Holy Fawn、聖性なるロマンス、喪失を見つめ。

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 アメリカ・アリゾナ州のポストロック、ブラックゲイズ系バンド4人組。自らを”four creatures making loud heavy pretty noises = ラウドでヘヴィでプリティなノイズを生み出す4人の制作者”と謳う。2018年にリリースした1stアルバム『Death Spells』は、Lamb Of Godのランディ・ブライやThriceのライリー・ブレッケンリッジから賞賛されます。2022年9月には2ndアルバム『Dimensional Bleed』をリリースしました。

 本記事は2枚のフルアルバムについて書いています。

目次

Death Spells(2018)

 1stアルバム。全10曲約60分収録。”『Death Spells』は現実と夢の世界、そして私たちが起きている間に抱く痛みを組み合わせたものだ。レコーディングには2年間を費やし、自分たちの頭の中にあるものを正確にとらえ、それを完璧な流れにするために自分たちを追い詰めた“とフロントマンであるRyan Ostermanは語る(DISTORTED SOUNDより引用)。

 シューゲイザー~ポストロック~ブラックメタル~ドゥームと各所に振れていく#1「Dark Stone」を試金石に本作は始まります。聴いていてAlcestは近しい存在と感じましたが、ジャケットのような鬱蒼とした森を彷徨っている感覚で、さしずめ暗黒版フェアリーランドという印象でしょうか。

 ノスタルジックな夢路#2「Arrows」の終盤には強烈なスクリームが乗り、唯一の疾走曲#4「Yawning」でも澄んだ美しさと黒々しいメタルがミックスされています。キレイに聴かせるだけではない痛みの表現が絶叫に表れている。

 しかしながら、本作はスロウ~ミドルテンポを中心に繊細なタッチとレイヤーの織り成す優美さが見事。後半の楽曲ではブラックメタル成分は控え目になり、ノスタルジックな旋律とウィスパーボイスが夢の案内人のように語り掛けます。#5「Seer」は清冽なクリーントーンと子守歌のようなヴォーカルに導かれたかと思っていたら、洗礼のごとき轟音が終盤に溢れ出す。3分強の#6「Two Waves」には初期シガー・ロスの影響が垣間見えます。

 最長となる8分の最終曲#10「Sleep Tongue」は、Nothingにも迫るノイズの海に意識も身体も溺れるように終わっていく。本作は天にも昇る艶やかな白と重たく陰る黒を巡礼しながら、ジャンルの広域をカバー。夢見心地と轟音がもたらすカタルシスを体感できます。

 なお本作をLamb Of Godのヴォーカル、ランディ・ブライが”このアルバムは美しく、ヘヴィで、催眠術のようだ”と語り、自身のインスタグラムで2018年のベストアルバムの1枚に挙げています。

2018/09/14 Release
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Dimensional Bleed(2022)

 2ndアルバム。全10曲約49分収録。タイトルは公式サイトによると”漠然と同時に存在しうる複数の次元と時間軸の概念のこと“を指している。制作についてはコロナ禍の影響でリモートがベースになったそうで、前作よりもテープやエレクトロニクスの割合が増えています。

 ポストロックやシューゲイザーが大部分を占める構成は変わらず。そこにブラックメタル、アンビエント、エレクトロニカが重なり合って魅惑的な層を成す。天界にいるような聖性と暗く深い森にいるような暗鬱を維持していますが、身を切るような激しいスクリームが本作では増加しました。しかし、残忍性のアクセルをそこまで踏んでおらず、力技という感じも無し。あくまで感情表現の一部として機能しています。

 本作は”死と喪失”がテーマに盛り込まれる。実際に先行シングルとなった#2「Death Is A Relief」についてRyan Ostermanが”喪失の歌“だと語ります。詞を読むと”取り残された私と先だったあなた”について書かれていますが、甘く幻想的なムードに終始した上で終盤に壮絶なスクリームが木霊する。2分40秒という短さが特徴の表題曲#6「Dimensional Bleed」で同テーマを引き継ぎ、中盤から最も過酷で深い闇を演出。

 #4「Empty Vials」や#7「Sightless」では叙情的なムードからドゥームゲイズへと移行。そして悲痛な叫びが天使のヴェールを剥ぎ取っています。作品終盤は晴れやかな雰囲気へと移行し、#9「True Loss」はシューゲイザー讃美歌が鳴り響き、ラストを飾る#10「Blood Memory」では暗闇に染まったHammockのようです。クライマックスではピアノの旋律が静かな空想へと導ていく。

 前作同様に各ジャンルの柔軟なブレンドを持ち味に精巧なテクスチャーを成します。そして、生と死という遠い風景を結びつけます。感情が噴火する瞬間、ムードを切り裂く苛烈な瞬間はあれど、美しい物語に浸れる1枚。

2022/09/09 Release
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