90年代ヴィジュアル系リスペクトバンド “紫牡丹”のメインコンポーザーであるヴォーカリスト、宙(sora)氏によるソロプロジェクト。2024年1月に1st EP『LLUVIA』をリリース。
アルバム紹介
LLUVIA(2024)
1st EP。全5曲約18分収録。タイトルのLLUVIA(読み:ジュビア)はスペイン語で雨を意味。
本プロジェクトについては、”ニューウェイヴやゴシックロックに、ヒップホップやR&B、そして90年代ヴィジュアル系に影響を受けたサウンド”といった感じの紹介文を目にしました。確かにそれらの魅惑的な融合は、In My Vanitasssが醸し出す”ミステリアス、退廃、耽美”という三要素に表れます。
リード曲となる#1「After the LLUVIA」から打ち込みとギター、主導する宙氏の歌声がこだわりの美観を演出。優雅でしなやかな音像からはTHE NOVEMBERSを近しく感じますが、Vのタレにより漬け込んだ印象を受けます。
しかしながら思った以上にニューウェイヴ~エレクトロニックな意匠が優勢。ただダークに行き過ぎることはなく、妖美なるエレガントさがあります。さらに#2「Ardiente Sun」ではフラメンコギターによるラテン系の情熱が注入され、#3「D.A」にはアラビア風のメロディが躍動。これらの異国情緒が奇妙な彩りを与えています。
そんな中で核となっているのは宙氏の表現です。端正な歌から伸びやかなファルセット、軽やかなラップ、妖しげな歌い回し、オートチューンによる変相などで楽曲の表情を豊かにしています。彼の主演としての立ち回りが最も表れているのが#4「Graue Komödie」で、メタリック+電子音の上を様々な歌唱法で乗りこなしている。
そして終点となる#5「Crying Sky」が始まりの#1「After the LLUVIA」、#4「Graue Komödie」に続いて”雨”で繋がれ、物語を結ぶ。涙のような雨に寄り添う柔らかな歌声。その儚さとは裏腹に歌詞を読むと死が薫る。
晴れ間のない日々にこそ真価をみせる作品であり、アルバム全体に通底している”祈り”に似た性質がまた聴き手を惹きつけます。