The Ocean Collective、深海からの創造。

 The Ocean(Collective)は、ギタリスト兼作曲家のRobin Stapsによって2000年にドイツで結成されました。これまでの20年以上のキャリアにおいてヘヴィミュージックを前進させ、プログレッシヴ・メタル~ポストメタルの旗手としてその名を轟かせる。地質学、海洋、宗教といった哲学的なテーマと向き合って生み出される作品は、いずれも高い評価を得ています。

 07年発表の3rdアルバム『Precambrian』において、自身の音楽性とコンセプチュアルな要素が結びつき、ひとつのスタイルを確立しました。その後も作品を重ねており、現在までに1枚のEPと8枚のフルアルバムをリリース。日本にも2019年10月に初来日を果たしており、わたしもそのライヴを体感しております。

 本記事ではフルアルバム8枚について書いたものです。彼等の音楽には、地球の歴史もキリスト教もバンド名通りの海も表現されています。音楽を聴いて学びを得る、是非ともその体験をしていただければ幸いです。

目次

Fluxion(2004)

 前年の1st EP『Fogdiver』に続いてリリースされた1stフルアルバム。コアメンバーである7名と数名のサポート参加がある。ヴォーカルはwikipediaによると5名いるようです。しかしながら、黎明期から現在まで在籍するのは、バンドの頭脳であるギタリストのRobin Stapsのみ。

 The Ocean Collectiveを語るとなると、07年発表の3rdアルバム『Precambrian』からのエクスペリメンタル・メタルを主体とした理知的かつ進歩的なバンドとして理解されていると思います。地質、海洋、宗教といった難しいテーマに挑み、音楽という形で示していく。

 ただ初期の音楽性は、もっとバイオレンスな心に満ちたブルータルなメタル。#1「Nazca」こそグルーヴィーなインスト・メタル+東洋系メロディが組み込まれた魔の入り口。ですが、#2「The Human Stain(意:人間の汚れ)」では野蛮なデスメタルとオーケストラルなストリングスが絶妙に手を取り合います。多数のスクリーマーを起用した声の圧迫感とエモーションも耳を焼き払うかのようです。初期のヴォーカルはかなりドスの効いた方で、現在のヴォーカリストであるLoïc Rossettiと比べると重苦しさは覚えますね。

 #3「Comfort Zones」や#5「Equinox」辺りはメタル度を高めて蹂躙しにかかる。特に#5は喜劇~オペラティックな要素まで激烈サウンドに交じり合っています。一方で表題曲#4「Fluxion」や#6「Loopholes」といった曲ではメランコリックな側面を活かしており、作品全体のバランスは整えられている。

 10分を超える#8「Isla Del Sol」や14分半に及ぶ#9「The Greatest Bane」の最後2曲はこれまでとセクションが切り替わったかのようで、OPETH的な複雑な展開とスケール感を伴った曲へと発展していきます。#8では唯一、クリーンヴォイスが登場。そして#9のラスト100秒を超えるスラッジメタル譲りのリフ地獄の中でみる悪夢は、The Ocean Collectiveに憑りつかれてしまった証拠となります。

 全体を通してコンセプチュアルな作風ですけど、明確にコンセプトは謳っていない(調べても明確なソースは見つかりませんでした)。でも、現在に通ずるような実験的かつプログレッシヴな要素が発揮されており、バンドの原点を感じさせる内容です。クラシック~オーケストラの影響も垣間見え、1stフルレングスにしてその多様さは表現されています。

Aeolian (2005)

 約1年ぶりとなる2ndフルアルバム。実際は前作と同時期に録音されており、2枚組でリリースされる予定であったとか。また、本作からMetalBlade Recordsと契約しております。なんと数少ない国内盤が出ている作品のひとつ。全作品中で一番激しい作品なのに。

 ”オレたちが一番に残忍だった頃”。本作もテーマがあるわけではないですが、わたしが勝手につけるとそんな感じのキャッチ・コピーになります。大義名分は破壊で成り立っているといっても過言ではないといいますか。地獄をクリエイトするかのようなブルータル・メタルサウンドのオンパレードとなっています。

 実際に前作『Fluxion』よりも生々しくて攻撃的。MeshuggahからOPETH、Converge(今回、ゲスト参加してます)に至るまでの影響をまとめ上げ、ゴリゴリの激烈サウンドを生み出しています。この頃はブレイクダウンとかグラインドコアに通ずる瞬間の鋭利さもあって、手加減はない。といっても構成比率はだいぶ低くなりましたけど、空気を変えるストリングスは組み込まれています。

 特筆すべきはTomas Hallbom(BREACH)、Sean Ingram(COALESCE)、Nate Newton(CONVERGE)などを中心に6名のゲスト・ヴォーカリストたち呼び寄せられていること。そんな凄まじいファイヤー・フォーメーションで叫び散らかすのだから、本作でも悪夢を見るほかにありません。#1「The City in the Sea」から続く粉砕の時。容赦という言葉自体が存在しないのです。

 そんな『Aeolian』は最も重々しく激しいマテリアルとして存在感を放っています。

Precambrian(2007)

 2年ぶりとなる3rdフルアルバム。バンドの描きたかった音楽性とコンセプト/芸術性が作品で合致するようになり、明確にコンセプチュアルなバンドとして躍進していきます。本作で取り上げるのは、地球形成の初期段階である【先カンブリア時代】です。だいたい46億年前~5.41億年前という地球の歴史の約90%を占める時代となります。

 その先カンブリア時代がまた3つに区分される。冥王代(46億年前〜40億年前)、太古代(40億年前〜25億年前)、原生代(25億年前〜5億4100万年前)。そんな地球の途方もない歴史を追っていく本作の手引きとして、いろいろ調べましたが学ぶにはちがくたす様が一番わかりやすかったです。下記に先カンブリア時代を勉強できるリンクを掲載します。

 本作は2枚組となっていて、DISC1がHadean/Archaean(冥王代と太古代)、DISC2がProterozoic(原生代)を表現したもの。そして、曲名がそれぞれ定義された”紀”と結びつき、曲が進むに連れて現代に近づいてくる(といっても5億年前までですが)。

 作風もDISC1とDISC2で大きく異なります。DISC1はそれこそ前作の延長線上。5曲約22分ほどを無慈悲なメタリック・ハードコアで徹底的に殴り倒してくる。速くて重くて激しい。『Aeolian』をコンパクトに凝縮したものといえるかもしれません。時間自体は短いですが、地球の形成や隕石衝突、生命の誕生といったトピックが爆撃のごとくサウンドの中で表現されています。

 DISC2は全9曲約1時間収録。長尺曲がメインであり、The Ocean Collectiveの作風/音楽性を印象付けた作品です。ISIS(the Band)、Godspeed You! Black Emperror、Meshuggah、OPETH辺りが組み合わさり、巨大な質感を伴ったオーケストラともいうべきサウンド。また、8,3点を獲得したPitchforkのレビューにして、”NeurosisのヘヴィネスとConvergeの鋭さに雰囲気のあるキーボードとストリングスが融合した”と評されています。1stフルアルバム『Fluxion』を格段にレベルアップさせた一大巨編として轟くもの。

 Caleb Scofield (Cave In)、Nate Newton (Converge)、Dwid Hellion(Integrity)、Tomas Hallbom (Breach)、Erik Kalsbeek (Textures)といったミュージシャンが参加。またベルリンフィルハーモニー管弦楽団の面々を加え、総勢30人に迫る大所帯で歴史が示す地球の激動のうねりを表現しています。The Oceanを体感するなら、まず本作がオススメです。

●参考:ちがくたす様 『地学基礎教室「先カンブリア時代」』

ちがくたす
地学基礎教室「先カンブリア時代」|ちがくたす 先カンブリア時代 地球の歴史は大きく「先カンブリア時代」と「顕生代」に分かれて、先カンブリア時代の方が古い時代です。 [

Heliocentric(2010)

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 2010年4月にリリースされた約3年ぶりとなる4thフルアルバム。同年11月に発売された5th『Anthropocentric』との連作。様々な哲学的、個人的な角度からのキリスト教批判をテーマにした2枚のうちの前半。こちらは太陽中心主義(地動説)をテーマにした作品となっています。現在のメイン・ヴォーカルであるLoïc Rossettiが本作から参加。

 彼の参加によるものか、The Oceanのカタログの中で一番にメランコリックな作風です。 Loïc Rossettiは過酷なスクリームをもちろん操りますが、本作では彼のクリーンヴォイスに焦点があたる。前任まではスクリーマー的なスタイルのVoばかりだったので、彼の加入は明らかに歌の表現力を上げており、バンドのスタイルに影響を及ぼしています。#4「Ptolemy Was Wrong」のようなピアノが主導するバラードは、以前までのThe Oceanからは想像もつかない曲です。

  Loïcの表現を活かすこと、それに伴ってバンドが持つ静の部分が厳かに爆発しています。ピアノやストリングス、エレクトロニクスとのメロディックな調和が成されており、丁寧なオーケストレーションのように美しさと哀感を際立たせている。しかしながら、鉛色の暴風雨が打ち付けるかのような激しいサウンドも当然ある。それが大河のような時間軸の中に混在しています。

 作品自体は地動説、つまり地球が太陽の周りを回転するという考えがキリスト教にどのように影響を与えたかに焦点を当てています。キリスト教においては、地動説は神の偉大さを否定するものと考えられている。そういった背景がある中で本作では、ガリレオ・ガリレイとコペルニクスの発見を取り上げ、地動説を唱えて火刑に処したジョルダーノ・ブルーノについて書き、ダーウィンの進化論とリチャードドーキンスによる考察を参照する。教会を燃やさない方法で宗教の在り方に疑問を投げかけているのです。

 また本作には彼等の代表曲であり、ライヴで重要な場面を任される#2「Firmament」を収録。メロウで壮大なポストメタル曲として、その轟音と豊かなヴォーカリゼーションに導かれます。また、組曲形式で表現される#9「The Origin of Species」~「The Origin of God」の12分は、前作『Precambrian』のスケール感に迫る。 Loïcの加入を経た本作は、新しいダイナミクスを得た作品として歓迎されるべきものでしょう。

Anthropocentric (2010)

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   2010年11月リリースの連作第2弾となる通算5枚目。後編となる本作でもキリスト教原理主義と創造論への批判という側面は変わりませんが、こちらは”人間中心主義”がテーマであり、「宇宙における人間とその居場所」に置いているともいう。

 アルバムには「The Grand Inquisitor」と題された3つの曲が存在しますが、これらはドストエフスキーの小説『カラマーゾフの兄弟』の同名の章に着想を得たもの(無神論者のイワンと修道士のアリョーシャの会話)。他にもニーチェや前作にも登場したリチャード・ドーキンスを参照に、宗教への疑問を投げかけている。

 音楽の方に話を戻すと、表題曲となる#1「Anthropocentric」から豪胆なスラッジメタルが轟き、甘美なポストロックを継承しながら、再び騒々しい終わりを迎える9分間を展開。このスタートが示唆するように全体を通してもメタル度は高まっている印象はあります。#3「She Was The Universe」や#9「Heaven TV」も激しく重く進撃し、海をも燃きつくそうとせんエネルギーを感じるところ。

 サウンドの激しさの比率が上がっているにつれ、今回は Loïcの苛烈なスクリームの方に焦点はあたる。しかしながら、前作で聴かせたメロウな歌い回しはフックとして効いています。#4「For He That Wavereth…」や#8「Wille zum Untergang」も静けさの中でメロディックに落とし込まれる。Porttisheadを彷彿とさせる#6「The Grand Inquisitor III」はストリングスと女性ヴォーカルで綴られていて、新しい要素として機能していいます。

 本作は、『Precambrian』と『Heliocentric』の両方で示したスタイルのギャップを埋めるものであって、前編となる『Heliocentric』とコントラストを成していると言えます。前作よりも確実に激しさを伴っているので、初期からのファンも納得するはず。”Thinking Man’s Metal”をフォローアップする音とコンセプチュアルな内容に惚れ惚れとすることでしょう。

Pelagial(2013)

 約3年ぶりとなる通算6枚目。”深海の底で見る奇跡”。ついに自らのバンド名である【海】をテーマに据えた作品です。”Pelagial”は海の深さ/層を表すという漂泳区分帯(英語:でpelagic zone)からきていると思われる。参考資料:wikipedia漂泳区分体

 全11曲55分収録の本作は、ミックス/マスタリングにOpeth、Ihsahn、DIR EN GREY等を担当した経験を持つJens Bogrenを起用。ちなみにRobin Stapsが運営しているのがあの”Pelagic Records”です。

 #1「Epipelagic」からラストに置かれた#11「Benthic」までの曲名は、そのまま海の深度を表しています。アルバムが進行していく = 海底に潜行していくことを意味しており、海面から真っ暗な最深部までの旅が含まれている。歌詞はアンドレイ・タルコフスキー監督の1979年のSF映画「Stalker」にインスパイアされているそう。ドイツ映画『Das Boot(邦題:U・ボート)』における潜水艦からの参照もあるとRobin Stapsは語ります。

 音楽的には『Anthropocentric』をさらにプログレッシヴ・メタル化させた印象があります。Mastodon辺りは比較対象になりそうですが、彼等よりはドゥーム~ポストメタル、デスメタルといった要素が緻密に加えられています。そして、アンビエントやクラシックへの遷移も滑らかであり、『Precambrian』期よりも音の変幻自在・縦横無尽の出し入れの仕方は極まっている。

 気品ある鍵盤とストリングスによる小インスト#1「Epipelagic」、Red Sparowesを思わせる美しい海を紡ぐ序盤からメタリックなサウンドへとシフトしていく#2「Mesopelagic」の2曲は物語へ引き入れます。深く潜れば潜るほど、海の特性と同じように作品も重さと圧を増しますが、彼等の持つ幽玄な美しさは織り込まれている。バリエーション豊かに変転していく曲と共に、海洋の持つ多彩な表情と奥深さを知ります。実際に水中の音や古い潜水艦映画からのサンプリングで曲間を繋いだりもしている。

 特筆すべきは3曲にまたがる#3~#5「Bathyalpalegic」。美しい交響曲の装いからエクストリーム系メタルへと発展し、苛烈さとスピードを伴って聴き手を制圧します。緩急と静動の見事な折り合いから生まれる即効性と遅効性の衝撃は見事。さらに最終到達地点となる終曲#11「Benthic」では水中、それは苦しい状態になる深海ドゥーム地獄へ。実際にあるゾーンを超えると圧力は1000倍以上になるそうですが、その重苦しさは身をもって疑似体験することができます。

 11曲及んだ深海の旅路『Pelagial』は、彼等の最も概念的なアルバムとリリース元のMetalBladeは謳います。その言葉を裏付けるようにロックメディアのLoudwireでは”2013年のベストメタルアルバムで第3位”に選出。さらには同メディアは2010年代のベストメタルアルバム66にも選んでいます。

 また、Rock Sound誌は”移り変わるムード、二項対立の影響、そして地球の最も深い海底に向かって沈むことを音楽的に擬人化した映画のような賛歌”と評している。

Phanerozoic I: Palaeozoic (2018)

 約5年ぶりとなる7枚目。2年後に発表された8thアルバムとの連作。こちらの作品は10年ぶりに国内盤が発売されており、あのP-VINEから出ています。『顕生代~破壊と創生 第一部:古生代という邦題を添えて。ミックスは前作から引き続いてのイェンス・ボグレンが担当。

 作品としては2007年作『Precambrian』の続編に位置付けられます(あの頃のメンバーはRobin Staps以外は総入れ替えしてますが)。タイトルは“Phanerozoic = 顕生代”。 顕生代とは《肉眼で見える生物が生息している時代》を意味します。さらに三つの時代【古生代】【中生代】【新生代】に分類されます。

 本作では、「約5億4100万年前から約2億5200万年前までを表す地質時代の古生代」を取り上げています。現在の生物が陸上に進出した時代だという認識で良いという。もう頭が痛いと思うので、下記に参考リンクを掲載します。Precambrianの時と同じサイトです。

 全7曲収録。不穏なピアノに導かれる#1はタイトル通りに、カンブリア時代の爆発を書いた序章的インタールード。以降の6曲において古生代のそれぞれの”紀”と結びつきます。#2「カンブリア第2章:永劫回帰」では轟音系スラッジ~ポストメタルの系譜に連なりながらも、疾走パートを少々盛り込みながら聴き手を制圧しにかかる。#3「オルドビス紀:ゴンドワナ大陸の氷河化」は強烈な重低音の中でグロウルとクリーンヴォイスが煽動。

 #5「デボン紀:新たなる創生」においてはKATATONIAのJonas Renkseが参加。にも関わらず起伏が少ないアンビエント~スラッジ耐久マラソンとなる10分なので、なかなか彼のゲスト参加を目当てで買うのは難しいところはあります。

 全体を通しても07年作『Precambrian』の頃を思い出させる、静と動がわりとくっきりとしたスタイルかなという印象です。ポストメタル~スラッジメタル要素が強く、OpethやMastodonとも比肩するプログレメタル色の強かった前作とはまた違う感触。ピアノとか電子音楽は重層的に彩る中で効果的に使われています。

 スラッジメタルの圧とハードコアの焦燥を叩きつけながらエレガンスに施された終曲#7「ペルム紀:大量絶滅」では、地球の生物95%ほどが滅亡したとされている古生代末の大量絶滅を描いています。相変わらずコンセプトとサウンドの密度に頭も耳も圧で痛くなること必至。

 なお、本作リリース後から約1年。彼等はついに日本の地へ降り立つことになります。2019年10月の下北沢ERA公演、わたしも足を運びました。音源の理知的かつ構築美よりも、ハードコアの生々しい情感の迸りがあって彼等もRosettaと同じく熱いライヴをする方々だなと驚かされました。

● 参考:Marunouchi Muzik MagazineさまのRobin Staps氏へのインタビュー。

Marunouchi Muzik Magazine
NEW DISC REVIEW + INTERVIEW 【THE OCEAN : PHANEROZOIC Ⅰ: PALAEOZOIC】Marunouchi Muzik Magazine | Mar... EXCLUSIVE: INTERVIEW WITH ROBIN STAPS OF THE OCEAN !! "I Don't Have Any Delusions That Music Could Have a Real Direct Effect On Environmental Policies, But We C...

● 参考2:ちがくたす様『地学基礎教室「顕生代」』

ちがくたす
地学基礎教室「顕生代」|ちがくたす 顕生代について 地球の歴史は大きく「先カンブリア時代」と「顕生代」に分かれて、顕生代の方が新しい時代です。 [capti

Phanerozoic II: Mesozoic / Cenozoic (2020)

 約2年ぶりとなる8thアルバム。前作の続編。本作は顕生代の中生代(約2億5200万年前から約6600万年前) 、新生代(約6600万年前から現在)をコンセプトに据えています。端的にいえば中生代は恐竜等が繁栄した時代、新生代が哺乳類時代。本作は#1~#2までが中生代、#3~#8までが新生代にあたります。そんな全8曲約50分収録。

 前作では、個々の楽曲間に強い結束力と合理性を持たせたかったそうで、アルバムを通してある種の雰囲気を重視したとバンドの頭脳・Robin Stapsは語ります。逆に本作はもっと奇抜でプログレッシヴな方向へいきたかったという。中生代を表した2曲は#1が8分半、#2が13分半と共に長尺プログレの要素が濃い。逆に新生代の曲は長くても6分台で平均4分に抑えられています。

 中生代を表した曲で目玉は、前作に続いてKATATONIAのJonas Renkseが参加した#2「Jurassic | Cretaceous」でしょう。特に目まぐるしい変化に富む曲であり、トライバルなリズムを主体にして、ジュラ紀~白亜紀の荒れ狂う地の変遷と大量絶滅が描かれます。金管楽器や電子音による緊迫感、激情型のスクリーム等で彩られながら、後半で重轟音がピークに達する。その様は史実とされる小惑星の激突、ゆえの生物全体の危機を描いています。

 過酷な序盤2曲を抜けると、アルバム自体はスムーズな流れに落ち着いていきます。重苦しさでは随一の#3「Palaeocene:暁新世」では準レギュラーとされるBreachのヴォーカル・Tomas Hallbomが加勢。途中、アンビエントの静けさが訪れるも次第に重低音によって空間は圧迫される。それ以降は、ポストロックの美麗やエレクトロ・インストを挟むも、生物を絶滅危機に追い込むスラッジとプログレメタルの地殻変動は続きます。

 現代に近づいてきた#7「Pleistocene:更新世」では残忍なブラストビートを持ち寄って一番過激に畳みかける。終幕に置かれた#8「Holocene;完新世」は1万年前から現在までを示します。ストリングスアレンジ、哀愁のある艶やかなヴォーカリゼーションが肝になっていますが、その煮え切らなくどこか不穏なグルーヴの中で終わりを告げるのが、今の世を表しているのか。この曲は、Cult Of Lunaの「Passing Through」を彷彿とさせるような大人の情緒があるように感じます。

 歌詞についてはニーチェのアモール・ファティ=運命愛の意を持つ哲学観を持って書かれているそう。惑星規模の衝突も大量絶滅も運命のもとで必然だったということでしょうか。循環する地球の歴史において彼等なりの警告を発している作品です。

 2021年11月末には『Phanerozoic』の世界観をまるごと体感する『Phanerozoic LIVE』がリリース。Part ⅠとPart Ⅱそれぞれ別ライヴを収録していますが、彼等の生々しい表現を味わうことができます。

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