地獄から天国までもを貫く轟音の祭典、leave them all behind 2012

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 数多の人々を歓喜させた開催発表から早4ヵ月。”轟美重音”を謳うフェスティバル「leave them all behind 」の第3回目がついに開催された。ISIS(the Band)やSUNN O)))を要し、国内外総勢5組が名を連ねた2009年4月の第1回を上回る、”初の2日間開催”と過去最大規模で迫る今回。当然ながら垂涎もののラインナップが両日に揃う。

 初日は、世界を震撼させ続けるヘヴィ・ドローンの暗黒神SUNN O)))をヘッドライナーに迎え、同じく海外からChelsea Wolfe、日本からはBorisと朝生愛の4組が名を連ねました。

 本記事ではその2日間を追っています。

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目次

1. Boris


 第1回に引き続いて前売り券は完売を記録し、若干数のみ発売された当日券も早々と無くなるなど超満員に膨れ上がった今宵の代官山ユニット。定刻の16時30分、まずは3回連続出演となるBorisがトップバッターとして登場。いつも通りに栗原ミチオ氏を加えた4人編成。今回は、2000年に発表した70分にも及ぶ超大作『flood』を演奏する(ちなみに完全再現ではない)。本フェスに第1回から皆勤となる彼等から送られる大きなサプライズです。

 出てくるなり大きな声援を浴びるもいつも通りにクールな面持ちで、集中力を漲らせて演奏を開始。作品は全4パート70分に及ぶのだが、本日は”パート1”のイントロ部を思いっきり省略して、セッションっぽいパートからいきなりの轟音が会場を揺らす。

 そして、”パート2”における哀愁のギターが寄せては返し、大らかに包み込んでいく。美しい旋律としんみりと響く歌、それからサイケデリックな音色と独特の情緒をふくらませ、終盤では怒涛の轟音の洪水がこの”轟美重音”を謳うフェスのスペシャルなスタートを高らかに告げていました。

 演奏は約40分ほどでしたが、栗原ミチオ氏が加わって今のBorisで表現する新しい『flood』になっていました。そして、ステージを去る際の「どうもありがとう」というAtsuo氏の最後の言葉が、なんとも温く響くステージでした。

2. Chelsea Wolfe

 ゴシックかつミステリアスな音像と物憂げな歌声を武器に、欧米で高評価を受ける話題の女性SSW、チェルシー・ウルフが2番手に登場。ライヴ・メンバーの男性3名を従え、中央に凛と佇む彼女が独特の磁場を序盤から広げ、そこへ引きずり込んでいく。

 底が見えない暗さと切なさを孕むサウンド、意識下に訴えかけるような彼女の歌声。これには、背筋をゾクッとさせられる事が多々ありました。また、ゴシック・フォークとしての趣が強かったスタジオ音源と比べると、ライヴではドラムを中心にバンドとしての演奏と迫力が押し出されていて、印象がまた違います。

 「Demons」では特にその強さや勢いを感じさせたし、「Moses」や「Tracks」などポーティスヘッドも引き合いに出されることも納得の深い闇が広がっていた。セットは前述の曲を含めて2ndアルバム『Apokalypsis』を中心に進行。世界から賞賛される彼女のステージを約50分、十分に堪能することができました。

—setlist—
01. Movie Screen
02. Demons
03. Mer
04. Tracks (Tall Bodies)
05. Noorus
06. Kings
07. Moses
08. Feral Love
09. Ancest
10. Pale On Pale

3. 朝生 愛

 続いて、本日トリを務めるサン O)))の10台以上にも及ぶアンプの要塞を背にして、朝生愛さんのステージは始まる。ゆらゆら帝国のチームである面々と親交が深いという女性SSWで、ギターとシンセサイザーを用いての柔らかな歌ものを披露。

 これまでとは打って変わって、周りのざわつきが耳に届くほどに音量は最小へと切り替わる。優しさを伴って伝わってくる歌とメロディには、耳も体も自然と癒されるようだった。一時の安らぎ、嵐の前の静けさ。2日間を通したフェスの中でも、彼女は異質な存在感を発揮することとなった。

 ちなみにここまで、事前に発表されたタイムテーブルよりも少し早いペースできっちりと進行。このスムーズな転換もまた素晴らしかったです。

—setlist—
01. Agenda
02. カミツレの大きな水たまり
03. Most Children Do
04. なつめやし
05. 知らないコルチカム
06. Komish
07. ランド

4. SUNN O)))

 そして、音量は最小から最大へ。21時からはお待ちかねのサンO)))がついに登場。こんなにも彼等を待っている人がいたのか!?と驚くほどの大きな歓声に迎えられる。と同時に緊張感は高まり、大きく膨らんだ期待は、要塞の如きアンプから放たれた音に包まれた瞬間に確信へと変わります。

 暗すぎる照明、視界を遮るほどのスモークの中、黒装束を身にまとったグレッグ・アンダーソンとスティーヴン・オマリーの尋常ではない轟音ギターで会場を制圧。また、ムーグ奏者のトス・ニューウェンフイゼンの参加で、さらなる迫力とおぞましさを加味。代官山ユニットはその圧倒的な音圧によって揺れ続けます。

 そんな中でステージの方を目を凝らして見てみると、グレッグとスティーヴンの2人は結構な頻度でギターを掲げてアピールしていたし、ワインを飲み回していたのには驚いた人も多かった。45分から50分を過ぎた辺りで、メイヘム等で活躍してきたヴォーカリストのアッティラがようやく登場し、独特の歌唱法でこの暗黒儀式を加速させる。地の底から魔物でも召喚しようとせんその歌唱に加え、さらにはレーザーポインターを振り回す怪パフォーマンスが繰り広げられました。

 「本公演は非常に大きな音量で行われます。可聴範囲を超える低音も多く出ます」と会場の至る所に注意書きが貼られていたが、この現場体験こそがサン O)))のライヴの醍醐味。第1回のltab以来2度目の体験となった自分としても、危険を感じずにはいられない瞬間も多々ありましたた。

 ですが、永続的な振動とともに時空が歪み、別世界にでも連れていかれたようなこの感覚は、たまらないもの。時間にして約95分。終わってみれば、彼等のライヴが唯一無二の体験であるということを改めて思い知らされたのでした。

 そして、物語は本日へと引き継がれる。信じられないような夢の来日が実現した2日目の開演。ミニストリーやナイン・インチ・ネイルズと並ぶインダストリアル・メタルの始祖として名高い孤高の存在、ゴッドフレッシュが20年以上の時を経て日本についに降臨。そして、日本のポストハードコアの雄、envyが2001年に発表した名盤『君の靴と未来』を全曲演奏する。

 昨日に引き続いて、本日も話題に事欠かない。また、ポストブラックメタルの新鋭のデフヘヴン、国産グラインドコア・バンドのモータライズドも彩りを添えます。ちなみに2日続けて前売り券と当日券は、完売で超満員。

5. MORTALIZED

 この日も定刻から遅れることなく、トップバッターの演奏がスタート。まずは、京都のグラインドコアの重鎮、モータライズドが火をつける。激しいギター・リフの応酬とブラスト・ビートを多用したドラム、そしてヴォーカルが狂気に満ち満ちた絶叫で混沌とした状況をつくりあげていきます。思わぬドラマティックな旋律が挟まれますが、激速のグラインドコアが怒涛のごとく鼓膜になだれ込む。

 ベースレスのトリオ編成ながら、速さと重みに富む迫力のサウンドはあらゆるものを叩きのめす破壊力があり、その激音に煽られて巻き起こるモッシュは、フロアの熱気をよく表していたと思います。約30分ほどのステージはあっという間に過ぎ去り、国産グラインドコアとしての存在感を大いにみせつけました。

6. Deafheaven

 続くは、サンフランシスコ出身の若手ハードコア/ブラック・メタル・バンドのデフヘヴンである。ポストロックやシューゲイザーの要素を交えた、いわゆるポストブラックメタルとよばれるスタイルが特徴に挙げられますが、美しい旋律を重ねながらスケールを広げ、大爆発する様はモグワイからの影響を感じさせます。

 その上で炸裂するブラック・メタル風のトレモロ・リフとブラスト・ビート、ハードコア寄りの絶叫は威力十分。さらには背が高く、セクシーな男の雰囲気を湛えたヴォーカル、ジョージの存在感もかなりのもの。その奇妙な仕草や動きは会場の視線を集めていました。

 ライヴは、10分を超える「Violet」から美しさと激しさを備えたサウンドで会場を煽り、「ランゲージ・ゲームズ」「アンリクワイテッド」と1stアルバム『ローズ・トゥ・ユダ』からの曲を立て続けに披露。そして、今月末に発売のBosse-de-Nagというバンドとのスプリットに収録されているモグワイのカバー曲「コーディ」を最後に演奏し、怒涛のごとく押し寄せる轟音と光で会場を包み込んでいった。個人的に、彼らのことは翌々日の名古屋での単独公演も拝見したが、これからを期待させる好パフォーマンスで数少ないお客さんを唸らせていた。

—setlist—
01. Violet
02. Language Games
03. Unrequited
04. Punk Rock~Cody(Mogwai Cover)

7. envy

 3番手には、前日のBorisと同じく第1回から3回連続皆勤出場のenvy。既にここまでの2組の熱演で気持ちも体も随分と高揚していたのだが、ここにきてのエンヴィは格別でした。SEの「ゼロ」から必殺の「さよなら言葉」へと繋がり、人でごった返すフロアの熱気は早くも尋常ではないレベルへ。

 順番はわかっているとはいえ、「静寂の解放と嘘」「左手」と現在でもライヴで活躍する楽曲が続けざまに披露されれば、熱くならない者はいないでしょう。トリを飾るゴッドフレッシュよりも、今日の特別なenvyをお目当てにしていた人も多いことでしょう。それはフロアの熱狂ぶりが物語る。なにせ、日本のハードコア界の屈指の名作『君の靴と未来』を全曲演奏する最初で最後の機会なのだから。

 MCで語っていましたが、普段はあまり練習をしないとのこと。今日の特別なライヴにむけてはかなりの練習をこなしてきて、(本作品をリリースした当時の)20代後半のピチピチだったころの情熱を燃えたぎらせてライヴに臨んでいるという。また、ヴォーカルの深川も当時着ていて、凄く影響を受けたというカナダのハードコア・バンド、ウラナス(Uranus)のTシャツを着用する徹底ぶり。

 全11曲がハイライトになりえるぐらいのエネルギーを感じるほど。特に音と感情が溢れ出した「足跡の光」から「君の靴と未来」というラストが、圧巻でした。今から11年前の作品となるが、様々な経験を経てきた今のエンヴィの強さやスケールが加わった『君の靴と未来』の完全再現は、圧倒的な説得力を持つものとなっていました。

 最後の最後、アウトロの美しい旋律に合わせて会場が一体となった拍手で包み、皆で感動をわかち合うことができたのも素晴らしかった。もう二度とないだろう体験に心から感謝したい。

8. GODFLESH

 この2日間のフェスの最後を飾るのは、ついに初来日を果たしたゴッドフレッシュ。20年以上の時を経て、日本でようやく実現した出来事に夢でも見ているかのよう。現在はJesuを中心に、数多くのプロジェクトを動かすジャスティン.K.ブロードリック、そしてベーシストのG.C.グリーンの2人がステージ上に姿を表しただけで、なんとも言い表せない感情が湧き上がってくる。

 そんな神の一撃はまず「Like Rats」から始まる。名盤の1stアルバム『Streetcleaner』でも幕開けを飾るこの曲から、ゴッドフレッシュの凄さを思い知らされた。ジャスティンが放つ超重量級のギター・リフと咆哮、地響きを巻き起こすG.C.グリーンのベース、そして特徴のひとつである冷徹無比なドラム・マシーンによるインダストリアル・サウンドは迫力満点。

 続く「Christbait Rising」「Streetcleaner」でも鬼神のごときパフォーマンス。反復する激重リフと冷徹なビートが、えも知れぬ快感を呼び、異様な盛り上がりと熱気に会場全体が包まれていく。ステージ後方のスクリーンでは、『Streetcleaner』のジャケットを動かしたものや絵画などが延々と視覚を刺激していた。

 その後も初期の楽曲を中心に演奏は続き、ゴッドフレッシュは時代に左右されない重みと凄みを増していく。後半では、2ndアルバム『Pure』から「Spite」「Mothra」「Pure」を畳み掛けるように演奏し、3rdアルバムの『Selfless』に収録されている「Crush My Soul」で奈落の底を見て、本編は終了。演奏後には、律儀に何度もお辞儀をして感謝を示すジャスティン。そんな彼からは誠実さも大いに伝わってきた。

 ほどなく始まったアンコールでは、Jesuにも通ずるような繊細さと浮遊感が伝わる「Slateman」を披露し、約75分に及んだ初の日本公演は幕を閉じた。

 夢のような2日間は、伝説の目撃。そして、貴重な体験の連続。やはり耳や体へのダメージは大きいものだが、心は大きく満たされています。こうして全8組がそれぞれ濃密な時を刻んだltab 2012は、初の2日間開催を大成功に収めたのでありました。

—setlist—
01. Like Rats
02. Christbait Rising
03. Streetcleaner
04. Life Is Easy
05. Tiny Tears
06. Avalanche Master Song
07. Dead Head
08. Spite
09. Mothra
10. Pure
11. Crush My Soul

—encore—
12. Slateman

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