Enemies -‐Review-‐

アリルランド・ダブリン出身のインストゥルメンタル・ロック4人組。2009年に1st EPをtoe主催のレーベルから発売し、2009年には船で何十日も懸けて日本にやってきて、来日公演を敢行。2010年には名古屋のSTIFFSLACKから1stフルアルバムを発表した。

レビュー作品

> We’ve Been Talking > Alpha Waves


We've Been Talking

We’ve Been Talking(2010)

   約2年ぶりとなる1stフルアルバム(発売は名古屋のSTIFFSLACKから)。その間には船で何十日もかけてまで移動して行った来日公演も経験済みで、ここ日本でも確かな手応えをつかみつつある。個人的にもそのライヴへは足を運んだのだが、演奏の端々から放たれる叙情的な薫りと、歓喜を爆発させたかのような音の洪水が心地よく身体を包んでくれたのを覚えている。

 そういった経験値を積んだ中で制作された本作だが、サウンドの大筋は前作から変化は無し。メロディアス~豪胆なツインギターが小刻みに絡み合いながら音符を豊かに振りまき、主旋律に肉薄するグルーヴィなベース、小技も事細かにいれるドラムが互いに支えあいながらエモーショナルなインストを奏でている。前に表現したように、激情迸る轟音と繊細な叙情を小気味よい展開で橋渡しするtoe直系のインストゥルメンタル・ロックといえばわかりやすいだろう。っで、本作でより磨きがかった部分といえば、構築の妙とメリハリの部分だと思う。ドンキャバを思わせる金属的で無機質な響きが少しばかり目立つけど、全体的に滑らかかつシャープに展開が引き締められている。前作よりも楽曲が短時間で完結していることからも、静・動の小気味よいメリハリと焦点を定めたことが伺えるはずだ。しかし、緻密でストイックでありながら、頭でっかちなイメージは浮かばず、カラっとした爽快さが感じられるのは相変わらず。それはひとえに流麗な展開もそうだが、メロディの説得力にあると思う。アイルランドらしい冷ややかさも内包したメロディの質感が、どことなく高潔で無垢な色を放っているし、艶やかな叙情性がリリカルな歌心を楽曲に宿している。また、新たに採用されたツインドラムというアイデアも良いアクセントになっているし、タッピングのキメっぷりや轟音が召還する嵐も威力十分だ。テクニカルなギターの絡み合いから始まって全体を飲み込む轟音へと鮮やかに繋げていく#2、透明感ある旋律の反復から咽び泣く音の雪崩が強烈な#9など注目曲多し。

 前EPの方がメロディアスでとっつきやすい印象もあるけど、本作はインスト・ロック・バンドとしての堂々たる成長をみせつける一枚になっているし、確かな説得力が備わっている。toeの山嵜氏に「激しく嫉妬する」と言わしめるエネミーズ、先々が楽しみな存在だ。


アルファ・ウェーヴス

Alpha Waves(2008)

   アイルランドのインスト・ポストロック4人組による1st EP(海外での発売は2008年だが、国内盤は2009年初頭にtoeのレーベルから発売)。奇を衒ったところのないギター2本、ベース、ドラムというシンプルな編成で、音楽性もtoeやPELE(アルバムに『Enemies』ってのがありましたが)に系譜する柔軟性と剛性を兼ね備えたインストゥルメンタル・ロックです。

 クリーントーンのアルペジオやタッピングを用いた切ないメロディライン、それにミニマルな展開を主軸にして、フィードバックが渦巻く轟音をぶちかましたり、繊細でメロディアスに奥行きを広げたり、シューゲイザーめいたホワイトノイズで包んだり、激情的な音の雪崩が襲いかかったりとポストロックの範疇ではあるが、様々な展開で魅せてくれる。その中で耳を引くのは澄んだ瑞々しさと叙情的な美しさが曲から感じられることだろうか。アイルランドらしいと直球で表現するまではいかないけど、北欧らしい旅情がメロディにちょっとばかし染み付いてるのが琴線をくすぐる要因となっていると思う。ミニマル・ループ的手法で快感を引き出していく巧さもあれば、整備された静・動の爆発までも手中に収めている。それにマスロックの複雑さが煌くところもある。けれども、全体的にはしなやかで風通しがよくて、端々の流麗さも含めて爽やかな風景を描き出しているかのよう。リズム隊の歯切れ良く小気味よい進行も、純粋な熱気を運んできてくれるし、伸びやかで躍動感が感じられるところもよろしい。そんな中でも、クリアなサウンドから荒々しい轟音へと発展して行くポストロックの王道を体現した#1、小気味よい単音ギターの絡み合いから、木漏れ日のような柔らかなベールが包み込む#5の2曲が本作では抜きん出ている。静謐と激情の中で程よい緊張感が保たれているのもいい感じで、いかにもポストロックらしい佇まいも初作でありながら様になっている印象だ。toe好きにはもろストライクな感じ(toeチルドレンといってもいいかも)なサウンドだから、チェックしてみてはいかがだろうか。

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