
2009年末にAlcestとスプリットを発売したことで話題を呼んだ3人組シューゲイザー・ブラックメタルバンド。元AmesoeursのメンバーFursy Teyssierが率いるこのバンドは、淡く幻想的なサウンドを奏でており、Alcestと同様に異型のブラックメタルとして独自の道を歩む。これまでに3枚のフルアルバムをリリース。
本記事では1stアルバム、2ndアルバムの2作品について書いています。
アルバム紹介
Septembre Et Ses Dernieres Pensees(2010)

1stアルバム。全10曲約43分収録。前年暮れにはAlcestとのスプリット盤を発売しており、フルアルバム発表前から大きな期待を集めていました。本作はその期待に確実に応える作品です。
透き通る美しさを誇るアルペジオ、温かなトレモロとベースライン、情感豊かに歌い上げるヴォーカルが部分部分に煌く宝石を散りばめながら、儚くノスタルジックな世界観を造形していく。要所で女性コーラスや可憐なフレーズを挟み、丹念かつ耽美に紡がれている。
Prophecy Productionsから出ていることで、Alcestに続くポスト・ブラックメタルを思い浮かべますが、本作はポストロック/シューゲイザー寄り。
ザラっとしたリフやメタル・パートが飛び出してくるとはいえ、ホンの隠し味程度。聴きやすい部類に入りますが、温かみがありながらもサウンドの底にはモノクロで冷たい感触が存在しています。
優しく寄り添うようでいて、心に冷涼感を残していく。それがなんだかAlcestの1stと2ndの中間的な感触があります。

Ariettes Oubliees(2012)

2年ぶりとなる2ndアルバム。全8強曲約43分収録。物悲しくメランコリック、柔らかな浮遊感、陰りのある美しさを表現していた1stアルバムを経て、本作はさらにマイルドな味わいです。アートワークは前作よりも怖いですがが(苦笑)。
Fursyの優しく艶やかなヴォーカリゼーションが温もりを増し、音像もシューゲイザー/ポストロック方面へとさらに歩みを進めたことで、おフランスらしい豊かなリリシズムと上品さが目立ちます。
アコギを効果的に配した哀切のメロディは心の芯に響き、シューゲ風のノイズ・ギターも柔らかな拡がりをみせる。それにAudrey嬢のコーラスも月明かりのように優しく照らす感じで情感溢れる作品を支えています。
もちろん、ブラックメタル出自を忘れさせない粗暴なサウンドやツーバス疾走も出てきます。ですが、前作と同様にスパイス程度でしかない。全体を通しても哀しみを包み込むようなハートウォーミングな作風。それでも耽美さの中で虚無感/孤独感が浮かび上がることもあります。
Alcestにも比肩する上品でロマンティックな美意識と叙情性に満ちた#2は本作でも屈指だし、アコギの染み入る様な旋律からドラマティックに発展した表題曲#4は、PVでも高いストーリー性を発揮。
涙を誘発する慟哭のメロディが印象的な#6や幻想的な世界へと導く#7も大変良い。前作からの流れを踏まえて、質を上げてきたといえる一作です。

Prédateurs(2017)

3rdアルバム。