James Blake ‐‐Review‐‐

ポスト・ダブステップ~エレクトロニック系シンガーソングライターとして全世界から支持を得るアーティスト。静謐で美しい音響と艶やかな歌声で魅力的な世界を創ります。

レビュー作品

> The Colour In Anything > Overgrown > Enough Thunder > James Blake


The Colour In Anything

The Colour In Anything(2016)

 約3年ぶりとなる3rdフルアルバム。コンパクトさがこれまでの作品の特徴だった彼が、17曲70分超えのボリュームの本作を発表したことに驚きます。遠くで揺れ動くかのような艶やかな歌声、静謐に敬意を払ったかのように抽象的で深遠な音響。ポスト・ダブステップの貴公子として様々なこじらせを招いてきたわけですが、彼を特徴づける要素は変わりありません。#1「Radio Silence」や#4「Timeless」辺りはその典型かと。それに本作においてもお得意のコラボレーション芸(#11「I Need a Forest Fire」にてBon Iverと再共演)を披露していますしね。前作で歌の比重が高まり、シンガーとしての魅力にフォーカスしていましたが、弾き語りの#5「F.O.R.E.V.E.R」や表題曲#13などを中心にさらなる洗練を感じます。年齢を重ねて大人の滋味深い味わいというのがあるといいますか。陰影と奥行きの美しさが際立つ立体的なサウンド・フォルムは、聴き手を取り込む説得力に満ちたもの。1stアルバムほどの衝撃は無いといえばそうなんですが、順調なキャリアを積んでいる証じゃないかと思える作品に仕上がっているのは確かです。


Overgrown

Overgrown(2013)

    セルフタイトルの1stアルバムで、世界を虜にしたポスト・ダブステップの貴公子による2年ぶりの2ndアルバム。巨匠ブライアン・イーノやウータン・クランのRZA等のコラボ曲も含んでいますが、ミステリアスな美しさと浸透力を持ったサウンドはそのまま。低いキックの音がうねり、深海の底でぼんやりと光るようなエレクトロニックな装飾があり、そこにジェイムスの美しい歌声が響きわたります。愛を知ったことで内省だった世界は開かれ、よりヴォーカルがその幻想の中で浮かび上がっている印象はあれど、これこそがジェイムス・ブレイクという持ち味をいかんなく発揮。RZAがラップを重ねようが、ブライアン・イーノ先生とコラボしようが揺るぎない自身の世界を打ち立てています。無駄が無いからこその美しさ、細かな音の配置による奥行きは、もはや燻し銀の技。幽玄なエレクトロ・ミュージックと儚い歌声が印象的な#1「Overgrown」、シンプルなバックから中盤でプリズムのような輝きを放つ#5「Retrograde」、イーノ先生との共作の割に太いビートが躍動する#7「Digital Lion」などを収録し、全体を通しても彼の深化がじっくりと感じ取れる内容です。


Enough Thunder

Enough Thunder(2011)

 6曲入りEP。1stフルアルバム『James Blake』は、ダブ・ステップを超えたシーンで大きな影響力を与えました。その作品で感じた引きの美学は継続し、絞った音数で最大限の説得力を持っています。本作ではさらに”歌”に焦点を当てるつくり。彼のパーソナルな一面が感じ取れるだろうジョニ・ミッチェルのカバー#4「A Case of You」がその事を物語っています。この曲は昨年の来日公演でアンコールの最後に披露されてましたけど、とても印象的でした。ラストを締めくくるしっとりと滋味深い#6「Enough Thunder」も彼のクラシックと歌い手としての素養を強く感じさせるもの。静かで内省的ですが、音に宿る確かな説得力が心を動かしていく。本作の中でも目玉はやはり冒頭でも述べたボン・イヴェールとのコラボ曲の#3。ゆったりと空気を切り裂くような低音ビートを響かせながら、ボン・イヴェールの祈りにも似たファルセットが乗る絶品の仕上がり。1stアルバム『James Blake』とこのEPを合わせた2枚組が発売されているので、買うならそちらをオススメします。


James Blake

James Blake(2011)

世界各国のメディアで絶賛された2011年を代表する1stフルアルバム。かくいう自分も#6″Limit To Your Love”を初めて耳にしたときから衝撃を受けました。音数を絞ることを主にした実に巧妙なサウンドのデザイン性。エフェクトのかかった揺らぎのある歌声やどこか哀感のあるしっとりとしたピアノの旋律が、鼓膜からすっと入って深い印象を残すのです。

 端的に表せばBurialに端を発したダブステップのフォームに、ジェイムス・ブレイクはソウルフルなヴォーカルを大胆に持ち込んでいますが、ここまで互いの要素が機能的に働いたことはおそらくなかったはず。それ故に本作を『歌のアルバム』と評す人々は多く、新鮮な息吹を感じさせると絶賛されています。2010年にリリースのEPではポスト・ダブステップとしてもっとフロア寄りの音楽を創っていたそう。ですが、歌に力を入れてきたことで、普遍性持つようになってます。空虚で静謐とした中で、本当に選び抜いた音のみを鳴らす事。それが根底にあるから、一音一音が凛とした響きを持ってるし、その瞬間瞬間に全身がハッと覚めるような鮮やかな感覚をも味わえます。全11曲38分というコンパクトによる聴きやすさもあり。物憂げで優美な秀作、世界が心動かされる理由はここに詰まっています。

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