Godspeed You! Black Emperor ‐‐Review‐‐

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1994年に結成されたカナダの大所帯インストゥルメンタル・ロック・バンド(長いバンド名は日本のドキュメンタリー映画より拝借)。極めて前衛的なサウンドアプローチと一瞬の弛緩さえも許さない緊張の連続、政治的なメッセージの詰まったうねりに陶酔してしまった人多数。英NME誌においては「今世紀最後のグレイト・バンド」と評されていたりもする。2002年に3rdアルバム「Yanqui U.x.o.」を発表して以来、全く音沙汰は無く、長い沈黙が続く。っが2010年に突如として再結成し、ライヴ活動を中心に活動を再開する。日本にも2011年2月の”I’LL BE YOUR MIRROR”にて来日を果たす。そして、2012年に10年ぶりとなる復活作『Allelujah! Don’t Bend! Ascend!』を発表した。

レビュー作品

> Asunder, Sweet And Other Distress > Allelujah! Don’t Bend! Ascend! > Yanqui U.X.O. > Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven


 

Asunder, Sweet & Other Distres

Asunder, Sweet and Other Distress(2015)

  約2年半ぶりとなる復活後2作目のフルアルバム。相変わらずこの集団は、荘厳なサウンドスケープでゴッスピしています。「カタカタと音を立てて、映写機は回ります。モノクロの黒い廃墟、スクリーンに映します。」的なGY!BE節。ただ、4曲で約40分とこれまでのフルアルバムの中で収録時間は一番短い。それ故に精神的な摩耗は少し和らいでいるかと。

 本作は、近年のライヴで披露されていた「Behemoth(曲名は仮タイトル)」という40分超の曲を基にしたものだそう。少し近年のEarthっぽい雰囲気を持った勇壮な#1「Peasantry or ‘Light! Inside of Light!’」で小さな爆発はあるにせよ、#2「Lambs’ Breath」~#3「Asunder, Sweet」とドローンの迷宮を暗黒徘徊し、いつまで引っ張るんだ?という感じで作品は進んでいく。何も起こらない不気味さ、それでも緊張感に苛まれる感じはGY!BEならでは。しかし、ここまでなら一気のドローン化という印象を受けるところだが、ラスト曲#4「Piss Crowns Are Trebled」でようやく最大の歓喜を呼ぶ轟音が吹き荒れるという形式。やはり全4曲通して1曲みたいな感触は強い。

 あれっ?というモヤモヤしたまま終わるわけではなく、山場が用意されていたことには一安心。本作がGY!BEにとって通常運転なのか、そうでないのかは測りかねるが、インスト・ポストロックのお手本のようでそうではない掴み所の無さはらしい。個人的には前作に軍配が上がるところだが、#4におけるクライマックスの壮大なスケールと轟音は圧巻である。

 


 

Allelujah! Don't Bend! Ascend!

Allelujah! Don’t Bend! Ascend!(2012)

   『Yanqui U.X.O.』より10年ぶりとなるまさかの復活作の発表である。2011年2月に行われたI’LL BE YOUR MIRRORにて、彼等の演奏を目の当たりにしたときの衝撃は大変なもので、ライヴが進むにつれて高まる緊迫感、そして人間の一番深いところに届く重たいサウンドは、美と闇に満たされた芸術のようであった。世にここまで神格化された意味も改めて理解することとなったし。

 ついに発売となった待望の新作は、4曲約53分で形成されている。#1と#3が20分にも及ぶ大曲で、以前からライヴでも披露されていたという。この2曲はまさに”GY!BE印”といって内容だ。序盤から異様な緊迫感が心身を締め付け、複雑な構成を取りながらも濃密なドラマ性を貫き、大所帯ゆえのオーケストラにも比肩する迫力とともに重厚なスケールを打ち立てる。民族的なフレーズ、哀切のメロディ、強靭なリズムの躍動、荘厳なストリングスの旋律、時代を超えて轟くギター・ノイズ。年月をかけ、ストイックに求道した者だからこそ鳴らせる音がここにある。よりロックの方に振れている印象はあれど、終末感漂う闇をくぐり抜け、光と歓喜を手にするような瞬間のカタルシスは流石というほかない。さらに、約6分30秒ほどの荒涼としたドローン#2と#4もまた本作の欠かせないピースとなっている。

 神格化されたインスト・ポストロックの雄が放つ、2012年のマストアイテムのひとつであることは間違いない。Pitchforkでは既に9.3という高評価を獲得しているが、年末にかけて多くのメディアが今年のベスト・アルバムの上位にあげることだろう。他の追随を許さない孤高の1枚。


 

Yanqui Uxo

Yanqui U.X.O.(2002)

   「今世紀最後のグレイト・バンド」と評された孤高のインストゥルメンタル・ロック集団GODSPEED YOU! BLACK EMPERORの2002年発表の3rdアルバム。スティーブ・アルビニがプロデュースしている

 全部で5曲となっているが、#1と#2、#4と#5が組曲なので大きく分けると3曲という構成になる。しかもいずれもが20分を越える大曲であり、おまけに収録時間ほぼ目一杯(74分58秒)に収められているので、間違いなく聴き手を選ぶ作品だ。基本的にはプログレテイストの強いポストロックという解釈に落ち着くだろう。厳かな重みを持ったヴァイオリンとチェロの調べがピンと緊張の糸を張れば、マーチング風ドラムが心拍数を上げにかかる。そこに時には激しい怒りをぶつけるような、またあるときは漆黒のブリザードの如き轟音ギターが覆いかぶさってくる。複雑に音を重ねながらも静寂と喧噪を行き交うシンプルな設計ではある、だが聴き手の映像喚起力を限界まで引っ張り出してくる作品だ。その映像的な感覚は本当に聴き手次第で、終末を見るような惨劇であったり、訪れた歓喜の瞬間であったりと様々な映像が頭に浮かぶはず。社会への怒りに満ちたメッセージを軸としながらも聴き手としてはそれに捉われることなく楽しめることができるのである。

 無論、それは9人という大所帯にも関わらず緻密なアンサンブルによって時間・空間を支配して濃密なる音絵巻を描いているから。加えてトランペット・クラリネットなどの管楽器も使われており、アクセントとしてしっかり機能している。それらの音がどんどんと積み重なって一つの大きなうねりとなったときは、とても息が詰まりそうな感覚に襲われることだろう。30分強という時間の中で凝縮されたSF物語が堪能できるだろう圧巻の空間描写#4~#5の組曲が個人的には特に凄まじく感じた。

 時を超越した何かを届けてもらったような感覚、それを味わったが最後といわんばかりの抜け出せない闇がここにある。各人が大いに想像力を働かせながら聴くことを強くオススメしたい作品だ。


 

Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven

Lift Your Skinny Fists Like Antennas to Heaven(2000)

   彼等の最高傑作と名高い2ndアルバム。CD2枚組でそれぞれに2曲ずつが収録されており、1曲を除いてどの曲も20分を越える内容。4曲ながらトータルタイムが90分に迫る超大作に仕上がっている。

 ギター3人、ドラム2人、ベース、チェロ、ヴァイオリン、テープ編集という変則構成の9人組が紡ぐ4つの長編抒情詩、それが現実と異次元の狭間に意識をぶっ飛ばすから大変だ。チェロ・ヴァイオリンが繊細に悲壮な雰囲気を築きあげ、そこへギター・ベース・ドラムが音を積み重ねていってゆったりと静から動へと表層を変化させていく。厚みを増していく音の壁が徐々に巨大化していき、壮大なうねりとなってしまった瞬間が最後。忘我の境地へと我々は飛び立つことになる。息を失うほどの凄まじい音の爆発と収斂、破壊と創造が繰り返される狂気に満ちた音世界、その先にあるかすかな希望という名の光が包むかつてない感動は鳥肌もの。現代的ポストロックという範疇にとどまらない、壮大なスケール感を誇る作品だ。さすがに20世紀最後のグレイト・バンドと評されただけあり、暗く混沌とした世界観は圧巻としか言いようが無い。

 冷たく沈むような音から温かさと温もりのある音まで、9人のエネルギーを狂ったように爆発させながらもしっかりとコントロールされている。手法としてはもろに静から動へと変化するポストロックそのものだが、クリムゾンばりのプログレ的解釈すらできそうなスケールの大きさは他の追随を許さない。静寂にまで存在する狂気には胸を痛めつけられるし、絶望の淵にでも立たされたかのような暗さが一段と恐怖を煽り、嵐のような轟音が聴くものを飲み込む。もたらされる圧倒的な臨場感とともに音に酔いしれることができるだろう。本作はロックという言葉そのものを破壊しにかかるような傑作だ。

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