【アルバム紹介】Carontte『As Grey As They Said』

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アルバム紹介

As Grey As They Said(2010)

   スペイン・バルセロナを拠点に活動していたポストメタル5人組の1stフルアルバム。本作は実にポストメタル好きのツボを突く作品に仕上がっているように思います。

 聴いたイメージだと”Red Sparowesの薫りを漂わせるRosetta”というところ。憂いや悲壮感を孕んでいるアルペジオが空間を巧く編みながら、ロウ~ミッドテンポで長い時間をかけて大きなドラマを汲み上げていき、スラッジ特有の絶叫と重々しい轟音を振りかざしてカタルシスを得る。

 途中にはノスタルジックな感傷を覚える短いインストを挟んだりしますが、基本的には10分ぐらいの長尺曲で本作は構成されていて、広大な景色を轟音と静寂で塗り上げています。まさしくアイシス以降のポストメタルのスタイルに則っている。

 しかしながらアトモスフェリックな音像が目立ち、ポストロック然とした振る舞いも多いことから先頃出たRosettaの新作と共振している部分は多いです。このドラマティックなバーストにはEITSにスラッジメタルが混じったとかいう表現も当てはめることができます。

 トリプルギターの美麗で奥行きのある空間構築、それにキッチリと刻むリズム隊も頼もしく、時に強引なまでの牽引力で曲をリードする場面が垣間見れるところも心強い。どの曲も豊かな詩情を内包していて、静と動が有機的に結びついている所に惹かれます。

 美しい叙情性が悲しみを押し広げていくかのように展開して遥かなる轟音の景観を映し出していく#4、マグマが弾けたかのように激しさを増す動パートのコントラストが逸脱な#7「The Foreign」は本作で特に素晴らしい曲たち。よもやスペインからこういったバンドが出てこようとは思いもよらなかった堂々たるデビュー作。しかし、彼等はすでに活動していない・・・。

メインアーティスト:Carontte
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