割礼 ‐‐Review‐‐

1983年に名古屋で結成された、サイケ・ロックバンド。ニューウェイヴ・パンクを経て、スロウに怪しげに奏でられるその音楽性は、現在ではサイケデリックの重鎮とも評さるほどの高評価を得ている。そんな彼等は27年経った今も現役バリバリ。2010年6月には7年ぶりとなるニューアルバム『星を見る』を発表をした。

レビュー作品

> 星を見る > PARADAISE K


星を見る

星を見る(2010)

   ついに結成27年目を迎えた割礼の『セカイノマヒル』以来、実に約7年ぶりとなる待望のニューアルバム(通算6作目)。現在の4人(今までで最強らしいけど)になってから初となる作品である。今年1月に再発された名盤である1st『PARADAISE K』に引き続いて本作をとってみたけど、27年間という時間の隔たりをあまり感じさせない(他の作品は聴いたことないですが)、ダーク・サイケデリックの意匠が施された作品といえるのではないだろうか。

 90年代からライヴで演奏されており、音源化が待ち望まれていたという15分に及ぶ大曲#1「リボンの騎士」でスタートする説得力がまず半端じゃない。湿り気を帯びたサイケ・ギターが極端にスロウなリズムに共鳴して、ゆるやかな変相を遂げながら聴き手の意識をまさぐり、酩酊感を与えていく。少し密教的な感じはするのだが、ゆるいようで唄と演奏による空間の編み方が非常に巧みだし、時空に歪みをもたらして異次元を奏でるギターソロも印象的だ。気付けば、ねっとりとした空気と果てない闇の中を歩いているかのような感覚に陥る。これ1曲で自分達の矜持を示すと共に老獪な構成力を示しているといえるだろう。滋味深いギターが一層のサイケ感と酩酊感を召還してしまう11分越えの#5「ルシアル」にしても凄い。聴けば聴くほど深みにハマってしまいそうな効能がある。

 また、#2「マリブ」や#4「星をみる」といった曲では、負のベクトルを内包したギターがアングラっぽい雰囲気を先導する中で、Vo.宍戸の哀愁がこぼれるかのようなナイーヴな唄に耳がいく。加えて、日本語詩でこの独特の世界を柔らかになぞっていくのが和の力を感じさせてくれているようにも思う。うねりのあるサウンドによって、現実を溶かしていくかのような感覚や憂いの感情を孕んだダークな世界観はもちろん強烈だ。しかし本作は、退廃的であるが故の美しさや人間らしい情緒的な部分にも凄く惹かれる部分がある。仄かに温かく微笑ましい雰囲気をつくっていく優美な#6「革命」で終末を迎えるのがまた何とも味わい深い。6曲約54分の覚醒盤!という言葉がとてもしっくりと感じられる作品であり、 割礼の音楽は27年間の時を経ても、未だ深い霧の中で覆われていることを如実に証明した秀作である。


パラダイスK [紙ジャケット仕様] [ボートラ付]

PARADAISE K(1986)

   1986年に名古屋のライブハウスHUCK FINN で録音された6曲入り12インチ・アナログ盤でリリースの1st アルバム。2010年に入り、P-VINEから紙ジャケット・リマスター仕様で再発された。VO.穴戸がセレクトした当時のレア音源5曲を追加収録し、全11曲約58分と申し分の無い形での完全復刻になる。

 現実と幻想の狭間で揺れ動く感覚、どこか生気が抜けおちた低血圧な作品というのがまず聴いて印象に残った。歯切れがよいのにどこか妖しげでねっとりとした感触をもったギターに、粘り気の強いヴォーカル、ゆれるように蠢くリズム。それらが連なり・重なり合いながらゆったりと摩訶不思議な螺旋を描いている。もたらされるのは独特の浮遊感による心地よさと強烈なサイケデリック感覚による三半規管の陶酔と麻痺。のっぺりと纏わりつきながら底なし沼へとじわじわと引きずられていく。メロディにしてもシニカルな感触をもっていて、世間とは距離を置いているように感じられるところがまた独特の味わいがある。どことなく危く不安定、けれどだからこそ妙に魅力的に感じてしまう。

 不穏な効果音を合図にいきなりスロウなサイケデリックチューン#1″きのこ”からスタートする時点でもうクラクラ。視界すらも歪む幻惑とまどろみを文字通り描き出して行く。それがまたねっとりと湿っぽく、鬱屈と折している。けれども、それとはうってかわった焦燥感を募らせて前のめりに突っ走るパンク的な#2や#6といった曲では彼等の蒼さが感じられるのがおもしろい。本作を発表したころのインディーズ時代はパンク/ニューウェイヴからサイケへの移行期とのことだが、若さも老練さも備えた楽曲のヴァラエティさは素直に楽しめるだろう。#2″ベッド”のライヴバージョンの#9、#4をさらにスロウにして呪術度と妖しさを倍加させた#10、17分にも及ぶサイケ暗夜行路の旅#11とボーナストラックも充実。ゆらゆら帝国のファンには特にオススメできる作品だ。

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