ドイツのインスト・ポストメタル/プログレッシヴ・ロック5人組。サイケ/プログレを多分に吸収したインスト群は一癖も二癖も持っている。
Long Distance Calling(2011)
ドイツのインスト・ポストメタル/プログレッシヴ・ロック5人組の通算3作目(過去作は未聴)。内容としては、展開力を十分に備えたインストゥルメンタルという感じだろうか。ポストロック/ポストメタルにプログレを主成分にしてさらにはサイケ/スペース・ロックに至るまでの要素を煮詰めながら、かなり練り上げられた音楽を奏でている。欧州のバンドではあるが、例えるなら70年代サイケを浴びてプログレに寄りそったRussian Circlesといったところか。小奇麗な気品さと激しく猛々しい音色が衝突現象を起こしながら、怒涛の推進力と展開美で十二分に聴き手を魅了してくれる。ポストロック調のクリーンな音色から古色蒼然としたサイケまでを多彩に繰り出すギターに、強靭で柔軟なリズムが支えながら、どの曲もスリリングでドラマティックな起伏をみせていくインスト群は惹かれる点が多い。
神秘的で美しい曲調から楽曲後半にハードな曲調を盛り込んでしっかり聴かせる#1からしてその実力を証明しているが、特に秀逸なのは#2で70年代サイケの影響を存分に還元しながら静と動のメリハリと緩急の効いた展開で脳味噌を蕩けさせる。所々でのシンセのスペーシーな味付けもいいし、モダンな造りの中に懐古的な音色を巧く取り入れている構成も、丁寧に馴染んでいて好印象。もろポストロックの前半から各楽器がインプロ風に絡み合っていく#4も佳曲だし、10分超を使って大きな絵を描いていく深遠なるインスト#7も十分に五感に染みる。さらにヘヴィなサウンドの上をなんとJohn Mush(ex-Anthrax)が豪快に歌う#6に驚かされる人も多いことだろう。
ポストロック/ポストメタルに属すインストではあるが一癖も二癖もあってかなり振り幅は広い。さらには宇宙・神秘・内省・といったキーワードを繋げ、70年代のプログ/サイケの旨味を濃縮しながら、独自のインストを追及しているといえるだろう。この音造りの妙は評価されてしかるべき。現世を脱する様な浮遊感と宇宙空間に放り出されるような解放感を有す彼等の音楽にもっと光が当たると嬉しい限りだ。
最新情報をお届けします
Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!