ENDON、ノイズを介した野心的な試み

 2007年に結成された東京のエクストリーム・ノイズ・バンド5人組。ヴォーカルとギター、ドラムにノイズ・クリエイターが2名という編成。研ぎ澄まされたノイズをハードコア/ブラックメタルの骨格に組み込み、国内外から関心を寄せられます。2014年9月に1stアルバム『MAMA』をリリースし、2017年3月発表の2nd『Through The Mirror』はさらに幅広く彼等の存在を知らしめました。

 本記事は2枚のフルアルバム『MAMA』『Throught the Mirror』について書いています。

目次

MAMA(2014)

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 1stフルアルバム。全6曲約42分収録。プロデューサーにBorisのAtsuo氏、エンジニアに中村宗一郎氏を起用し、リリースはDaymare Recordingsより。バンド形態でありますが、ヴォーカルとギター、ドラムにノイズ・クリエイターが2名という編成がまず特殊です。

 Bandcampの紹介文には”カタストロフィック・ノイズ・メタル”と名乗ると書かれています。カタストロフィックとは”壊滅的、破滅的、悲惨”といった意。そんな人情無しのノイズの奔流が、グラインドコアやブラックメタルの冷徹さと速度と結びつき、耳も体も心も過激にぶちのめしにきます。そして起こる感情の脱落。

 トレモロリフ、ブラストビート、ひたすらなノイズ。那倉太一氏は甲高い金切り声をあげ、痛みに耐えるように吠え、泣き叫ぶ。それが人間的でもあり、非人間的でもあり、動物の本能そのものが発声に表れているようにも感じます。このように定型をもつことのない、破滅と親密協定を結んでいるENDONのサウンドは、ノイズとエクストリームメタルの規定を押し広げるものでしょう。#1「Etude For~」からおぞましい混沌です。

 #2「Parricide Agent Service」を聴いて戦慄し、15分を超える#3「Acme Apathy Amok」で三途の川へとダイヴの刑に処し、密教めいた序盤から阿鼻叫喚と言う他ない地獄の#4「Pray For Me」が待ち受ける。美しい一面もみせる極端な振れ幅を持った#6「Just Like Everybody」で締めと抜かりはない。逃げ場など無いと突きつけているかのような本作は、Justin.k.Broadrickなどからも称賛されています。

こいつらは狂ってる! 腹にくる、幻覚を覚えるサウンドとノイズ、紛うことなき音の死旅行だ

by Justin K.Broadrick(GODFLESH, jesu)

Through the Mirror(2017)

 約2年半ぶりとなる2ndフルアルバム。全8曲約46分収録。1stアルバム『MAMA』でノイズとエクストリーム・メタルの可能性を押し広げ、アングラ界隈で話題となりました。本作は日本のバンドとしては初めてとなるConvergeのギタリストであるカート・バルーのGod City Studioで録音され、彼がプロデュースを担当。真意は不明ですが、インタビューでは前作よりもキャッチーさを目指した作品だと言います。

 一線を越えたノイズ過激武装、ブラックメタルとグラインド・コアの瞬発性/冷徹/獰猛と骨格はそのままです。圧を感じさせると同時に切り裂かれる音の生成。ハードコア要素の強化、ポストロックの短い編集、自由すぎる可変速、#3「Born in Limbo」における演劇的なサウンドコラージュなどの変化もある。もっと大きなところでいえば、以前よりもバンドとしての団結感が出ており、練られた構成の中で非人道的なノイズが発射され続けます。那倉氏のヴォーカルも変わらずバンドのトレードマークとなっている。

 常に能動的であり、受け身に回る感じがほとんどなし。細部にまでこだわった中でも本能で生み出された音という印象が強い。#2「Your Ghost Is Dead」はまるでジェットコースターのようにスリリングな中で、ノイズとエクストリームメタルの限界点を探る。10分を超える#6「Perversion ‘Till Death」は即興的な演奏からPrimitive Manのような獄門スラッジメタルへと変遷。表題曲#7「Through The Mirror」は那倉氏の非人間的に多数の声を操り、獰猛なアグレッションと共に絶望のギアを入れ続けます。

 ラストを飾る#8「Tourch Your House」は最も美しい瞬間に出くわし、最も過酷な瞬間にも出くわす両極端が存在する。ENDONはこだわりぬいた美意識があります。その結果として、横暴に人の精神を暴こうとする試みとしてノイズを用いている。『Through The Mirror』は野心的で特異なエクストリーム・ミュージックであり、聴き手の奥底に眠った感情を外に引っ張りだそうとするものです。

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