Fen ‐‐Review‐‐

イギリスのアトモスフェリック・ブラックメタルバンド4人組。ポスト・ブラック/シューゲイザー・ブラックメタルの雛形を造形したバンドの一つとして、話題の存在である。

レビュー作品

> Epoch > The Malediction Fields


Epoch

Epoch(2011)

   約2年ぶりに発売の2ndフルアルバム、発売は前作と同じくcode 666から。作風自体は前作の流れにあるもので、ポスト・ブラックメタル/シューゲイザー・ブラックを極めに入っている。

 Alcest、Amesoeursと並んでこのジャンルの雛形の造形に大いに貢献した存在であると思うが、その中で本作ではさらに叙情感覚が強まっている印象。柔らかく全体を包むような淡いクリーン・ギターにアルペジオ、意外とメロディアスなフレーズを奏でる事の多いベースライン、Neigeを思わせるウィスパー・ヴォイスも絡めるなどしたクリーンパートの歌唱が効果的に温かみのある詩情を忍ばせている。また、冷たくも神秘的なオーラを加えるシンセの意匠、ストリングスっぽいアレンジも導入してのスケール感の助長が前作以上に堂に入っており、セピア色の哀愁と繊細な脆さが常に作品を通底。ポストロック/シューゲイズ的アプローチを増やすことで、よりメランコリックに美しく研磨されている。それゆえに洗練の度合いは確実に進んでいるのだが、突如として暴発するブラックメタルの禍々しい狂気が穏やかな凪に雪崩込み、黒で染め上げる矜持というのは決して忘れていない。ブラストビートを合図に激走するドラムに、精神的にキツイ邪悪な絶叫が、激烈なアグレッションをしっかりと支えている。この陰惨な景色を創り上げる暴虐パートと前述した神秘性も湛えた美麗パートの対比が実に巧く手を取り合っていて、天上界から奈落への極端すぎる転換は、間違いなくFenの夢幻なる世界の奥行きを一層深いものとしているのだ。ミステリアスな浮遊感もまた心地よく感じる。

 アトモスフェリックな出足から壮麗邪悪な世界観を打ち立てていく#1「Epoch」から始まる全8曲は、硬軟や寒暖に正邪のバランスを見極めながら見事な筆捌きで、激しくも幻想的で儚いポスト・ブラックメタルを織り上げている。激しさや邪悪さを包み込んでしまう温かさや柔和な美しさは、Amesoeursに近似するほど本作では磨かれていると個人的には感じてしまう。特に10分超を超えるドラマティックな#5は暴虐性を醸しつつも叙情感覚が強く、ストリングスの味付けも絶品な1曲。そして、続く#6では木漏れ日抱かれる様な前半を過ぎると、ブラスト全開の激烈パートを挟んだりアコギの旋律が突如挿入されるなど展開の読めないスリリングさが凄まじい。個人的にはこの2曲が本作では特に抜け出た完成度を誇っていると思う。近年、隆盛を誇るポスト・ブラックメタルではあるが、そのジャンルの中でもこの『Epoch』はポストロック/シューゲイズ方面に傾いている印象もあれど、ど真ん中を突いている作品であると感じている。前作から順当なアップデートのもとで、美しい世界観を表出してみせた完成度の高い一枚。


The Malediction Fields

The Malediction Fields(2009)

   2007年に発売されたEP『ANCIENT SORROW』に引き続いての待望の1stフルアルバム(発売はAmesoeurs等の作品もリリースしているCode666から)。

 EPに関しては未聴だが、このFenというバンドを耳にした時はWolves In The Throne Roomを最初に聴いた時と同じくらいの衝撃を受けた。WITTRはブラックの強烈な部分を基本軸に静と動を生かした壮大かつドラマティックな感じであったが、Fenは薄いもやがかかったかのような幻想性とノスタルジックな叙情性の抽出を重きに置いているような印象だ。ヴォーカルこそ禍々しい邪気を放出するブラックそのものだけど(その割に曲調に合わせてしっとりと歌い上げる部分もはまっている)、透明感すら感じさせるサウンドスケープとドラマティックに組み上げられていく楽曲は聴き応え十分。クライマックスにはブラックメタルらしい冷たい寂寥感と痛々しさが胸にじんじんと沁みてくる。 淡いメロディがもたらす儚さとキーボードの旋律美による神秘性は特に逸脱で、思慮深い感性を惜しげもなく披露。随所ではブラストの炸裂を合図に凶暴なアグレッションで畳み掛ける部分もあり、たおやかな静パートと燃え盛る炎の如し激パートのダイレクトな交錯には身震いを覚えてしまうほどである。

 IsisやNeurosis等のスラッジ/ポストメタル勢に影響を受けたというのも納得の奥行きと広がりも凄い。あくまでメロディを重視した塩梅だが、谷底に突き落とされるような残酷感から天へと召すようないたわりで魂を抜き取ることまでどっぷりと浸かれる作品でしょう。魂にまで響く慟哭にやられました。

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