90’sエモの隠れ名バンドのひとつ、Pohgohの来日ツアーへ行きました。1994年にアメリカ・フロリダ州タンパで結成され、90年代エモの隠れた名バンドのひとつとされる存在で97年にリリースされた1stアルバム『In Memory of Bab』を発表し、話題を呼ぶも同年にあっけなく解散。Vo&Gtを務めるスージーは2001年に多発性硬化症と診断され、以降は数十年にわたって闘病している。
Pohgohは2016年に再結成。2018年に2ndアルバム『Secret Club』をリリースし、翌年に初の来日ツアーを開催。ただ5年前はPohgohをちゃんと知らなかったので行ってません(エモ・ディスクガイドに載ってないのと、当日はDIR EN GREYの京都ライヴに行ってた)。
2度目の来日ツアーとなる今回は22年11月発表の3rdアルバム『du und ich』に伴ったものです。”年季の入った”という表現だけではない瑞々しさと繊細さを引き連れたサウンドで満たされた同作。わたしの22年お気に入りアルバムの1枚。今ツアーも名古屋にちゃんと来てくれることがうれしいですね。
会場はStiffSlack。例の問題が発覚して以来、近づきはしませんでしたが今回ばかりは足を運びました。あれからかなり時間が経ってからではありますが、解決していく姿勢が見えていますので。ちなみにわたしはStiffSlackの移転&ライブスペース設営のクラウドファンディングに出資している。だから文句のひとつぐらい言う権利はある。とにかくちゃんとしてくれよ!と。
4WAYスプリットで共演しているCARDの出番が終わり、Pohgohは21時手前に始まります。スマホの翻訳機能をマイクに通し、観客へアナウンス/コミュニケーションするバンドを見たのはおそらく初めて。”みなさん、こんにちは。スージーは体に障害があり、車いすに座っています。背の低い人が前で見れるようにご配慮をお願いします“と最初に伝えられます。音楽性は古き良き的なところなのに、伝達手段は最新を駆使する。
始まったステージはその古き良きを感じさせるもの。繊細なメロディとスージーの透き通る凛とした歌声がPohgohの根幹にあります。と同時にバンドが前進している姿勢もみせ、22年に発売された『du und ich』の楽曲では瑞々しさと軽快さが目立ちました。
それでもライブになると驚くほど感じるのは勇ましき力強さ。健康診断絶対E判定だろな体躯の男3人衆のパワフルなサウンドがめちゃくちゃ強力。スタジオ音源以上にメリハリが利いており、ライブでこそ真価を発揮するとはこのことかと。往年のバンドには秘訣があることを実感する。それはPohgohだけでなく、先月みたCodeineもそうだしMelvinsもそうです。
”この日本ツアーで演奏するまで10年近くやっていなかった曲です”と「Worst Case Scenario」が始まった時にひときわ大きくなった歓声。でも決して思い出を振り返るではなく、現行バンドとしての切なさと強さが滲んだ表現にグッとくる。私的に印象に残っているのは「Hammer」と「All Along」の2曲。歌入りのポストロックと例えられそうな静と動のダイナミズムが発揮された曲で、両曲ともに泣きの要素たっぷりで惹きつけられました。
”わたしたちはHULUで『SHOGUN(将軍)』を見て絶対に日本語を話せると確信しました。でもそれは間違いでした”とスマホ翻訳から聞こえてきたときは笑いに包まれる。その後、ドラムのキースが”ショーグン、イェーイ!”と謎のテンションになったのはもっと笑いました。メンバーみんながとにかく気さくで楽しんでる。日本ツアーを心の底から喜んでいるのを見れるのはこちらとしても嬉しい。
スージーの移動が困難なため、無理やりステージを一度去ったふりをして観客に拍手と歓声を求め、アンコールのていで残り2曲を披露。「Business Mode」と「Friend X」で会場をさらにわかせる。バンドは長く時が止まっていたとはいえ、前述したように今を歩む充実感をひしひしと感じさせたライブとなりました。
—setlist—
01. Repeat Exchanges
02. Over/Under
03. House Burned Down
04. Try Harder
05. Digging
07. Worst Case Scenario
08. Weeds
09. Unthethered
10. Hammer
11. Tell Me Truly
12. Super Life
13. All Along
—Encoreのていで—
14. Business Mode
15. Friend X