Caina –Review–

Andrew Curtis-Brignell氏によるイギリスのポスト・ブラックメタル独りプロジェクト。

レビュー作品

Hands That Pluck > Temporary Antennae


Hands That Pluck

 Hands That Pluck(2011)

   Andrew Curtis-Brignellによるポストブラックメタル・プロジェクトの3年ぶりとなる4作目。前作では叙情的な旋律や轟音ギターによる組み立てを主体に、ブラックメタル成分がスパイスとして加えられたようなポストロック/シューゲ寄りの作風であった。いかにもProfound Loreが好みそうなポストブラックといえば伝わりやすいかもしれない。amazon.comでは”mix of Burzum, Mogwai and The Red House Painters”とか表現されてて驚くし(笑)。

 しかしながら、本作はブラックメタルとしての狂性と苛烈さを引き出したもので、表層から受ける叙情的な色合いは薄まったように思う。#1の禍々しい疾走とプリミティヴな狂気をさらけ出したサウンドには別のバンドかと焦ったぐらい。黒々しい邪気のこもったロウな絶叫や凄まじいブラストビートを駆使した暴虐パートはかなり振りきれている。この破壊力の増大はこれまでと違ったファンの感性を大いに刺激する事だろうと思う。それでも神秘的なキーボードによる演出やトレモロやメロディの挟み方はこれまでの叙情感は示しており、#2における美と醜が壮絶に渦巻く展開力には舌を巻く。#8辺りでは前半にトラッドな感触も醸し出しているし、全体的に暴虐性が増したことが起伏に富んだ形で1曲が構成されているので、深度とドラマ性をより豊かなものにしたといえる。ミステリアスな2分台のインタールードもコンセプチュアルな作風を高めており、Ulverのような創造性も持っているのではないかと感じたりも。まあでも個人的に一番好きなのは、哀しみの底を漂っているような儚いポストロックを奏でている#4だったりするが。そして、前作の方が好みの作風であったりする。

 ちなみに本作は2枚組で、DISC-2の方には新曲や過去曲のリマスター音源やNICOのカヴァーを収録しており、こちらではメロウな作風が楽しめる。


Temporary Antennae

Temporary Antennae(2008)

   イギリスの独りブラックメタル・プロジェクトの3rdアルバム。昨今、ポストロック・シューゲイザーとブラックメタルのクロスオーヴァーがかなりお盛んになってる気がするが、このCainaもそういった類の属す存在だ。暗澹たる精神の病みとたおやかな美しさとメランコリーが交錯しあっている。基本はブラックメタル的な激しさと重みを所々で仕掛けとして残しつつ、大枠はポストロック/ポストメタルで埋めているような印象。この美しく気品溢れる感じと闇の混成具合にどこか夢中夢を思い出したり。ただ、そのことからもお分かりいただけると思うが、残忍さや禍々しさといったものを期待すると確実に肩透かしを喰らうことになる。聴いてて思ったのは、郷愁を駆り立てる繊細なメロディとアコースティックな調べなんかは、Alcestに相当影響受けてるのではないだろうかということ。暗さや悲壮感を漂わせているが、決して絶望に堕ちることはなく、その儚さや叙情性に心を動かされる。幻想的なトレモロや神秘的なキーボードが入ってくるのにも耳を奪われるし、シューゲイザーライクな轟音もグッド。後半はもうシガーロスみたいな明るさが垣間見れるのもおもしろい。しかしながら、#4ではブラックメタルの業火を聴き手にアピールしてくれる辺りは嬉しいところ。こういった楽曲の間口の広さもこの作品の多彩さを物語っているといえるだろう。というわけで本作はブラックをお好きの方よりも、むしろNadjaやRed Sparowes、果てはNeurosisといった方々のファンにこそアピールできそうな作品だと思う。

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