akutagawa ‐‐Review‐‐

2001年に山形にて結成されたエモーショナル・ロックバンド5人組。現在までに3枚の作品をリリースしている。

レビュー作品

> dawn > 君と僕


dawn

dawn (2011)

 結成10年を迎え、自らが立ち上げたレーベルALPINISTAよりリリースされた5年ぶりの通算3枚目の作品。ファンからすると待っていた甲斐があると思わせる作品だろう。それほどの6曲40分が収録されている。

 自らの持ち味である叙情性を強化しているのを肌に感じる作品で、より丁寧に編み込まれたドラマティックな構成、拡がりと凄みを増したスケール感がグッとくる。前作より軟化した柔らかなメロディを奏でながら綴っていくツインギター、ミドルテンポながらハードコア譲りの強靭なグルーヴを生みだすリズム隊、そして時に包み込むように、また時に刺さるように鼓膜に響くリアルな感傷と独特の雰囲気を生みだす詩を歌いあげるVoが重なって、akutagwaの世界観を造形。ポストロック的な空間へ拡がっていくギターが顔を出すようになる一方で、剛球をビュっと投げ込むようなアグレッシヴさも忘れずに盛り込んである。全体としては強まったように感じる叙情性が肝と感じるほどで、混沌とした要素が薄まって整理された印象からおそらくそう感じるのだろう。けれどもエモーショナルな演奏や歌からはピュアな情感も放つようになっているのが新鮮で、作品の持つ豊かな物語性も引き出されているように思う。力強い出足から一転して蒼いエモーションと共に哀切と鳴り響く#3「陽が沈む」は特に彼等の成長を感じた。

 前作の「徒花」を超えるものこそないが、トータルとしての完成度が高まったように思う。美しい旋律が咲き乱れる#5「ラストダンス」から11分にも及ぶ儚くも力強いドラマが紡がれる#6「夜明け前」は全心で受けとめたい感動的な締めくくり。5年という歳月の間には活動休止やメンバー交代も経験し、活動再開後はAs meias、Z、LITE、LOSTAGEといった国内バンドから海外バンドに至るまでの対バンをこなしてきた。その経験値が存分に還元された渾身の作品に仕上がっている。前作のレビューでも書いたとおりに一味違ったエモーショナルで感動的なこのサウンドは万人に受けとめてほしいものだ。


kimitoboku

君と僕 (2006)

 シングル?ミニアルバム?と解釈はそれぞれのサイトによって異なる2枚目の作品。4曲43分という構成もさることながら、静と動をエモーショナルかつダイナミックに行き交うスケールの大きさで聴き手の心を締め付ける。軸となっているのは繊細に哀愁を織り込むツインギターとハードコア譲りの強いグルーヴで、それらが楽曲をゆったりと綴っていく。そして、文学的な薫りのする詩を感情をこめて歌いあげ、ポエトリーリーディングを入れながら作品に独自の情感と深みをもたらしている。こんな感じなのでenvyを引き合いに出したくなるところ。叙情的なメロディに独特の感性を持つ詩世界、バーストする轟音など共通点は多いし。けれどもポストメタル的な要素は薄く、むしろもっとエモーショナルで混沌としており、それ以上に歌心も感じさせる。若さゆえの焦燥感、危うさ辺りも魅力に感じる始末で、その世界観に聴きいり連れ去られてしまう事もしばしば。本作では特に#4「徒花」が凄まじく、ここまでの3曲を布石に用いたかのような感情一杯の力強い絶唱からカオティックな演奏へと雪崩込む。そして美しさすらも感じる轟音クライマックスへ。8分以降は15分にも渡って静かなギターの音色だけが反芻し続ける恐ろしき楽曲だ。これまでのシーンと比べると一味違ったエモーショナルで感動的なサウンドを鳴らすこのバンドは、独特の立ち位置で戦っていけそうで、非常に楽しみな存在である。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!

スポンサーリンク


▼ フォローする