心と魂の最も深い部分を通過する厳美の旅路 A Swarm Of The Sun『The Rifts』

Erik NilssonとJakob Berglundの2人から成るスウェーデンのポストロック/メタル・バンド。デリケートな音響意匠から壮大なストーリーを奏でている。2015年初頭に4年半ぶりのフルアルバム『The Rifts』を発表。本記事はその感想となります。

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The Rifts(2015)

 スウェーデンのポストロック/メタル・バンドの約4年半振りとなる2rdフルアルバム。Erik NilssonとJakob Berglundから成る2人組で、本作では他に5人のサポートが参加。ミックスとマスタリングは、同郷の重鎮であるCult of LunaのMagnus Lindbergが務めている。

 海底神殿で巫女が祈りを捧げているような厳かなイメージが浮かぶような、重厚でシネマティックな作品です。彼らの音楽は、荘重なピアノや淡いギターのエレガンスな響きを軸としたインストを基調に、ここぞという場面だけ出てくるヴォーカルが渋い歌声を重ねていくのが特徴です。

 スラッジメタル風のリフで稀に地鳴りを起こしつつも、デリケートな音響の意匠で美しい物語を奏でる。例えるならCult of Lunaの傑作『Vertikal』からスラッジ色を薄めて野獣の雄叫びを無くし、ポストクラシカルやサントラの要素で1ヶ月程じっくりと漬け込んだ感じでしょうか。さらに海外のレビューを見ていると、ダークでメランコリックな音像からKatatoniaを引き合いに出していることが多いです。

 なかでも9分に及ぶ#2「Infants」は、彼等の音楽性を1曲に凝縮したような印象を受ける楽曲である。ガツンとくる衝撃が薄いのは事実ですが、ポストロック/ポストメタルの上昇アプローチをメソッドに、重く美しい音像が聴き手の意識を一気に取り込んでいきます。

 他の楽曲にしても、近未来を想起させるプログラミングやクラシカルな音色が、鈍い煌きと厳かな空気感をもたらしています。さらに極めつけは10分を超える#8「These Depths Were Always Meant for Both of Us」。GY!BEやMONOのような悲しみと混沌の果てを見せる轟音響から、心身に染みこむような渋い哀愁を残しながら終わっていく、一際インパクトの大きな楽曲となっています。

 ちなみに本作は、「心と魂の最も深い部分を通過する厳しくて美しい旅路であり、バンド史上で最も暗くて最も感情的なアルバム」とBandcampで記されています。確かに映画に匹敵するストーリーが詰め込まれた作品です。

 しんみりと儚い余韻に浸れること、また物悲しさに締め付けられるような感覚がとても良いです。ちなみに私は本作をBandcampで購入したが、再生していて曲ごとにアートワークが変わっていくことにも驚かされた。こういった細かな部分の表現の徹底も、彼等の美点なのでしょう。

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