Maybeshewill ‐‐Review‐‐

UKレスターの轟音ブレイクビーツ4人組。65daysofstaticを追いつけ・追いこそうとするそのサウンドは、ここ日本でも小規模な地震を巻き起こしている。

レビュー作品

> I Was Here For a Moment, Then I Was Gone > Sing the Word Hope in Four-Part Harmony > Not for Want of Trying


I Was Here For a Moment, Then I Was Gone

I Was Here For a Moment, Then I Was Gone(2011)

   約2年ぶりとなる3rdフルアルバム。65daysofstaticと比較されてキャリアを歩み続けているこのバンドだけど、ここにきて美しい叙情感を貫いた作品を出してきたなあというのを強く印象づけてくれる。65dosがクラブ方面へと大きく舵を切った中で、彼等は扇情的なバンドサウンドとキメ細やかな美しい彩りに満ちたピアノ/ストリングスの連携に磨きをかけることによって、物語性の高くスケールの大きな楽曲を造形。メロディが強化され、アレンジを練った事で鮮やかな魅力を創出した一枚に仕上がっている。

 といっても楽曲を構成する基本構造に大きく変化はない。感傷的な鍵盤の調べと滑らかに円弧をなぞるギターが重なり、ストリングスの優雅な響きが空間を押し広げていき、芯の強いリズムに乗せられ、楽曲の終盤でここぞとばかりに炸裂する爆音のアンサンブルへと雪崩込む。これまで通りにMogwai ~ 65daysofstaticの系譜に連なるものだ。ただその音像は前作と比べて、激性といった部分では落ちる。けれども、煌びやかさとメロディアスさを増す事で、ドラマティックな味わいを深めているのが本作の象徴だろう。出足の#2を聴いても滑らかな耳触りを持ったパートが増え、楽器陣の折り重なる音の美しさがこれまで以上に感じ取れる。そしてまた、緊張感ある緩急の付け方が巧くなっていて、楽曲はもちろんのことアルバム通しての大きな流れをつくりだしているところもよい。

 セリフのサンプリングは無くなって完璧にインスト化したけど、程よくデジタルな感触をつけ加える事は忘れてはいないし、#7ではホーンの音色も有効活用して、楽曲の持つ起伏と色味をより豊かなものにしている。それでいてこのタイトに引き締まった感覚とグルーヴの強靭さが耽美な中で際立っているのも素晴らしい。前半から失速することなく後半に向かえば向かうほどドラマティックな盛り上がりをさらに高める構成力も秀逸。特に締めくくりの#9、#10におけるダイナミズムとリリシズムの劇的な応酬には鳥肌が立つほど。叙情感を貫く事でMaybeshewill、さらにキてます。


ノット・フォー・ウォント・オブ・トライング

Not for Want of Trying(2008)

   65daysofstatic以降、最大の事件と評されたりもした07年発表の1stアルバム。音楽性もまさしく65dosの影響を濃く滲ませた作風で、荒々しく掻き鳴らされるギターにドリルンベース/ブレイクビーツが絡むもの。デジタルな装飾と生音の融合を試みており、こちらも”Aphex Twin+Mogwai”と形容されているみたいだ。

 とはいえ、冷やかな叙情性と猛々しい轟音が見事に結実してバーストしていく様はかなり刺さるし、痺れる。期待を大いに募らせるSEの#1からデジタルビートの上を蒼い轟音が花開く#2のコンボは強烈に体を揺さぶるし、続いての#3における静と動のスリリングな衝突も痛快極まりない。あまりにも綺麗なピアノの調べが攻撃的な音の中で絶妙に映えているのが特徴的。陽性のメロディと共に舞い踊る#4も秀逸な楽曲だ。ソリッドな生演奏とデジタル・サウンドは思った以上に馴染み、抜群の相乗効果を生んでいて、その即効性の高さがまた昂揚感をグンとあげている。そして、ナヨナヨなインディー系ロックというような趣の#6、しめやかなピアノインストの上で大仰なコーラスが乗る#8等で歌もそれなりに導入しているのも特徴の一つ。その辺りはモグワイからの影響かなと感じた。

 扇情的な轟音と美しい叙情性の組み合わせは、どうしても先駆者達の踏襲といった感じで二番煎じという印象も与えてしまうが、構築された己の世界を書き殴ることには成功していると思う。そういった点でまた完全孵化前という気もするが、本作は35分と引き締まったランニングタイムで聴き手を興奮の坩堝へとしっかりと陥れる力を備えている。轟音を欲する人々の期待には十分応えてくれる作品であるはず。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!