【アルバム紹介】PIERROT、狂いと毒の詰め合わせ

1994年~2006年まで活動を続けた日本のヴィジュアル系バンド。デビュー当時は、DIR EN GREYと双璧を成すほど人気を誇ったバンドであり、解散するまで常にチャートTOP10に楽曲を送り続けました。本記事では2作品を紹介しています。

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FINALE(1999)

 1999年リリースのメジャー1stアルバム。オリコン・チャート5位を記録。「終わりは始まり」という逆説的なコンセプトを元に制作され、デビュー・シングルとなる#11「クリア・スカイ」を始めとしたシングル4曲を含む全13曲が収録されています。

 そのシングル曲の影響で意外とキャッチーな印象が強く、全体としても幅広い曲調で、PIERROTというバンドを多角的に表現しているように思う。インディーズ期の毒気と混沌にうなされる#7「MAD SKY-鋼鉄の救世主-」、#13「Newborn Baby」といったダークでハードな楽曲から、アップテンポな#4「カナタヘ...」、メジャー感を伴った#11「クリア・スカイ」、それにバンド最大のヒットとなった儚い耽美さを持つ#10「ラストレター」等のヴィジュアル系の王道をいく楽曲まで。

 ヒットを飛ばしていたとはいえ、この頃はデビューしたばかりということもあってレコード会社の大人の支持に従っていたのか(笑)、メロディの立った曲を中心にして、様々な間口に対応可能な作品に落ち付いている。しかし、この辺りの全体の組みたて・構成の巧さ、コンセプチュアルな仕上がりはなかなかのものです。なかでもクリーン・トーンを主体としたバラード調の#8「SACRED」、壮大な展開を聴かせる#12「CHILD」といった曲のインパクトが大きい。

 ただ本作は、ピエラーからはバンドの濃い部分を味わえないということで、結構辛口な評価が多い印象。ただ、十字架のアイメイクをしてようが、のど越し爽やかな曲が多いので入門編として推せると思います。

PRIVATE ENEMY(2000)

 約1年4ヶ月ぶりとなる2ndアルバム。メジャーらしい多様性とポップネスを表現した前作から比べると、本作はかなり毛色が違い、随分と内省的でダークです。 それこそインディーズ期にも迫るほど、音や歌詞はコアで過激な方向へ。

 先行シングルである#2「CREATURE」や#5「AGITATOR」で顕著だが、過剰な攻撃性と扇情性が精神にも肉体にも効いてくる。壮大に白銀世界を奏でる#8「パウダースノウ」のようなセンチメンタルな楽曲もあるとはいえ、メジャーに移籍したからもうちょっと大人しくしているのかと思えば、彼等も我慢はできなかった模様です。

 ささくれたギターリフと社会を風刺する詞によるアグレッシヴな#3「ENEMY」、地獄へ一緒に堕ちていこうとするミッドテンポのヘヴィ・チューン#9「ゲルニカ」、ドラム缶を用いて金属的な音感を獲得したのに加えてサックスも悪戯に鳴る#10「FOLLOWER」とアルバムの中核を担う曲も主張は強い。加えて、ストーカーや少年犯罪、宗教団体などを風刺したメッセージ性の強い歌詞には、並々ならぬ説得力があります。

 トータルバランスやとっつきやすさは前作が遥かに上だと思います。けれども、聴けば聴くほどにハマったら抜け出せない中毒性はこちらの方に軍配が上がるはず。メジャー期で最もコアな表現が詰め込まれた作品であり、PIERROTらしい狂いと毒の詰め合わせ。た僕としては当時によく聴いてたこともあり、切なげ疾走曲#14「神経がワレル暑い夜」が一番好きですね。

お読みいただきありがとうございました!
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