【アルバム紹介】Lemon’s Chair、シューゲイザーに対しての真摯な愛

 2002年にイマニシマサシとYUKOを中心に大阪で結成されたシューゲイザー・バンド。自身で運営するHIGH FADER RECORDSからMy Bloody Valentineの日本人によるトリビュート作品『Yellow Loveless』の発売、さらにJAPAN SHOEGAZER FESTIVALを2011年から2016年まで定開催。日本のシューゲイザー・シーンの活性化に尽力している。本記事は2ndアルバム『my favorite reverb』について書いています。

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my favorite reverb(2014)

 暖かい希望へ向かって・・・。1stアルバム『I hate? I hope?』の発売から実に4年ぶりとなる2ndフルアルバム。優美な轟音に包まれる冒頭の#1「Vibgyor」からして、実に心地よくて美しい。祈りも願いも込められた清冽なギターを中心にして紡がれるインストゥルメンタルは、心の芯に響くピュアな音色を鳴らしています。

 当然ながらシューゲイザーらしい重層的な音響、浮遊感、幻想性も見事なまでに表現。そのジャンルらしい様式美/醍醐味は十分すぎるほどに堪能できます。それが決して押しつけがましい印象は無く、ロマンティックな叙情性と神聖な雰囲気が醸し出されている。

 Explosions In The Skyにも連なる清らかなサウンドに身も心も浄化される#2「Floresta」、#3「Luna」は作品を美しく彩り、#6「#9」ではThe Sodom Projectのzazieをゲスト・ヴォーカルに迎えた穏やかで柔和なインディ・ロックを聴かせてくれます。そして、儚げなメロディを主体とした深い静謐からエピックな轟音が広げる歓喜の渦へと移ろっていく#7「My Favorite」で本作を締めくくり。

 広がる深い残響の海、恍惚の世界。シューゲイザーに対しての真摯な愛を基点に見事な美意識で貫かれた本作は、タイプは違えどMONOにも似た感触を覚えたりもし、なかなかに味わい深い一枚。結成して10年を超えたバンドの結晶がここに詰まっている。

お読みいただきありがとうございました!
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