【ライブ感想】2024/07/04 三国演義(Wang Wen 惘闻 / MONO / Jambinai) @ 梅田クラブクアトロ

 日中韓を代表するインストゥルメンタル・バンド3組の共演【三国演義】に参加してきました。日本からは5年ぶりの日本公演となるMONO、韓国からは初来日のJambinai、そしてトリを飾る中国のWang WenはAfter Hours’17以来7年ぶりとなる来日公演となります(わたしはその時に観ていませんが)。

 正直なところ当初は翌週月曜日のDeafheavenに行く予定でしたが、5月の中旬にいきなり本公演が発表されて自分の中で揺れました。両方ともに平日開催。地方民としてはどちらか選択するしかない状況(片方いけるだけでもありがたいことですが)。

 結果は【三国演義】だろと。なんてったってJambinaiが初来日するわけだから。MONOが5年ぶりに見れるわけだから。というわけで本公演について以下に書いています。

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ライブ感想

MONO

 5年ぶりの日本公演。わたしとしてもAfter Hours’19以来5年ぶりで、通算13回目のMONO公演です。〇〇でしか得られない栄養みたいな言い回しが流行っていますが、MONOを体感することでしか得られない感情や脳内に走る何かは確実にあります。だからこそ定期的に見にいってますね。

 60分のセットは予告された通りに最新作12th『OATH』の曲はお預けで、ひとつ前の11thアルバム『Pilgrimage of the Soul』を主体としたもの。同作を引っ提げたツアーが日本で開催されなかったから、この救済措置はありがたいです。

 MONOはインストゥルメンタルで言葉がない。振り返ると本日の出演者で唯一、声を使った楽曲がありませんでした。歌があるから感情的だとか伝わりやすいとかはバンドそれぞれだから野暮なことだと思います。それでもMONOは作品やライヴを重ね、25年をかけて研ぎ澄ませてきた感情の音楽として心の芯に響くものがあります。

 オープニング「Riptide」の雷鳴のごとき音響の果て。早くも演奏された「Ashes in the Snow」が喜怒哀楽を伴って聴き手の深奥に迫ってくる。物悲しいグロッケン、重厚なリズム、感情を揺さぶるトレモロ。「Ashes~」はとりわけ身を切るような冷たさと哀しさが感じられる楽曲ですが、そのスケールの大きさに何度となく圧倒されます。

 中盤から後半にかけて披露された「Innosence」や「Halcyon」は彼等が持つ希望と光の側面を浮かび上がらせる。でもそんな光を侵食/破壊したのがラストを飾った「Com(?)」。最大積載量を越えた”怒”の感情を大音量に乗せて表現する。後半10分近く続く怒りの裁きとなる轟音の嵐は、声も感情も出てこずに茫然とするのみでした。

 最新作『OATH』は全くそういった負の感情から生まれなかった作品であることがまた不思議。11月のオーケストラ公演、楽しみにしています。今宵一番驚いたのは、ステージに登場するなりTAKA氏が「5年ぶりの大阪公演、楽しみにしてました」とマイクを通して話したこと。だってステージ上で話をしたのを初めてみたものですから。

—setlist—
01. Riptide
02. Ashes in the Snow
03. Imperfect Things
04. Innocence
05. Halcyon (Beautiful Days)
06. Com(?)

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Jambinai

 2番手に韓国のJambinai。ついに初来日。2016年リリースの2ndアルバム『A Hermitage』から聴いていますが、本当にようやくという感じです。GlastonburyやHellfestを始めとした世界の音楽フェス出演に加え、平昌オリンピックの閉会式でも演奏。韓国、アジアを代表するバンドとしてその名を残しています。

 Jaimbinaiは45分セット。1st~3rdに最新EPまで網羅した全6曲を披露しました。轟音系ポストロック/ポストメタルに韓国伝統楽器が組み込まれるのが特徴ですが、Bandcampでは”Experimental”のタグ付けのみなのがいさぎよい。確かに音楽的には多様なスタイルが混ざっており、サイケもプログレも感じさせます。

 出足の「once more from that frozen bottom」から強烈。素早いペースに乗せて鳥の鳴き声のようなヘグム(奚琴)、リズムもメロディも生み出すコムンゴ(玄琴)が分厚いサウンドに独特の味わいをもたらしていました。伝統楽器を単純に入れれば良いってもんじゃない、スリリングな演奏と展開。これには変な脳汁が出てくる。

 また全員が着座で演奏しているにも関わらず、体感してみるとハードコアのエナジーと感情、スラッジを凌駕するような質量、メタルの攻撃性が加速するフィジカル型の印象が強い。スタジオ音源でもその側面はありますが、ライヴはさらにという感じですね。平昌オリンピックで演奏された代表曲「Time of Extinction」が披露された時はわたしもぶち上りましたしね。

 その後の「Sun. Tears. Red」は激情系ハードコアじゃねえかと思えるぐらいにenvy系の叫びを終盤で繰り返す。ライヴ後に情報収集していて知りましたが、ギターとピリ(觱篥)と歌を担当するメインコンポーザーのIlwoo Lee氏は韓国のリアルスクリーモ・49 Morphinesのメンバー。マジで驚きましたね。だからかとも思ったけど。

 「candlelight in colossal darkness」は唯一、静かな要素の強い幽玄的なポストロックで鎮魂歌のごとき響き。夢や人生をあきらめてはいけないといった感じのMCをした後、ラストに演奏された「ONDA」はまさしく祈りの音色が木霊。やはり45分セットは短かったですが、ついにJambinaiを体感したという満足感に浸りました。今後はもっと大きな舞台で観れそうな予感はしています。

—setlist—
01. once more from that frozen bottom
02. Time of Extinction
03. Sun. Tears. Red
04. They Keep Silence
05. candlelight in colossal darkness
06. ONDA Prelude〜ONDA

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Wang Wen 惘闻

 トリを飾るWang Wen(惘闻)。MONOと同じく25年にわたって活動を続ける中国のインストゥルメンタル6人組。わたしは本日出演する中で一番聴いてないバンドです(アルバム1枚聴いている程度)。

 Saxon Shore+Tortoiseというおおざっぱな表現が体感していて浮かびましたが、トランペットやホーン、メロトロンといった楽器を用いてより華美で心地よい雰囲気がもたらされます。前2バンドが常に緊張感を強いられるタイプでしたがが、Wang Wenは音運びやハーモニーの調和を楽しめるような柔らかさがありました。

 とはいえ轟音系に接近するアプローチ、ポストロック伝統芸能のひとつであるタム祭、それにヴォーカル曲も1曲だけ披露。小洒落ていてジャズチックなムードもあり。そのなかで間口の広さと懐の深さの両方を感じさせる1時間でした。

 【三国演義】なる言いえて妙なタイトル。アジアを代表するインストゥルメンタル・バンドとして地位を確立しているこの3バンドが同時に体感できることはこの先にあるのか。そして日中韓は近くて遠い国なのか。少なくとも本日の公演ではそれは感じることがなかった夜になりました。

—setlist—
01. Forgotten
02. Wu Wu road
03. Lost in the 21st Century
04. Mail From the River
05. Lonely God + 8th Layer Hell
06. Forgotten river

※selist.fm参照

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お読みいただきありがとうございました!
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