【アルバム紹介】If These Trees Could Talk、緻密に満ちゆく真摯なインスト

 2005年から活動を続けるアメリカ・オハイオのインスト・バンド5人組。バンド名は創始者であるドラマーのザック・ケリー、兄でギタリストのコディ・ケリー兄弟の祖父がよく語っていた言葉から引用されている。

 トリプルギターによる美と重のインストを武器に活躍。これまでにフルアルバム3作とミニアルバム1作を発表しています。

 3rdアルバム『The Bones of a Dying World』はMetal Blade Recordsからリリースされており、過去作も同レーベルから再発。

 本記事はこれまでにリリースされた4作品について書いています。

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アルバム紹介

If These Trees Could Talk(2006)

 

 1st EP。全6曲約32分収録。”活動初期はMogwaiやExplosions In The Skyを聴いていたが、自分たちなりに解釈していた”とIBTのインタビューで回答しており、轟音系ポストロックに連なるスタイルが特徴のバンドです。

 トレモロ・リフがもたらす軽やかな飛翔感、アルペジオの煌めき、各パートの有機的な積層。トリプルギターを案内役にデビュー作ながら職人的な精巧さと味わいが詰まっています。

 8分を超える#1「Malabar Front」からバンドの実力を感じるには十分な内容。冷ややかなトーンを維持しながらも、ポストメタル系に通ずる歪みと重低音が幅を効かせています。

 とはいえ、爆発力で押す感じよりもじっくりと聴かせる側面が強い。#3「The Friscalating Dusklight」では穏やかなハーモニーが響きわたり、#5「The Death of Paradigm」の4分間にわたるメランコリックな波状に飲み込まれる。

 ちなみにタイトルが不思議な#6「41°4’23n, -81°31’4w」は、故郷であるオハイオ州アクロンの座標を示しています。

 なお本作は10年にわたって廃盤となっていましたが、所属しているMetal Blade Recordsからアートワークとマスタリングを一新して2022年に再発売されています。

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Above the Earth, Below the Sky(2009)

 1stアルバム。全10曲約45分収録。ポストロック7:ポストメタル3ぐらいの配分で突き進むインストは、前作から大きな変更はなし。3本のギター、ベースとドラムによる5人編成の音でほぼ完結するスタイルもそのままです。

 詩的かつ流麗な響きから嵐のようなセクションへの突入は、Explosions In The SkyとPelicanの中間地点を攻めている印象。しかしながら轟音系ポストロックに準拠しているようで外れてもいる。

 ITTCTは要素を付け足すことや曲のバリエーションを増やすよりも己の武器を最大限に活かして、簡潔に仕上げます。

 静から動へ単純な移行を良しとせず。ギターがそれぞれに役割分担を果たして優美なストーリーを語っていく。その様は公務員に例えてもよいだろう実直な仕事ぶりです。

 終盤にPelicanばりの剛腕さとヘヴィネスが押し寄せる#2「What’s in the Ground Belongs to You」、MONOを彷彿とさせるトレモロの応酬によって哀切が色づく#7「Thirty-Six Silos」等はインパクト強し。

 また10分近くをかけてアルバム・タイトルをなぞっていく#4「Above the Earth」~#5「Below the Sky」は、風に揺れる森林のざわめきのようで、ITTCTがつむぐ音楽に惹かれます。

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Red Forest(2012)

 2ndアルバム。全9曲約47分収録。これまで同様に明確なコンセプトは設けられてないそうですが、精妙に絡み合うトリプル・ギターがもたらすメランコリーと破滅感が増しています。

 彼等なりの紳士協定があるのか、変わらずに5人による生音が主体。お互いを引き立てながらじょう舌に物語を描きます。

 しかし、諦観と無力感が全体から漂っている。特に#2「The First Fire」や#6「Red Forest」辺りに顕著で、煌々としたメロディが流れるも、クライマックスに向かうにつれて哀感が強まります。

 枯れ果てた木々、立ち込める霧、わずかに届く仄かな光がもたらす赤み。そこに無常さを突き付けるような音の波が流れ込む。それでも芯までじっくりと味わうインストとしての矜持が本作にて示されています。

 リズミカルな3連からディストーションの轟きが炸裂する#4「They Speak With Knives」、優美かつパワフルなサウンドが3分間に凝縮された#8「Aleutian Clouds」と赤い森に忍び込むメリットは多数あります。

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The Bones of a Dying World(2016)

 3rdアルバム。全9曲約54分収録。赤い森から滅びゆく世界の骨へと行き着いた本作は、かのMetal Blade Recordsからのリリース。

 だからといって特段にメタル度が高いというわけではなく、ポストロック用のタイヤで走り続けます。

 お得意のポストメタル的な重圧/ダイナミクスは効いているものの、トリプル・ギターを擁した美しいメロディを中心とした組み立ての方に本作でも分があります。

 クリーン・トーンを中心に織物職人のようにギターを重ね、いずれもドラマチックに展開。冒頭から心をわしづかみにされる#1「Solstice」から冷涼な音色を中心に静と動を丹念に編み込んでいます。

 しかし、これまでに無い激しさを増すリズムが目立つ#3「Earth Crawler」、ギターヒーロー張りのソロの引き倒しが聴ける#7「The Giving Tree」と細かな変化はあり。

 ポストメタル度よりもプログレッシヴ度が上がっているのは本作の特徴でしょう。

 そして轟音なしで流麗に聴かせる#2「Swallowing Teeth」、初期のPelicanを思わせるヘヴィな#6「Iron Glacier」など劇的な瞬間が何度となく訪れる本作。

 精査された音と組み立て、ストーリー展開は変わらずに雄弁です。

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