te’、覚えられない長い曲名とエモーショナルなインスト

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 2004年に結成されたインストゥルメンタル・バンド。バンド名はそのままte'(て)と読む。長らくは4人組バンドとして活動し、残響レコードで代表を務めるギタリスト・konoさんをリーダーに、hiroさん(Gt)、tachibanaさん(Dr)、2011年に加入したWRENCHのmatsudaさんが名を連ねます。

 しかしながら、2021年11月末にhiroさんが他界。突然の訃報でした。2022年1月にお別れ会が開催され、3人での活動が発表されました。

 アルバムタイトルは全29文字、曲タイトルは全30文字で統一するという特異なスタイル。取っつきにくさを感じるそれとは裏腹にエモ、ハードコア色の強いインストゥルメンタルを掻き鳴らす。現在までに6枚のフルアルバムと2枚のミニアルバムをリリース。本記事ではフルアルバム6作品について書いています。

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目次

ならば、意味から解放された響きは『音』の世界の深淵を語る。(2005)

   1stアルバム。全10曲約45分収録。アルバムタイトルは29文字、曲名は30文字の統一。様式美はここからです。これは前ベーシスト、masaさんが超読書家だったこと、そしてインスト・バンドだからタイトルで圧倒的できないかということに起因する。そして、エモーショナルなインスト・サウンドという特徴的なスタイルは、本作から始まっています。

 轟音系ポストロックといわれる静から動へとゆるやかに向かっていくものではなく、シンプルなバンド・サウンドが軸。ハードコア、エモ的な佇まいの方が強く、聴き手を昂揚させます。また、ツインギターのリリカルなフレーズが耳を引き、特にhiro氏のギターが歌っている感覚がある。冒頭を飾る3分弱の#1「己が分を知りて~」は、te’の持つハードさとメロウさ、そして巧みなアンサンブルが見事に凝縮した1曲。

 ただ、本作はMOGWAI系ポストロックの流れをわりと汲んではいて、初期のライヴで終盤を飾ることが多かった#9「我々は希望に従って~」がその影響下にあることを思わせます。また#5「退屈な原作の~」や#6「暗黒中の~」やダークな色合いを残す。以降の作品と比べて冗長な展開の曲もあります。この辺りは初作ということでの手探りが感じられる。

 彼等の代表曲といえる#2「思想とは我々の~」や#7「沈黙中の表情にこそ~」を収録。深海のような静けさも、烈火の炎のような激しさも本作は持ち合わせている。残響レコードはte’をリリースするために設立したと言いますが、レーベル・カラーにも影響を与えた1枚

このアルバムが何を意味するのかは、君が決める事だけども、少なくとも僕には、哀しみの果てから駆け出す為に必要な叫びが聞き取れる。誰の為の世界でもない、壊さなきゃ進めないという現実がここにある。Takaakira”Taka”Goto(MONO)

リリース・インフォメーションより

それは、鳴り響く世界から現実的な音を『歌』おうとする思考。(2007)

   約2年ぶりとなる2ndアルバム。全10曲約47分収録。わたしがte’を初めて聴いた作品で、発売翌月に開催された名古屋CLUB ROCK’N’ROLLで初めて彼等のライヴを体験し、とても興奮したのを覚えています。彼等の全楽曲の中で最も激しいサウンドを掻き鳴らす#1「如何に強大な~」の始まりに悶絶。かと思えば、膨れ上がる音圧の前に出る美しいギターの音色に酔いしれる#2「美しき旋律も~」でそのギャップを味わう。

 ジャケットの暖色のピンクは、さらに繊細でメロウで温かみを増したことの証明でしょうか。繊細で奥行きのあるサウンドスケープ。前作と比べてもメロディが増え、ギターが歌う。#5「大胆は無知と~」ではベースも歌っている。そこがte’の強みで、歌が無くてもそれぞれの楽器が言葉を奏でてるような感覚を持っています。ひたすらギターが泣き叫んでいるかのような#9「何らの苦しみ~」はそれが顕著。

 そして、#1と並ぶte’の代表曲#6「言葉を用いて奏でる者は~」を収録。鋭いエッジと肉体的なダイナミズムで牽引し、終盤の「ワン、ツー、スリー」の掛け声でさらに爆発する曲です。4人の音・情熱が集約して、一気に解き放たれたときのエネルギーはとてつもない。わたしが一番好きなte’の作品ですし、一番聴いている作品。冒頭に書いたように初めて聴いた作品、このツアーに参加していることが大きい。

こういう感じ初めてかも。ちょっと聴いただけで辺りの空気が霧のように湿り気を増し、濃度を濃くしてゆくのを感じることが出来る。渦巻き、躍動する粒子の一つ一つの中に、ある筈の無い唄をも感じる事が出来る。
刄田綴色(東京事変)

リリース・インフォメーションより

まして、心と五感が一致するなら全て最上の『音楽』に変ずる。(2008)

   約1年と早いスパンでのリリースとなった3rdアルバム。全12曲約41分収録。2曲多いけど、収録時間はこれまでの中で一番短い。ほとんどが3分台に収まったコンパクトな尺で(長くても4分台)、ハードコア由来の攻撃性と即効性を発揮。特に序盤#1~#4までは過去一番じゃないかというテンションの高さとスリリングな展開で突っ走ります。

 te’はタイトルが小難しく取っつきづらいけれども、ラウドな音、メンバー自身の汗が見えるほどの一音入魂っぷりがらしさを物語る。MVが製作された#3「夢とは現実という~」のエモーショナルなサウンドとロックながらもダンサブルなノリが融合した1曲。#4「いつも好転する未来を望み~」の疾走感も心地よい。

 #5以降は、メロウな側面が出た曲が並びます。#7「詩はただ~」や#9「意味のある巡り会いを求めず~」の温かな情緒と優美なメロディでつづられ、ギターの音だけで構成する#11「歌を謡って眠らせてやりたい~」という飛び道具もある。しかしながら、ラストを飾る90年代ハードコアをノイジーに拡大した感があって何と読むのかわからない#12「無論做什麼都好~」で騒ぎ直して終わります。

 作品を通すと序盤のテンションがやたらと強調されてしまっているというか。ラウド&エネルギッシュに特化したことで提供する昂揚感が大きい反面、中盤以降の楽曲がやや弱いという印象をどうしても持つ。本作ぐらい思いきって騒がしく駆け抜けても良かったんじゃないかという気はします。

敢えて、理解を望み縺れ尽く音声や文字の枠外での「約束」を。(2010)

ギタリスト・hiroさんの病気療養を経て、完成させた1年8ヶ月ぶりの4thフルアルバム。全12曲収録。本作は、自らが運営する残響レコードではなく、徳間JAPANからメジャー・リリース。ただ、ジャケットも変わっていないし、タイトルの縛りもそのまま継続。

 ハードコアやエモの激情が乗り移った騒々しいサウンド、静謐とした場面では思わせぶりな長いタイトルのようにリリカルなメロディが拠り所。そんなインストゥルメンタル・ロックを志向してきたte’、音楽的にもこれまでの延長上にあるものです。本作は5分台の曲も復活してきているとはいえ、3~4分の尺で冗長になりすぎないようにシンプルなロックをぶつけてくるのがほとんど。それでいてギターもベースもドラムも歌い叫んでいる、強烈なエモーションを発しながら。

 #2「天涯万里~」の2分前後に訪れる集中砲火のごとき爆発、#3「秤を伴わない剣は暴走を」の四つ打ちの上で咲き乱れるギター、#4「夜光の珠も闇に置けば~」では完全にサビがあるかのようにギターが歌っている。四者が共振しながら熱く鼓動を高鳴らせるサウンドを掻き鳴らしています。

 新境地と思える部分もあって、後半にEITS風のアプローチが効いた#8「闇に残る遅咲きは~」、轟音系ポストロックとオーケストラ風の合唱が融合した#10「自由と孤立と~」等も収めています。ただ、それでも全てを蹴散らしのた打ち回るインスト・ハードコア#12「参弐零参壱壱壱」で終わる辺りが彼等らしい。”展開の中で聴く人を如何に昂揚させるか”とtachibanaさんのインタビューにありますが、常にte’はそこと対峙し、初期衝動を忘れていない

ゆえに、密度の幻想は綻び、蹌踉めく世界は明日を『忘却』す。(2012)

  約1年4カ月ぶりとなる5thフルアルバム。全11曲約47分収録。リリースは再び自身の残響レコードに回帰。te’の曲名とアルバムタイトルを考え、MCを担当していたベースのmasaさんが2010年末に脱退。すぐにWrenchのベーシスト・matsuda氏が加入。彼がアルバムタイトルや曲名を引き継いでいる。

 メンバーが変わったといっても本質的に変わりないte’がそこにある。少しひねった展開もあれど、ストレートに伝わる熱と衝撃。インストという表現やポストロックという括りに入ろうと、ロックバンドであるとことが常に最前線にあります。これまでの作品と比べて大きな差異があるかといえば、そうではありません。電子音が増えたり、エフェクトのかけ方が変わったなと感じる場面もあれど、te’像を忠実に守りつつ、強化していってる感がある。

 #2「楽観の深奥で燻る魔は~」はジェットコースター的な起伏の中でギター、ベース、ドラムのどれもが叫んでいるパートを持つ。そして、#8「音の中の『痙攣的』な美は、観念を超え肉体に訪れる野生の戦慄。」はmatsuda氏が加入してからのte’の最高到達点といえる曲。YouTubeやSpotifyで最も多い再生回数を記録しており、激しさと泣きの両者ががっぷり4つでぶつかり合っている。この2曲はte’の代表曲といえるものですが、瞬間の爆発力と即効性は抜きんでていると感じます。

 #6「探求者は相反する~」は軽やかに音符がたわむれ合い、終盤の#10「私は川の窪み~」では久しぶりにMOGWAI的ポストロック手法を用い、轟音を全身で浴びる。こういった変化球を放り投げてきても、ラスト#11「幣は峻拒する~」でいつも通りにうるさく締めくくります。本作もまた、ライヴで拳を振り上げる観衆の姿が浮かぶ。やはりこれこそがte’です。

其れは、繙かれた『結晶』の断片。或いは赫奕たる日輪の残照。(2015)

 約3年ぶりとなる6thフルアルバム。全12曲約42分収録。ドラムのtachibanasaさんが2015年3月より一時脱退する前に製作(2018年に復帰)。リリースは日本クラウンより。CINRAのインタビューによると”初のコンセプトアルバムになっていて、te’の今までの活動を振り返るストーリーになっている”とのこと。

 前作がte’像を守りにいったとすると(攻めてる部分はありますけど)、本作は柔軟な変化があります。シューゲイザー的な轟音に電子音や子どもの声のサンプリングが入った#1「『緒』。」、アコギを主体にしっとりと聴かせる#8「『友』。」、多重コーラスとポストダブステップ的手法を取り入れた#10「『盆』。」。1文字で表された短尺のインストが大胆な色付けを行っています。そんな変化があっても滑らかな流れが作品にはある。

 全面的なシンセの導入、この時期に流行していた感じのダンサブルなビートを取り入れたりと音像をテコ入れ。作品を重ねていくうちに、新たな試みが必要になったことが伺えます。一方で鋭いアンサンブルは健在であり、ゴシック体太字でロックと殴り書くような強さがある。それは、te’の本質として変わり様がないということ。#2「夜は光を~」はシンセや高速4つ打ちなどを入れながらも、彼等の瞬発力や熱量をギュッと凝縮しています。

 彼等のメロウな側面を発揮したシングル#11「思想も共感もいらず~」を収録。ラストに置かれた#12「私は舞う枯葉~」では電子音の装飾は施しながらも、熱いコーラスと騒々しいサウンドが主戦場。te’は歌のないハードコアだというのを強く印象づけています。結成から10年が過ぎ、メンバーが代わって少し経過したことでの過去とこれからを見据えた作品といえるかもしれません。

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