アメリカ・ユタ州ソルトレイクシティが生んだポストメタルの新鋭。
Monuments, Monoliths(2013)
2013年のポストメタルの幕明けを飾る脅威の作品である。2011年に発表した5曲入りEP『Signals From the Void』も強烈と言わざるをえないものであったが、それからDustbloomとのスプリット作品を経験値に加え、ここにきて大いに発展を遂げた耽美系ポストメタル一大絵巻を完成させてきた。
11曲77分にも及ぶ大作となった本作は、大きな影響を受けたというISISやCult Of Luna等を彷彿とさせる静と動の壮絶なコントラストを核に、大海の如きスケールで聴き手を圧倒してくる。AmenraやOmega Massifにも匹敵する重量級のリフや地を揺るがすリズムが轟き、さらには地の底から召喚した狂獣のごとき低音咆哮が猛威を振るう。そして、上品でエレガントな鍵盤の旋律が豊かなリリシズムを添えていく。それこそEPから続くポストメタル路線を大切に温めて進化させてきた形だ。アンビエントやポストクラシカルの透明感と優美さから、スラッジ/ドゥームの黒々しい重厚さで大きな落差を生み出しており、プログレッシヴともいうべき複雑な構成の中で極限の激と美の結晶化に成功している。コンセプチュアルな世界を力強く打ち立てた本作には、まるで隙がない。
ゆったりとカタルシスへと向かい、天地を揺るがすほどの大爆発を見せる#4「Ursidae」から漆黒のデス/ドゥームが美麗さを加えていく#5「Thousands of Eyes」という流れは、そんな彼等らしさが凝縮した序盤のひとつのハイライトといえるだろう。また、クラシック風の清冽な鍵盤からポストメタルの巨大なグルーヴに巻き込んでいく#7「As Above,So Below」や穏やかな美しさ持つ#9「Monoliths」と後半の楽曲では、メランコリックな色調がより深まっていく。”耽美”という印象を強く受けるのは、作品を通してのキーボードの活躍によるところが大きいか。ポストメタル系でここまで大胆に組み合わせているバンドは、他にいなかったと思う(あくまで僕個人のわかる範囲内だと)。それに慟哭系のメロデス勢にも通ずる泣きが個人的に感じられる点も、惹かれる要素のひとつとなっている。
偉大な先人達のエッセンスを突き詰め、徹底的に練り上げることで、万物を蹂躙する重厚な音壁と清らかな叙情性、そして劇的なストーリー展開を獲得するに至った。こちらには女性コーラスは無いけれども、ベルギーの若手ポストメタルのGrown Belowと近しい感覚を持っていると思う。随所に配置されたアイシスを思わせる小インスト3曲にしても、物語を形成するピースとして決して欠かすことはできない。そして、締めくくりの#11「The City In The Sky」は、静謐なる美しい一時から圧巻の轟音ドラマを繰り広げる名曲に仕上がっており、怒涛のクライマックスにはもう言葉が出てこないほどに強烈だった。聴き進めるごとに心の中で感動を広げていくような揺るぎない流れが、本作には存在している。デビュー作とはまるで思えない完成度。前述したように、2013年のポストメタルの幕開けを飾るにふさわしい77分の超大作にして傑作だ。
ちなみに本作は、amazonのMP3ダウンロードで購入したが、BandcampやiTunesからも購入可能。また、1st EPやDustbloomとのスプリット作品もBandcampの方でチェックできる。フィジカルだとCDでリリースされているようだが、facebookで確認したけどかなり凝った特殊パッケージのようです。
(余談) しかしまあ、ベーシスト君が担当するVo.のクリーン・パートはアーロン・ターナーにそっくりだし、要所で聴こえてくるクリアなベースラインにしても同じアイシスのジェフ・キャシードが頭をよぎって仕方がない。筆者自身もアイシスには大きく感化された人間だが、だからこそこのHuldraという新興バンドには、強く惹かれているのかもしれないな。
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