cali≠gari ‐‐Review‐‐

90年代から様々な紆余曲折を経て活躍を続ける超異能派音楽集団3人組。メンバー個々のぶつかり合いが生み出すアイデアと独創性に溢れた楽曲は、昭和歌謡からテクノ、ニューウェイヴまでを鮮やかに行き来し、各分野から称賛を集める。

レビュー作品

> 12 >2 > 1 > 春の日 > 11 > 10 > グッド・バイ > 8 > 第7実験室 > 第7実験室予告版~マグロ~ > 第6実験室 > 再教育㊨ ㊧ > ブルーフィルム


 

12(狂信盤)

12(2015)

 2014年9月を持ってドラムの武井誠が脱退。残る3名で再スタート、”第8期cali≠gari”として制作された3年ぶりのフルアルバム。本作でメジャーレーベル(日本コロムビア)に復帰。代わりのドラムには、Tetsu(D’ERLANGER)、SATOち(MUCC)、上領亘(NeoBallad)、スタジオミュージシャンの中西祐二と複数人が参加する形が取られた。また、ライヴでお馴染みの秦野猛行氏やyukarie氏も参加している。

  それにしてもcali≠gariのアルバムの最初の方の曲で、「死ね」という単語が入っていることで覚える妙な安心感(笑)。青さん自身が「踏み絵」と評する妖しくグルーヴィな#1「わるいやつら」で「死ねばいいのに」と吐き捨て、BPMが260を超える#2「脳核テロル」で過激×カゲキに序盤から攻めこんでくる。屈折した遊び心を持ってリスナーをかき乱す、相変わらずKAWAiiオッサンたちだ。しかしながら、80’sを手引にしてJ-POPとニューウェイヴをグラマラスかつエッジィに昇華するエンターテイメントの痛快さよ。懐かしみを持った哀愁のシンセポップ#4「セックスと嘘」、トランシーでアッパーな#5「トゥナイトゥナイ ヤヤヤ」、切ない青春回想チューン#11「あの人はもう来ない」とcali≠gariらしさが出まくっている。しかも4人のドラマーの個性を上手く落とし込んだ形でだ(個人的には、鋭く荒い衝動が引き立つ#2のSATOちのドラムが印象的)。

 そして、ライヴでよく口に出している「アダルト・ヴィジュアル系(略してAV)」の側面が強化されたのも特徴だろう。yukarie氏の情熱的なサックスがジャズファンク~シティ・ポップ的な要素を盛りつけたことで、これまでの派手なインパクトがさらに二段階ぐらい上にいった感じがある。これが二十歳セカンドシーズンを迎えた人たちの多いバンドのお茶目オッサン・ヴィジュアリズム。これが素敵なAVの時間。特に真夜中の高層ビルを突っ切って行くような#6「ギムレットには早すぎる」のカッコよさには痺れた。そして、文化系集団なのに無理してヤンキー用語を使いまくった#8「紅麗死異愛羅武勇」の体育館裏に呼び出されての横の揺さぶりも面白い。

 カントリー調のギターが軽やかな印象を残す歌謡ナンバー#12「さよならだけが人生さ」のラストには意表を突かれたが、締めくくりには敢えてこの曲でなくてはいけなかったということなのだろう。円熟なんて言葉で簡単に済ませられないcali≠gariの底なしの才が発揮された、大人のクレイジー・ギリ・ポップス集。お見事。第8期もとりあえず安心ですね。

 


 

2 ※正式表記は「2」を左右反転となります。初回プレス限定盤・特殊ブックレット仕様

2(2013)

 7月にリリースした『1』に引き続いてのセルフ・カヴァー作品。その『1』では、 「-187-」や「37564」や「サイレン」等を中核に据えて、バンドの中で最もアングラで奇怪なハードコアの部分を表現していたのが記憶に新しい。対して本作では、当時のcali≠gariにニューウェイヴやエレクトロニカといった新しい要素を持ち込んだ石井さんの作詞・作曲した5曲を収録。

 帯には「鮮やかな色彩を拡散する、心ないエレクトロニカ——。」という言葉が綴られているのだが、どこか皮肉めいた中に軽度のポップさがあった#1「その行方、徒に想う…」から電子音の鮮やかな煌きを押し出す事で、大胆な変化を遂げている。前述したように全てが石井さんの楽曲ということで、予想していた通りにエレクトロニカ色を強化して石井ワールド全開。#2 「ギャラクシー」みたいにギターロック色が強い楽曲にしても、勢いを殺さない形でエレクトロニカの洗礼を受け、さらに「マス現象」の一部をドッキングするという荒技で再構築。

 非常にグルーヴィに構築しながらも哀愁のエンディングを持つ#3「かじか」、原曲の持つコミカルさを忘れることなく、電子音と共に一気にアップデートした#4「ダ・ダン・ディ・ダン・ダン」の変貌ぶりにも驚かされる。こう来たか!と思わず唸る場面は多いし、緻密な構築を施しながら遊び心といい意味での外しを忘れてない辺りは流石。石井さんを中心とした仕事ぶりに感服します。しかし、かなりGOATBED化してねえかという感想も抱いたが(笑)。

 一番びっくりしたのはラストの#5『虜ローラー』で、心地よい4つ打ちで美しいハーモニーを聴かせてくれたこの楽曲が、ゴージャスな打ち込み音と共にアッパーな曲調に様変わり。華やかにアゲてくる曲調が新鮮で心も体も踊ります。正直『1』よりも、現在のcali≠gariというフィルターを通して生まれ変わったという印象は強いし、個人的には5曲共に原曲よりも鮮やかに引き立っていて良いと感じている。程よいポップ感も備えているので、幅広い層にリーチできそうな逸品かと思う。


 

1

1(2013)

 

 結成20周年記念プロジェクト第1弾となる完全新録音のセルフカヴァー・ミニ・アルバム。既に『2』の録音も済ませているらしいんだけど(笑)、今回の「1」は本人も語るように”悪意の詰め合わせ”。cali≠gariの楽曲の中でもヤケクソで狂ったものが厳選して6曲収録されている。

 まずは冒頭を飾る#1「ギロチン」が収録時間を半分に縮め、約1分の中でも暴れるサックスとうねるベース、激しいドラムが荒々しく掻き乱す。続く#2「失禁」では原曲よりもやや整然とした音作りにはなっているものの、その狂気にブレはない。変わらずにひどく歪んだ精神状態に陥れるような楽曲である。

 そして、「死ね死ね死ね死ねー」「殺してやる殺してやる」の中二病丸出しの#3「-187-」へ。コミカルさすら感じられた原曲から、徹底的に荒くした曲調で悪意はより屈折している様に感じ取れる。ちょいとセクシーな気品とズレた感覚を持って突き進む#4「クソバカゴミゲロ」を経ると、いよいよガリスト興奮の#5「37564。」に突入。こちらも「187」と同様にコミカルな要素は削られ、重い狂気が開けてはいけない心の扉をこじ開けに来るから大変だ(苦笑)。

 なかでも個人的な目玉はラストを飾る#6「サイレン」。原曲よりもテンポを落とし、ドゥームメタルにも接近するヘヴィさを獲得し、なおかつ不穏なサイレンが強烈に鼓膜を劈く。また、石井さんと青さんの阿鼻叫喚ともいうべき叫びがあまりにも痛々しい楽曲に仕上がっている。

 全6曲で約14分はあまりにもパンクでハードコア。cali≠gari流の”狂いのススメ”をパッケージ化したイケナイ作品であります。間違ってもこれを入門盤として手にしないように(苦笑)。


 

harunohi

春の日(2013)

 

 タワーレコードとライヴ会場限定で発売された久々のシングル。1,000枚完全限定の7inchとCDの2タイプがあり、表題曲の『春の日』以外は、収録が違うのはヴィジュアル商法にのっとって(以下略)。今回は2曲収録のアナログ盤についてのみのレビューとなります。

 まずは青さんが作詞・作曲の表題曲の「春の日」。bounceのインタビューでは自身で「ひねりのないラヴソング」と仰ってますけど、この曲が物凄く良い。詩にも出てくる「桜闇」をキーワードに、別れ・出会いの桜色の息吹を感じさせる名曲です。程よいテンポの中で柔らかな電子音を巧みに散りばめ、アコースティックな曲調と優しいメロディが、青春時代のあの頃の自分に迫ってくる様に響いてくる。涼やかでストレートな曲調ではあるものの、豊かな起伏があり、ここまでセンチメンタルに聴かせるてくれるのは嬉しい限り。僕としては、かつての名曲群に匹敵する楽曲だと思っています。

 続いての「ウォーキング ランニング ジャンピング フライング」は石井さんの曲。こちらでは、BOOWY風のビートロックを意識しつつも、ちゃっかりGOATBEDの風情を乗せたような曲調で、春めいた温かさと軽やかな疾走感が実にいい。割とシンプルな曲調ではあるものの、リズム良く配されているシンセの音がまた柔らかく鼓膜を撫でるし、サビの「ウォーキング! ランニング! ジャンピング! フライング!」という部分も耳から離れそうにない。石井さんの狙いまくったポップさが強烈にすら思える1曲である。

 CDの方も買おうと思ったら、とっくに売切れてて涙。こちらは限定でないと思って油断していたのがいけなかった。ちなみにCDの方には、「春の日」の他に青さんが作詞・作曲した「ミッドナイト! ミッドナイト! ミッドナイト!」、岡村靖幸氏の「Dog Days」のカバー曲を収録している。


 

11(初回限定盤)(DVD付)

11(2012)

    2年半ぶりとなる復活2作目のフルアルバム。っていうか「活動休止の”休止”を宣言します」って(笑)。

 賞味期限詐欺でフラフラし続けるこの可愛いオッサン達(禁句)は、ここにきて最高な作品を作ってきましたよ。もちろん、彼等の作品にはいつも新鮮な驚きがあり、ちょいと毒のあるユーモアとアイデアが詰まった独創性溢れるものがほとんどだが、今回は4人による分厚いアンサンブルと創作性が絶妙にマッチしている。そして、石井秀仁と桜井青という二つの個が近作では一番バランスよく共存している印象は強く、それがcali≠gariらしさ、ひいては実験室時代の感覚にまで繋がっているかなと。とはいえ、#10「最後の宿題」は確かにセンチメンタルに響く青らしい楽曲であるが、電子音の絶妙な交錯がただの懐古ではない事を物語っている。ソロでの活動を還元し、それぞれが密なる融合を果たして、バンドとしての機能性を活休前よりしっかりしちゃうんだから凄いもんです、この人たち。

 混沌と妖しげな光沢を放つ#1「吐イテ棄テロ」からメタル系の攻撃性をひけらかす#2「JAP ザ リパー」で珍しく激しめに幕を開け、美しい電子音と歌がコミカルに跳ね、鮮やかに煌く#3「娑婆乱打」と作品は続く。この曲のPVもそうだけど、この序盤だけでも可愛いオッサンたち(禁句2回目)の弾けようが凄い。アイドル並のフレッシュ感から実験室時代のアングラっぽさまで醸し出しながら好き勝手やっちゃってる。しかも#7「初恋中毒」なんていうGOATBEDの時の渡辺美里のカヴァーよりもびっくりする、ロマンティックでちょっぴり恥ずかしい飛び道具も用意。奇抜でおかしなテンションなのに歌謡センス、ニューウェイヴィな装いもバッチリで、#6「アイアイ」のようにソリッドに叩きつける曲もあり。そして、ラスト#9「暗中浪漫」~#11「東京、40時29分59秒」の泣ける曲連発では、らしいような、らしくないような締めくくりだなと首かしげつつ、涙が零れます。

 時間の流れなのか、偶然の産物なのか、はたまた4人の歩みよりなのか。どれが要因かはわからないけれども、ここにきて4人が最高の化学反応をみせているのは間違いない。単なるありがとう再結成では終わらないクリエイティヴティとセンスの高さを見せつける本作は、個人的にも相当な好感触です。本当に最高!変てこりんだけど、こんなかっこいい事やってるバンド、他にいない。


 

10(初回限定盤)(DVD付)

10(2009)

   まさかまさかの6年ぶりとなるオリジナル・アルバム。まずは新作を届けてくれたことに涙である。

 思い出せば、活休前のオリジナルラスト『8』では石井という異分子(まあ、4人ともが異分子でその集まりなのは言うまでもないが)が完全に暴走してファンを突き放しまくる独壇場が前半から中盤にかけてあって、終盤では青がそれを必死に繋ぎとめる役をこなしてた感じだった。ファンにはベクトルが向いてなくて『8』は不評だったけど、俺は結構好きだったり。そんな前作、そして各々のソロ活動のフィードバックを踏まえてか、本作では4人の噛み合わせがよくなってバンドとしての音に洗練・ビルドアップが随分と成されている印象がある。GOATBEDの流れをそのまま引き継ぐようにチープなエレクトロニクスと近未来感に彩られながらも、バンドサウンドの骨格が随分とはっきりわかる内容。理解不能な部分も多かったコレまでと違ってバンドとしての確かな形をきっちり証明してくれている。

 ギターは激しいリフから優しいメロディを奏でたり、リズムを硬く締め上げる超絶ベースときっちり刻んでくれるドラムのコンビは期待通りのご活躍。歌メロはもろにGOATBED的だから気だるさとセクシーさの塩梅といったところだけど、らしくてよろしい。そんでもって、持ち味の昭和歌謡っぽいノスタルジーと青春の甘酸っぱさみたいなのはうすーく残しつつ、全体的にサラっと聴けるコンパクトな内容にまとめている。もちろん、楽曲はどれもがアルバムを形成するピースとして成り立ち、2つのシングル「-踏-」「スクールゾーン」を始めとして水準以上の佳曲は多数。初期におけるアングラな毒々しさは希薄なものの、聴き手の意表をものの見事につくユーモラスな仕掛けの多さは相変わらずだし、かつて無いほどのキャッチーさを携えているので、間口はいつもよりかなり広め(濃いナンバーはわざと外したとも言ってるけど)といえる。初心者が土足で踏み荒らすには最適の作品でしょう。逆に思い入れのあるファンにはつらい内容のようにも思ったり。これまでとは違ってスタイリッシュな作風のために理解の範疇にあって、カリガリ特有のアクの強さや味という部分に関しては食い足りなさも残るが、個人的には再結成作品として捉えたとすると十分の内容に思える。

 とにかく長々と書いてきましたが、要はまた作品を出してくれたことに感謝しろってことですね(って本人達言ってそう)。


 

グッド、バイ。

グッド・バイ。(2003)

   カリガリの活動休止ライヴと同日の2003年6月22日に発売された“さよならベストアルバム”。てっとり早くカリガリというバンドを知るのにこれほど適した作品はないです(・・・と書きましたが、後に発売された復活ベスト『cali≠gariの世界』の方も実験室に沿ったつくりで良い)。

 現在の第7期メンバーになってからリリースされた楽曲から15曲、それに新曲2曲も加えた全17曲とボリューム満点の一枚。さらに『再教育』に収録されているインディーズ時代の楽曲5曲は再録し、全曲リマスタリングされている。何であの曲が入ってないの?というのは少なからずあるにしても、初心者に向けた入門盤としてほぼ完璧な選曲に近いと個人的には思う。「エロトピア」から「ブルーフィルム」までバンドの核となる部分を提示しつつ、様々なジャンルを横断して鋭いセンスと共に自らの音楽に咀嚼していった変遷が聴ける。時には奇天烈に聴き手を驚かせ、また時には心を温めてくれるようなメロディと歌で包み込む。cali≠gariは桜井青と共に歩んできた長い歴史があるが、石井秀仁が加入して大きく進化/深化したバンドでもあり、それをきっちりとベスト盤でも表現してくれたことは嬉しい。過去と現在、その対比が上手くなされているのは面白く、カリガリの多様性がしっかりとフィーチャされてる選曲からはバンドの歴史もしっかりと感じとれる。それゆえに本作の聴き所は多い(もちろん、名曲が多いというのもあるけれども)。ちなみに初回盤のボーナスディスクの方もコアで良い感じ。

 いかに個性的なバンドだったかは聴けばわかるはず。”音を楽しむ”、そんな音楽の醍醐味を教えてくれるcali≠gariは、いろんな人に知ってもらいたいと強く思う存在。というわけで知らない人は本作からcali≠gariの世界へようこそ!


 

8

8(2003)

   “実験室”シリーズを卒業したのか、その名称がとれて数字だけのスマートな表記になった2003年の大型活動休止期間前の最後のアルバム。加えて、これまでのアルバムにあった「入口」「出口」「ドラマ」が無くなったので、バンドとしての新たな決意があるのかもしれない。さらにプロデューサーにあのムーンライダーズの鈴木慶一氏を迎えていることに驚きを覚えた人も多いはず。

 ロックでニューウェイヴィー。その感覚はさらに洗練されている印象だが、それは前半から石井秀仁のソロなんじゃねえの?と思えるほどの石井ワールドがcali≠gariというバンドで表現されているからというのもあるだろう。ギターロックに打ち込みを柔軟に織り交ぜ、軽度のキャッチーさを保ちながらどこか皮肉を持って表現される楽曲の数々。#1「その行方、徒に想う…」から#2「ヒズンダ!ヒズンダ!」へと突き進む序盤からいつものカリガリっぽい感じはするけど、ちょっと違った熱を持っているように感じる。そして、アンビエントな心地よさとドリーミーな揺らぎを持った#4「虜ローラー」まで出してきた時は、ついにここまできたかという印象も受けた。様々なジャンルを取り込んできたその幅は本作で狭くはなっているのだけど、ひとつひとつの楽曲の展開や濃さは玄人好みのものがある。作風としては石井の個が桜井青を凌駕するほど強く表れており、村井研次郎が作曲の#5「昏睡波動~コーマウェイブ~」や#7「読心」にしてもプログレッシヴなベースプレイを炸裂させたり、優雅なヴァイオリンの音色が響く中で、石井秀仁に音響方面で引きつけられた楽曲に仕上がっている。

 そんな中、後半#9からラストの#12まで固められた桜井青の4曲が「これが本来のcali≠gariの良心だ」と言わんばかりに変態性~ドロドロ&レトロな感触~哀愁を示しており、真っ向から対峙。けれどもこれらの楽曲でちょっと冴えが見えないのが、このアルバムがあまり支持されてない要因のひとつといえるかも。もちろん、石井化したアルバムであるというのも大きいが。しかしながら、ヴィジュアル系シーンから飛び立てる斬新な音を聴かせてくれる本作は、聴き応え十分である。


 

第7実験室

第7実験室(2002)

   メジャー・デビュー作ですが、”実験室”は取れず。しかしながら、メジャーだからさすがに「死ね死ね」と叫ぶにはいかなかったようで(苦笑)、ナンバーガールを思わせる正統派なギター・ロック#2「ハイカラ・殺伐・ハイソ・絶賛」を配置することでごまかしている(この曲は個人的にカリガリの中で一番好きな曲です)。

 とはいえ、そんなギターロックから昭和歌謡、テクノ~ニューウェイヴ、ジャズ/フュージョン、ポストロック、アンビエント、パンクにフォークと多種多様な方面に好奇心を持って振れていくcali≠gariの自由すぎる感性を発揮。本作では、これまで以上の振り幅で聴き手をもてあそんでいるので爽快感すらある。NWテイストを散りばめながらアップテンポに畳みかける#3「まほらぼ憂愁」、ひねくれているがお洒落感はある#6「黒い球体」、YMOが頭をよぎる#8「デジタブルニウニウ」にアンビエント方面に軽やかに侵食する#9「体内騒音あやなしアンチ苦笑」まで、実験的ではあるが、きっちりと充実したものに仕上げている。先行シングルの#4「マグロ」を始めとして、”変”という言葉を、毒のあるユーモアと質の高いメロディで褒め言葉にまで昇華させてしまうこの人たちのセンスはやっぱり凄いなあ。メジャーにいっても枠に収まりきらない個性、そしてアングラっぽい雰囲気を醸し出してるのもグッドで、隠しトラックの#15「失禁」では一発かますところも立派。そんな中、#13「東京病」では桜井青の得意のフォーキーな曲調で泣かせたり。キャッチーに装いつつ、おちょくったり、だましたりと遊び心の中にカリガリの濃さがいつも以上に詰まった、そんな作品である。


 

第7実験室予告版~マグロ~

第7実験室予告版~マグロ~(2002)

   「ソープ通いと女装が天国で~♪」、「ハウスダストで毎日鼻炎です~♪」というこんなふざけた歌詞でメジャーデビューを飾ったアーティストが過去にいただろうかとさえ思う?シングル。SEX MACHINEGUNSでさえ、デビューシングルはまだまともな「HANABI-la 大回転」という曲調は抜いても歌詞はわりとまともな曲だったのに(笑)。それがこのバンドときたら「ほらぐ~るぐる~ぐるぐるぐるる~ぐる♪」というコミカルなサビ歌っちゃう「マグロ」をデビュー・シングルに持ってきてしまうんだから恐いもの知らず。彼らがヴィジュアル系とかいう狭いフィールドで語れる存在ではない、そんなおもしろい存在だというのを改めて思い知らさせれる。とはいえ、スラップを多用したベースに安定感あるドラムといい、演奏も十分すぎるほどに巧み。また、カップリングの「かじか」では、シリアスな雰囲気からアブストラクトにスペーシーに音を広げていく。電子音の使い方とか後半のノイズの放出の仕方とか、凡百のポストロック・バンドでは辿りつけないおもしろさがある良曲に仕上げている。というわけで、まるでタイプの違った曲を二つ揃えて、聴き手をもてあそんでくれた彼等。メジャー第1弾アルバムに期待を抱かせるシングルになっている。


 

caligari6

第6実験室(2001)

   第7期としては初のフルアルバムとなる6枚目。本作から石井秀仁が作曲にも参加している(前作は加入して間もなくだったので、時間がなかったのでしょう)。とはいえ、いきなり「37564」を踏襲した#2「-187-」で”死ね死ね”&”殺してやる”の連続でコミカルに盛り上げていく辺りのエンターテイメント精神はさすがでございます。っていうかやっぱり普通じゃないこのバンドは(笑)。

 懲りるどころか、ますます悪戯心に火がいており、#6「近代的コスメ唱歌」ではピコピコの電子音と歌謡センスを使って、閉塞的なヴィジュアル・シーンを痛烈に風刺するという芸当もみせる。思いっきりそのシーンに陣取ってる人達が思い切って皮肉を歌うこの曲を聴いた時は、かなりの衝撃を個人的にも受けた。その他の楽曲からも伝わることだが、本作では”皮肉”というのがキーワードのひとつになっている気がする。そんな中でテクノ/ニューウェイヴ風のシンセも大胆に効力を発揮し始めたのが本作からで、昭和歌謡の哀愁あるメロディや変態性を軸足に置きつつ、カリガリが新しい局面を迎えたといってもいい。その辺は#4「フラフラスキップ」や前述の#6を聴くと理解できるのではないかと思う。毒のあるユーモアを交えつつ、洗練された印象を抱く人も少なくないかも。しかしながら、打ち込みを取り入れつつも持ち前のメロディ・センスは冴えており、桜井青が作曲の#13「ママが僕を捨ててパパが僕を犯した日」は、残酷な歌詞とは裏腹に不思議なほど哀愁に満ちた涙腺直撃の名曲に仕上がっている。

 石井秀仁と桜井青の才能の共存がcali≠gariの作品の完成度に対して重要なファクターになるのは、後の作品で言われることになるが、本作はそのバランスが復活前では一番かなと思う。なんにせよ石井さんが台等することで、新しいcali≠gari像が膨らんできたのは確かだろう。


migi hidari

再教育㊨ & ㊧(2001)

 

    前年加入した石井秀仁に相当ほれ込んだようなので、過去の名曲もこいつに歌わせてみよう! そんなところから制作されただろうベスト盤的な2作品。第7期以前の彼等の作品は聴けてないので、前任Voの秀児氏と比較することはできないが、音質も良くなったとか。演奏自体も録り直されている模様。

 後にメジャーから発表となるベスト盤『グッド・バイ』と被る曲もあるが、現在でも入手困難になっている本作には、ライヴでの定番曲や過去の名曲を多数収録。限定盤であるが故に市場ではプレミア価格での取引が続いている。

 端的に言うと㊨の方がcali≠gariのぶっ飛んだ個性を発揮しており、過激な歌詞も含めて痛快で変態な曲が多い。その最たるものが「37564」でみなごろしー!」と煽り叫び続けるトチ狂いっぷり。どこか悲劇的な感性を持つ哀愁疾走ロック「せんちめんたる」「リンチ」のような曲もあるけど、「僕≠僕」みたいなヴィジュアル系っぽい曲から「サイレン」みたいにイケナイ感性が爆発した曲まで繰り出し、次々と聴き手を驚かす。悪戯な好奇心に満ちた彼等の狂気にも似たユーモアが本作には詰まっている。

 一方の㊧の方は、メロディアスな楽曲が多くて「ブルーフィルム」で心温まった人々の胸に響くことだろう。歌うように優雅なベースラインとピアニカっぽい音色が放つ哀愁に、優しい歌声が包みこんでいく「冷たい雨」は名曲中の名曲であり、ポップでキャッチーでポジティヴな「グッド・バイ」ももちろんそう。泣けるギターソロが珍しく炸裂する「「依存」という名の病気を治療する病院」にしても人気が高い。アップライトベースとピアノが賑やかにジャジーに彩る「ゼリー」も存在感を放っており、聴きやすいのは断然こちらの作品だろう。じっくりと青春と向き合わせてくれるようなそんな楽曲の数々に涙です。入手困難であることが悔やまれる。

 ちなみに本作は、発売から10年の歳月を経て、御2011年1月にファンクラブと一部店舗限定で全曲リマスタリング&当時のライブ映像を収録したDVD付で『再教育 改訂版』として限定再発された(既に売り切れましたが)。


 

caligariblue

ブルーフィルム(2000)

 

    Vo.に石井秀仁が加入した第7期cali≠gariの初音源。コンセプトは”エロ”で通称”エロ・アルバム”。1stプレスでは購入特典にコンドームが付き、2ndプレスでは1曲ボーナストラック追加で「真空回廊 -TAKAJUN’s Gravity-Free Remix-」を8曲目に収録している。

 cali≠gariを語る上では欠かせない2大名曲の#1「エロトピア」と#7「ブルーフィルム」を収録した本作は、コアなファンの中では非常に人気が高い一枚だ。分厚いギターリフにレトロな歌謡センスを融合し、エロ歌詞を妖艶に歌いこなす#1「エロトピア」は聴く者に驚きを与えること必至だし、軽快な曲調と光るメロディが聴き手の青春の一ページを鮮やかにめくっていくかのような#7「ブルーフィルム」にはいつも泣かせられる。カリガリの軸となる変態性と哀愁メロディというのをこの2曲で示していると思う。さらに本作では前述したようにエロをコンセプトにアダルトチックな要素を散りばめており、#4「音セックス」 に代表されるようなネタも完備。また、ジャズ/フュージョンもサラッと上品に聴かせ、気品としなやかさを兼ね備えた#5「真空回廊」、研次郎のスラップが冴えわたる#6「原色エレガント」にしても質は高い。全体を通してもバンドの中で新しい輝きを放つ石井秀仁の声が優しくもセクシーに響きわたっている。変態的でムーディな雰囲気を保つ中で、狡猾に歌とメロディを聴かせる技巧は冴えわたっており、バンドの際立った個性というのを感じさせる内容。cali≠gariの核となるものが詰まっていると思う、名作です。

 また、2ndプレスのボートラ#8「真空回廊」のリミックスは4つ打ちテクノでアゲつつ、音響のように使われる石井さんの歌声がいい味出してて面白い。

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