
2001年にサンディエゴで結成された、ヘヴィ・サイケデリック・トリオ。Isaiah Mitchell(Gt)、Mike Eginton(B)、Mario Rubalcaba(Dr)の不動の3人で活動を20年以上継続しています。聴くたびに脳内が麻痺するようなグルーヴは圧巻。
2005年に『Sonic Prayer』、2007年には『Rhythms from a Cosmic Sky』と世に送り出した2枚の作品がコアなサイケ・ファンの心を鷲掴み。その勢いで2008年には初のライブ作品『Live At Roadburn』もドロップ。その後も地道に活動を続けており、2022年には最新のフルアルバム『Night Parade of One Hundred Demons(国内盤タイトルは“百鬼夜行“)』をリリースしています。
本記事では初期3作とライヴアルバムの計4作品について書いています。
Sonic Prayer(2005)

サンディエゴが生んだヘヴィ・サイケ・トリオによる1stアルバム。インスト2曲だけという収録内容ですが、2曲ともに20分越え。しかもそれが彼等の音楽のスタンダードとなる。売れることよりも自分たちのポリシーを貫いたデビュー作となっていて、いきなりここまで大胆な挑戦をしてくるとは驚きです。
ヘヴィ・サイケなギターリフが20分間、脳内宇宙を隅々まで浮遊して炸裂。原始的な趣のハードロックがおそらくはバンドのルーツ。それでいてスペーシーに広がるギターとパワフルなリズム隊の絡み合いが絶品。渦巻くギターに身を任せれば、心地よく酩酊できることは間違いないです。
時間感覚すら歪ませるディストーション・ギターの連続。それによってめくるめく不思議な音空間に誘われる#1「Flower Travelin’ Man」、儀式ドゥームっぽいリフを執拗に繰り返すことで暗黒に引きずり込む#2「Lost In The Cold Sun」。共に時計の短針が進むにつれて、“ここではないどこかへ”行ってしまった気分にさせられる麻薬的な曲に仕上がっています。デビュー作にして痛快、好き放題にやりまくる姿勢も好感。

Rhythms from a Cosmic Sky(2007)

2年ぶりの2ndアルバム。全3曲46分という内容で頭2曲はインストゥルメンタルで共に20分越えは前作と同じ。オマケとして3曲目にGroundhogsというバンドのカヴァーで「Cherry Red」が収録されています。
レトロな質感のハードロックを基盤にして、そこに絶妙に絡むリズム隊の強烈なアンサンブルが楽しめるのは相変わらず。時間が進むにつれて音のエネルギーが倍化されていき、トリオの壮絶な演奏がさらに火花を散らす。やがてはドラッギーな昂揚感をもたらす、反復と酩酊の見事さよ。
#1「Godspeed」と#2「Sonic Prayer」は共に言葉を失うぐらいの悶絶度を誇る長編インスト。サイケデリックなサウンドが宇宙へ向けてダイナミックに咲き乱れ、強烈なグルーヴ感には何度となく打ちのめされるほどです。ひたすらなジャムセッションの趣はありますが、音を重ねることで目指す極楽。それを体現するのがEarthlessなのです。
カバー曲である#3「Cherry Red」も70’sのレトロっぽさと奇怪なヴォーカルが、このバンドの特性とマッチしています。危うい魅力を放っている。三位一体のヘヴィな音塊にこの上なく胸を熱くさせられる圧巻の一枚。

Live at Roadburn(2008)

Roadburn Festivalのライブを収録した2枚組ライヴアルバム。
DISC1に関しては両方とも新曲。Earthlessらしく2曲とも20分越えのサイケデリック・インストワールドが展開される。激烈アンサンブルと大地を揺らす豪快な躍動感、空間を強烈に歪めるギターリフが生む未知の快楽。絶妙なテンポチェンジを挟みながら音が緊張と弛緩を繰り返しすことで、熱がどんどんとヒートアップしていき、とてつもない昂揚をもたらしてくれている。肉感的な快楽を伴うライブ感とブルージーな薫り、この1枚目だけでもかなり悶絶してしまう。
DISC2に関しては2ndアルバム「Rhythms from a Cosmic Sky」(←超オススメなので聴いてみて)の両巨頭「Godspeed」と「Sonic Prayer」を収録。だが、様相が違うのは3人の創造力と演奏力の賜物か?2曲ともにCD通りに演奏しているのは半分くらいで、ライブならではのジャム的な演奏が随所にねじ込まれており、息もつかせない展開がグイグイと意識を引き込んでいく。壮絶な暴れっぷり、数多もの内的爆発を引き起こすリフ・グルーヴの嵐には快楽の言葉がよく似合う。
From The Ages(2013)

実に6年ぶりとなる3rdアルバム。長い歳月は経てども、不動の黄金トリオによる終わりの見えないジャム演奏で、サイケデリック・ヘヴンへ突き進むのは相変わらず。
Earthless節全開の#1「Violence of the Red Sea」からして、思わず唸るようなできばえ。火を吹く歪んだファズ・ギターの応酬、骨太のベースライン、タイトなドラミングが渾然一体となって、開放と快楽へと誘う。70’sハードロックやサイケをベースにした渋い趣、さらにスペース・ロックやクラウトロック、ストーナーまでを加味し、モダンな感覚もしっかり持ち合わせています。
2ndアルバムからは地続きの内容と言えますが、追及し続けたグルーヴの快楽といい、サイケデリックな酩酊感といい、他バンドから一歩抜きんでているなと。やりたい放題ではあるけど、この手のジャムにありがちなルーズさはなく、かっちりとした構成で高みに登りつめていく感じも独特です。
#2「Uluru Rock」ではゆっくりと煙たいリフを反復させる前半から、中盤から徐々にギアをあげていく。終盤ではドラッギーなソロと扇情的なリズムが嵐のように襲いかかる快感はたまらないものがある。08年発表のライヴ作品『Live At Roadburn』にも収められていたラスト・トラック#4「From The Ages」は、時に戦慄さえ覚えるサイケデリックな30分超えの大曲。圧倒的なテンションで昇天するまで終わりません。
本能から揺さぶりをかけてくる巨大なグルーヴが最高で、Earthless健在を高らかに示す傑作。