This Will Destroy You、轟音系からの深化

 アメリカ・テキサス州サンマルコス出身のインストゥルメンタル・バンド4人組。静から動への幅広いレンジのある展開を主体としたスタイルで活動初期から人気を獲得。

 05年のデビュー作『Young Mountain』が海外紙の”Top 50 Instrumental Albums of 2005″に選出されたのをきっかけに世界的評価を高めます。

 以降は徐々にエレクトロニクスやドローンといった手法を取り入れ、3rdアルバム『Tunnel Blanket』から自身のサウンドをドゥームゲイズと評するようになる。これまでに全7間のフルアルバムをリリース。

 本記事では全7枚のフルアルバムについて書いています。

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目次

Young Mountain(2006)

   1stアルバム。全6曲約36分収録。当時、地元の大学生だった彼等がデモとして販売していましたが、Magic Bullet Recordsの目に留まって商業的リリースに切り替えられました。

 初期から真っすぐに人々の胸を打ち抜く轟音インストが持ち味で、Explosions In The Skyのようにドラマティックな静から動への切り替え、シンプルな構成が肝。#4「Grandfather Clock」ではアルバム・リーフ辺りを思わせる鍵盤による装飾を含みます。

 ですが、純度の高いメロディやノスタルジックな旋律が折り重なり、圧力を高めながら美しい轟音へと発展していく様は圧巻。

 特に5分にも満たない尺で激しく美しい音楽の神秘を体感させてくれる#1「Quiet」は素晴らしい。同曲はESPNのドキュメンタリー映画『The Fab Five』で使用され、#3や#6も映画の予告等で使われています。

This Will Destroy You(2008)

 2ndアルバム。全7曲約51分収録。轟音系ポストロックの真髄を堪能できる1枚。プロデューサーのジョン・コングルトンとのタッグはここから続いていきます。

 本作は静から動へと順当に移行する曲がほとんどで、前述のEITSや初期Mogwaiの流れを汲む。切ないメロディと力強いリズムは昂揚感を高め、猛り狂う轟音によって恍然とした感覚に陥る。そこに絡む電子音やストリングスもまた見事な輝きを放っています。

 特に#3「Threads」はバンドの代表曲であり、フィードバックの轟きは先人たちを凌駕しようとする。また#7「They Move on Tracks of Never-Ending Light」は2010年の冬季オリンピックで使用されたり、トレヴァー・モーガン主演映画等で使われたこともあって、Spotifyでバンド史上最も多い再生回数(2600万回)を誇ります。

 わたしにとってTWDYといえば本作が最高傑作

Tunnel Blanket(2011)

   3rdアルバム。全8曲約60分収録。本作はSuicide Squeezeに移籍しての作品。本作は”死”をテーマにしたということで、ダークな風合い。ドローン寄りの音楽で構成されていて、轟音ポストロックと単純に表現できるバンドではなくなりました。

 静と動のクレシェンドは薄まり、孤独なうねりが存在する。息が詰まるほどの緊迫感の中、荘厳で重たいサウンドスケープを丹念に練り上げています。各曲がトラック分けされてますが、壮大なストーリーを1時間超かけて奏でているようであり、GY!BEやMONOのような重たい終末観と心が痛むほどの悲劇的な美しさを表出。

 さらにはTim HeckerやYellow Swansを思わせるノイズにも勇ましく足を踏み入れます。それらが哀しみの底から浮かび上がる生命を表現しているようでもあり、暗い現実に打ちひしがれる姿を表しているようでもある。

 なお、本作のスタイルについてドゥームメタルとシューゲイザーを掛け合わせた“ドゥームゲイズ”とメンバーは謳っています

Another Language(2014)

 4thアルバム。全9曲約47分収録。本作はBandcampのリリース・インフォによると”バンドとメンバー自身の両方が壊れる恐れがあった長期の空虚な暗黒時代からの、彼らの高潔な帰還を意味しています“と記述される。

 前作で表現したドゥームゲイズの重苦しさは薄れ、1st~2nd辺りのスタイルへ回帰した曲が多く含まれます。そして、電子音の活用がさらに顕著になりました。

 静から動へと幅広いレンジで骨抜きにする#1「New Topia」を皮切りに、#2「Dustism」でTWDYのモテ要素をフル活用したメランコリックなインストを展開し、#3「Serpent Mound」にてこれまで以上にパワフルでエネルギッシュな瞬間を持続。明確にもたらされる歓喜は、それこそバンドに強く期待されたものでしょう。

 中盤以降は実験的なアプローチが増え、#6「Mother Opiate」にはドローンの小波が立ち、#7「Invitation」にはリズミカルな反復が躍動感を生み、ビートレスでゆったりと移ろい行く#9「God’s Teeth」で心地よく意識を蝕んでいく。

 回帰と地続きの表現でエレガントなトーンとダイナミクスが連帯した佳作

Suicide Squeeze
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New Others Part One(2018)

 5thアルバム。全7曲約38分収録。2016年にリズム隊2名が交代しての制作。タイトル通りに連作となる第1部です。『Anohter Language』と同様に”回帰と連続性”を示す。

 全曲を4~6分台とまとまった尺に収め、電子音によるテクスチャーが以前よりも幅を利かせているのが特徴。『Tunnel Blanket 』ほどではないにしても内省的で繊細な表現に踏み込んでいる印象で、交代したリズム隊がもたらす加速と躍動が本作では良い味をもたらしています。

 特に#3「Syncage」はそれを最も示した彼等のこれからを担う楽曲。キラキラなシンセとパワフルなドラムが牽引する#1「Mental Jubilee」、電子音の海を漂う#4「Allegiance」辺りでも変化の兆しを見せています。

 しかしながら、締めくくりとなる#7「Go Away Closer」がまばゆい光の海を航海するかのようなTWDY流ストレートなポストロックを提示。続編となる次作への期待を大いに膨らませて第1部を終えています。

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New Others Part Two(2018)

 6thアルバム。全7曲約40分収録。連作となる第2部。冒頭を飾る#1「Sound of Your Death」の力強さと疾走感に度肝を抜かれます。珍しい”ラウド”といえる表現に近い荒々しいハードコア感覚が宿る。続く#2「Lie Down In The Light」も大音量ノイズが体にも心にもまとわりついてきます。

 中盤に配置された#5「Cascade」はTWDY初期の薫りを漂わせるポストロックの良心といえる曲。ミニマル~アンビエント的なアプローチもあれば、少し速足とはいえドゥームゲイズは健在ですし、エレクトロニクスも多用。第1部同様に幅広いラインナップが揃います。

 前章と比べると弾けたという印象があり、エネルギッシュにアップデートしたと表現できるかもしれません。近作と比べても音自体が内よりも明らかに外に向いているように感じられます。

 ラストには11分30秒にも及ぶ#7「Provoke」が控え、ためて解き放っての轟音ポストロックを経ると残り4分は電子音が揺らぎの時間を紡ぎ続ける。

 しかしながら、2部構成にした意図はわからず(インタビュー等は見つけられなかった)。1部は回帰と連続性の中で丁寧にまとめあげ、2部はよりパワフルな魅力があります。

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Vespertine(2020)

 7thアルバム。全7曲約58分収録。LAにあるミシュラン2つ星の高級レストラン”Vespertine”の音響面でのプロデュースを務めた作品。2017年後半の同店のグランド・オープン以来、その場所でしか聴けない音源でしたが、リリースされました。本作はレストランのためのサウンド・トラックですが、オリジナル作としてカウントされています。

 曲名はエントランス、キッチン、ダイニングルーム等が並び、レストランとしての空間や調理やメニューなどのイメージを落とし込んでいるそう。基本的にノンビートで構成されていてアンビエント~ドローンがメイン。鋭角性や重量感は薄く、ギターやエレクトロニクスの柔らかな音色が層を成していく。

 食欲をそそる音楽ではないかもしれませんが、聴いていて同店での食事風景を想像したくはなります。#3「Kitchen」は温かみのある雰囲気を生み、#6「Exit」にて食事を終えて帰るときの幸福感で満ちた表情が浮かぶ。

 ラストは21分にも及ぶ#7「Garden」はepic45を彷彿とさせる仕上がり。消化と昇華、食による充足感を増幅させる音絵巻。

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