングル「我、在ルベキ場所」ぐらいからリアルタイムで追うようになる。『是空』は初めて買った彼等のアルバムだし、『朽木の灯』は人生のベストアルバム20枚に入るような傑作。2004年4月には初めてライヴをみました。痛みや苦しみから発露した言葉がもたらす前向きなパワー。それがムックにはありました。

2003/09/03 Release
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 ライヴは10数年かけて未だに迫力を増し続ける「茫然自失」に始まって、「誰も居ない家」がヘヴィなグルーヴで孤独を突き付け、ニュー・シングル「空-ku-」が今の曲ながらもあの頃を蘇らせる。一番思い入れの強い時期のムックの再演。それでも、過去に回収されるだけではありません。ドラムはAllenさんに代わってどっしり感が増していた。昔と今がいい意味でせめぎ合っている良さがあります。

 今ツアーのセットリストは日によって是空多めと朽木多めの2パターンが用意されており、この日は是空曲多め。といっても是空DAYでも朽木が半分ぐらいを占めます。「悲観主義者が笑う」や「死して塊」の暗黒ムード。そして「遺書」で押し寄せる苦痛の洪水。若かりし頃だから書けた曲かもしれませんが、逹瑯さんの怨念の宿り方は歌声やパフォーマンスからも明らか。音楽性は以降にどんどんと変わったとはいえ、これら2作品が時空と感情を引き戻すのか。殺気すら感じる瞬間もありました。

2004/09/01 Release
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 ”悲しみも苦しみも希望も喜びも全ての景色を大切に、連れて行こう未来へ”と言葉を添えて始まった「この線と空」は視界をパッと開かせるスピード感が心地よかった。また、こういった曲の中で聴く「溺れる魚」「暁闇」「モノクロの景色」辺りは、フォーキーな感傷や哀愁といった持ち味が活きている。

 徹底した過去との対峙。負の過剰摂取。大人達や社会への怒りを投じる『是空』、重く閉ざす闇の中にいるような『朽木の灯』。そのムードから解き放つようにアンコールの「青き春」「蘭鋳」といった曲で弾けて混ざる感覚で終わっていく。初期の感覚を振り払うようなワチャワチャ感と笑顔がみられる光景は、今のMUCCでやる『是空』『朽木の灯』ツアーの最後としてふさわしいものだったかもしれません。

 ここ1週間は11月30日に30周年のBoris(ともうすぐで30年のBuffalo Daughter)、12月1日に25周年のDIR EN GREYときて、最後に25周年のムックを体感。各々の音とやり方で歴史を紡ぎ、世界でも認知されているバンドたちの強さ。それをまざまざと思い知らされた1週間でした。

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セットリスト

2022/12/04 MUCC 25th Anniversary TOUR 「Timeless」〜是空・朽木の灯〜 @ 松下IMPホール

00. 心奏
01. 茫然自失
02. 誰も居ない家
03. 空-ku-
04. 我、在ルベキ場所
05. 商業思想狂時代考偲曲(平成版)
06. 悲観主義者が笑う
07. 遺書
08. ガロ
09. 死して塊
10. 暁闇
11. 2.07
12. 溺れる魚
13. この線と空
14. モノクロの景色
15. 夢死
16. 名も無き夢
17. 9月3日の刻印

–encore–
18. 青き春
19. 蘭鋳

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