【アルバム紹介】Tarsius Tarsier、小手先よりも荒くて粗いスパニッシュ・ハードコア

 2013年に結成し、翌年に本格始動したスパニッシュ・ハードコアの新人バンド。早い段階でIvan(Khmer,ex-Ictus)のお眼鏡にかない、彼の手厚いサポートを得てデビュー作である『Ceremonia de Atadura de Manos』をリリースした。国内盤は3LAより。

 本記事では1stフルアルバムについて書いています。

タップできる目次

Ceremonia de Atadura de Manos(2015)

 デビュー作。本作のリリースにはKhmer/ex-IctusのIvanが大きく関わっており、日本リリースもその縁からLongLegsLongArms(3LA)が買って出ています。

 収録内容としては8曲で約17分という短尺。ということはやはり勢いが命、初期衝動が命といったタイプであって、時速70Kmで北北東に進む台風のように短い時間に猛威を振るう。音楽的には、ブラッケンド・ハードコアやネオクラストに触発されたものといえます。

 手厚いサポートを受けたKhmerパイセンからの影響は大きく、初っ端の#1「El Desprecio」からクラスト風の爆撃乱射で、信号機も遮断機も断固無視して突っ走る。猛る血気がエンジンかとも思わせる#3「Tara」や#4「Cienaga」辺りは、何かの危険物を放り投げたかと思えるぐらいにリフの鋭さと突進力に長け、#5「Mataviuds」もまた然り。

 そのサウンドの中には前述したものに加え、メロデスやブラックメタルも入り混じってますが、計算で成り立っている感じはあまりしない。メンバー各々の持つ力をぶつけ合った結果として、初期衝動に溢れた”荒くて粗いハードコア”として強烈な存在感を放つまでになっています。

 それでも途中で緩急の味を知って、スラッジメタル的な重心の低い揺さぶりやアトモスフェリックなパートも取り入れている。この辺もスパニッシュ・クラストの系譜に沿っているといえそう。速いだけじゃねえぞと言いたそうな#8「El Ruido de Morir」で締めるのも気概の表れだと思うし、Ivanが注目株にあげるのも納得させられる。次世代のエクストリーム・ミュージックを担う存在になってくれれば、良いですね。

お読みいただきありがとうございました!
タップできる目次