epic45 ‐‐Review‐‐

UK出身の2人組ポストロックバンド。その情感溢れるサウンドと郷愁を誘うメロディで人々を感動の泉へと運んでくれる。

レビュー作品

> Weathering > In All The Empty Houses > may your heart be the map > Against The Pull Of Autumn


Weathering

Weathering(2011)

   映像も含めての完成度を追及したミニアルバム『In All The Empty Houses』、ギター/ヴォーカルのBen Holtonによるソロ・プロジェクトMy Autumn Empireなどのリリースを経ての4年ぶりとなる4thフルアルバム。

 本作でも流石だ。詩的でノスタルジックな風景を描く音による柔らかなデッサンは、さらに巧みになり、静かな情熱と共に聴き手に奇跡のような優しい時間を提供してくれる。「Weathering = 風化」をテーマに掲げ、見事な筆使いで人々の胸に収められた遠い過去の風景から、季節の移ろい、移り変わっていく街並み等を繊細に表現。ポストロック~フォークトロニカ~アンビエントとこれまで培ってきたサウンドで地盤を強く固め、その上でMy Autumn Empireで聴かせた染みわたる唄の磁力を発揮しており、リリカルな表現力がこれまで以上に胸を締め付ける。

 とはいえ、いつも通りのepic45節がキラリ。詩的な美しさとノスタルジックな感傷に満ちた物語にゆっくりと引き込まれていく。生音の切なく感傷的な響きが心を震わせ、洗練を極めたエレクトロニカの装飾が繊細かつ優美さをもたらしている。ややアブストラクトな音像が目立つのだが、土台を支えているバンド演奏は芯が強い。そして、本作では唄の力というのがこれまで以上に表立って効力を発揮しているように思う。また、さりげないノイズのたゆたいや教会のチャペルの音にすらリリシズムを感じさせるし、女性ヴォーカルやストリングスを導入したことで作品に華やぎと彩度を与えているのも印象的だ。風化を完璧に目指すために厳選された音が集積し、静謐で清らかな世界を形作っている。

 冒頭の#1からラストの#11まで絶妙な郷愁とメランコリーが溶け込んでおり、胸をゆっくりと焦がす。ただ、安らぎを与えるだけでなく、誠実に聴き手に語りかけてくれるような温かさと優しさが秀逸。遠い記憶をも蘇らせる様な磨かれた叙情感覚もまた素晴らしい。バンド初期のポストロック~アンビエントを踏まえつつも、これまで拡げてきた音楽的素養を還元しながら集大成ともいえる作品に仕上げた見事な一枚。


In All The Empty Houses

In All The Empty Houses(2009)

   『may your heart be the map』より2年ぶりとなるCDリリースは6曲入りのミニアルバム(日本盤はボーナストラック1曲にDVD付属)。繊細で清らかなポストロックを創造し続ける彼等だが、本作でも大きな路線変更は無し。ノスタルジックな生音とエレクトロニカの融合による温かい世界が広がっており、今までのファンなら確実にその音に癒されることだろうと思う。

 アコギの甘美な旋律がスッと寄り添うように鳴り響き、グロッケンやシンセに柔らかなエレクトロニクスが空間に眩い光を潤しながら、打ち込みのビートとゆったりとしたドラムが心地よく熱を高めていく。その静謐ながら磁力のあるサウンドを基盤に、耳元で優しくささやくような歌が、リリシズムとメランコリーに一層の拍車をかけ、夢のような異郷へと手招きする。そんな穏やかにセンチメンタリズムを刺激するような曲が本作でも目白押しだ。アコギと電子音が優しくムーディな雰囲気を演出する#1、幼少の頃のセンチメンタルな憧憬が浮かぶ#2、アンビエント寄りの#3といった前半を通過し、絶妙な透明感とドリーミーな世界観が、儚い余韻と琴線を擽る後半へ向かっていく。#6の切なすぎる味わいは特に感動モノだろう。まろやかなメロディが体に染み込み、心の底を震わせるものがあった。

 前作から地続きの優美な世界観はあくまで脆くも儚い印象を残すのだが、その一方で陽だまりのように温かさとぬくもりが感じられるものでもある。また、情感豊かな楽曲群は、鮮やかに色づくエメラルドグリーンの風景が不思議と脳内に浮かびあがらせる力も持っている。個人的には、この手の音楽をつくる人達の中では一歩抜きん出た優しさや郷愁を表現できることを示した作品だと思った。


May Your Heart Be The Map

may your heart be the map(2007)

   何枚かのEPを挟みつつ、3年ぶりの発表となった3rdアルバム。前作発表後に、何があったかは知らないが二人組として再出発を切っている。その影響をもろ受ける形でバンド然としたテクスチャーは薄まり、繊細な音響系のアプローチへと変化。かなりアンビエントよりにシフトした作風だ。

 その変化に軽くHeliosみたいな感じだなあと軽く思ったり。楽曲も前作以上に聴きやすさを重視して3~4分のコンパクトなつくりが多く、全体としても13曲で40分程度の尺に収まっている。とはいえ、薄く広がっていくノイズの上をアコースティックギターの美麗な旋律が彩り、消え入りそうな淡い歌声とエレクトロニカが絶妙なバランスで絡むっていう方法自体はそんなに変わっていない。前作通りに切ないノスタルジーが体に染み込んでくるし、自然と心の奥底に入り込んでくるメロディもまた彼等らしいなと思う。聴いているとジャケ通りの緑の桃源郷が目の前に浮かんでくることだろう。また、曲のタイトルを見てもお分かりの通り、春夏秋冬の季節の流れを感じさせる辺りも本作の特徴だと思う。それと共に透徹とした美しさを終始保っており、その辺りが相変わらず琴線に触れてくる。淡々としているようで非常に温かみのあるところも良く、癒しの効果は本作でも高い。


Against the Pull of Autum

Against The Pull Of Autumn(2004)

   この頃はまだ5人組だったepic45の2ndアルバム。なんて清らかで透き通った音楽なんだろう。滑らからなギターが牧歌的な音色を響かせ、シンセが鮮やかに煌いて、消え入りそうな淡い歌声と打ち込みの音が美しく空間を流れていく。そこにエレクトロニカ・シューゲイザー風味の味も混ぜ合わせて、とっても心が落ち着く穏やかなサウンドを構築している。ピアノやチェロ等の絡みもまた音色を豊かにしており、より生命感を感じさせてくれるのが味わい深い。そんな感じの儚く美しいポストロックである。

 優しくくすぐるように響くサウンドには思わずうっとりとさせられてしまう。こういうのを夢見心地とかいうのだろうか。それに懐っこいメロディがノスタルジーを喚起してくれるところもまた良い。ただ、インストと歌入りが半々に収録されてはいるものの、全体的に金太郎飴っぽい感じは否めない。正直、平均点の高い曲が並んでいるに過ぎないといわれても仕方ない気はする。それに耳にひっかかりを覚えるような激しい衝動は皆無だし、奇を衒ったところもない。

 だが、美の結晶ともいえるこの作品が残す感動は確かなものである。穏やかな時を過ごしたい、または癒してもらいたいって時には重宝しそうな一枚だといえよう。中でも一際異彩を放つ11分に及ぶタイトルトラックの#9は、寂寥感をつのらせるピアノが切なすぎる序盤から、徐々に徐々にギターが恵みの光を差していく様がとても美しい。

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