【アルバム紹介】Final Light、シンセウェイブとポストメタルの友好

 フランスのシンセウェイヴ・アーティストのPerturbator、スウェーデンのポストメタル巨人Cult of LunaのヴォーカリストであるJohannes Perssonによるコラボ・プロジェクト。

 オランダで開催されているRoadburn Festivalの主催者が2020年の同フェスに向けて、Perturbatorに”誰かとコラボレーションしてステージに出ないか”と持ち掛けたことでユニットは実現。

 パンデミックの影響によって2022年までプロジェクトは延期となりましたが、ステージでも共演を果たしました。その後、1stアルバム『Final Light』を同年6月末にリリース。

 本記事ではそのフルアルバムについて書いています。

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アルバム紹介

Final Light(2022)

 1stアルバム。6分から10分までの曲を揃えた全6曲約48分収録。Perturbatorは本作のリリースをきっかけにいくつかの作品を聴きましたが、このコラボにおいては煌めきや80年代風レトロさは抑え気味。

 彼が以前に手掛けたCult of Luna(CoL)の「Cygnus(Remix)」よりも色彩感は薄く、地が揺らぐほどのベースラインと不穏なシンセが荒涼とした世界を彩っています。

 真夜中にも製造を続ける工業地帯のような雰囲気を感じ、インダストリアル~ドローンメタル寄りの重圧がひどく圧し掛かってくる。しかし、ほんのりと煌めいたエレクトロも加味してます。

 それに応えるようにCoLのヨハネス・パーションはギターと咆哮で作品を支えます。彼の威圧的な声の轟きは相変わらず超然とした支配力があり、Julie ChristmasとのコラボやBosskの作品にゲスト参加した時と同様に、CoL感が半端ないことになる。

 あくまで彼のスタイルを崩さない。Perturbatorが機械のように冷たくシリアスな波もたらす一方、ヨハネスは燃える情動を本作に持ち込んでいます。

 先行公開された#2「In The Void」の壮大なシネマティック・サウンドで圧倒。#表題曲#4ではシンセの明滅とヘヴィなギターが組み合わさり、非情なる咆哮と共に本コラボの真骨頂を聴かせています。

 #6「Ruin to Decay」は唯一10分を超える曲ですが、巨大な質量と急激な加速を伴って息苦しい現実世界を突き付けるかのよう。しかしながらCoLの電子版的な印象にはとどまっておらず、『Vertikal』よりも退廃的な近未来を描く。映画「ブレードランナー」的な世界観もちらつきます。

 ちなみにRoadburn Festival 2022の出演はヨハネス・パーションとPerturbatorの他にツインドラム、映像担当の計5人によるステージで本作を完全再現しています。

お読みいただきありがとうございました!
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